2015年08月13日

◆関心を持たせドナー増やそう

木村 良一



改正臓器移植法が施行されて5年が過ぎた。しかし肝腎の臓器提供者(ドナー)の数が、期待したようには伸びない。なぜなのだろうか。どうしたらドナーを増やせるのだろうか。

改正前の臓器移植法だと、脳死と判定されても臓器を提供しようとする人の意思がドナーカードに明記されていない限り、提供はできなかった。ドナーカードにわずかな記入ミスがあるだけで無効になる問題も浮上、移植医療の大きな足かせとなっていた。

このため世界保健機関(WHO)の推奨基準に沿って本人が提供を拒否していなければ家族の同意だけで提供できるように改められた。これが改正臓器移植法で、平成22年7月から施行された。

施行の結果はどうかというと、改正前の7倍以上に相当する年間平均約50人の脳死ドナーが現れるようになった。増えるには増えたわけだが、この「50」という数は改正時の目標の半分にすぎず、年間数千人もの脳死ドナーが現れる移植先進国の欧米諸国と比べると、かなり見劣りする。改正によって可能となった15歳未満の子供の脳死ドナーに至っては、5年間で10人にも満たない。

日本臓器移植ネットワークに登録されている移植を希望する待機患者の数(6月30日現在)は、心臓412人、肺252人、肝臓379人、膵臓(すいぞう)195人、腎臓1万2496人−となっている。この待機患者数を見ても年間50人という脳死ドナーでは足りない。

腎臓だけは心停止後のドナーからの移植も可能だが、これも同様に大幅に不足している。待機患者の大半は移植する臓器がないと自らの生命を保てない。ドナー不足は臓器売買の温床にもなっている。

そこで提案したいのが、「オプティングアウト(反対意思表示)」の導入だ。これは生前、公の機関に「臓器は提供しません」と届けておかないかぎり、提供の意思があるとみなされる制度で、欧州の国々で採用されている。

提供したくない人にその意思を明らかにさせる。つまり自分に関係あることでないと、関心を示さない人間の心理を逆手に取って、全ての国民に臓器提供に関心を持たざるを得なくさせ、ドナー不足を改善していく方法だ。

有名な話だが、衆院議員の河野太郎氏は当初、脳死移植に慎重だった。しかし自らが生体肝移植のドナーとなって父親の河野洋平氏に肝臓の一部を提供したことで、健康な体を傷付ける生体移植に疑問を持ち、脳死移植を肯定し、脳死ドナーを増やそうと、臓器移植法の改正に力を注いだ。

私自身のことを考えてみても、日本で初めて腎臓移植の手術を執刀した東京女子医大名誉教授の故太田和夫先生との取材での出会いがなかったら移植医療にこれほど関心を持たなかったと思う。

ところで改正臓器移植法では家族が脳死になった肉親の意思を把握しないまま、重い決断を迫られるケースもある。それゆえ脳死をどう考え、臓器を提供するのか、しないのかについて日ごろから家族で話し合っておくことが大切だ。家庭で話題にすれば、自然と関心を持つようになる。

          (論説委員)産経ニュース【一筆多論】2015.8.8
 
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