2015年09月10日

◆「次は池田勇人路線」

阿比留 瑠比


「安全保障関連法案が成立したら、次は国民に喜んでもらえる政策に取り組みたい。経済最優先だ」

安倍晋三首相は自民党総裁に再選される数日前、周囲にこう語っていた。具体的には、景気対策や待ったなしの少子化対策、そのための女性活躍や子育て支援施策などを大胆に打ち出していく考えだ。

また、安倍首相は今後の政権運営に関しては、周囲にこう強調している。

「これからは池田勇人元首相路線でいく」

これは、昭和35年の日米安全保障条約改定と引き換えに退陣した祖父、岸信介元首相の跡を襲った池田氏が、「寛容と忍耐」を掲げて低姿勢で経済重視の政策を進めたことを意識した言葉だ。谷垣禎一幹事長も安倍首相に、岸氏だけでなく池田氏の役割も果たすよう進言していた。

安保関連法案は、海洋へと膨張する中国や、核・ミサイル開発に余念がない北朝鮮の脅威など、日本をめぐる厳しい国際環境をみると必要最低限の備えだが、国民には人気が低い。

第1次内閣当時にやり残した「宿題」であるこの問題を乗り越えたなら、「道半ば」(安倍首相)のアベノミクスを仕上げて、景気回復の実感を全国に届け、さらに政権基盤を固めたいとの狙いがある。

自身が正しいと信じること、やりたいことばかりをしていても国民はついてこないし、物事を為すには回り道も必要だ。これは短命に終わった第1次内閣の経験に学んだ教訓だ。

もちろん、その先には安倍首相の悲願である憲法改正がある。ただ、そこにたどり着くために新たに得た総裁任期の3年間は、党内は「安倍1強」ながらまだまだ綱渡りが続きそうだ。

北朝鮮による拉致問題は膠着(こうちゃく)状態が続き、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題はなかなか県側の理解が得られない。

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の行方はまだ見通せず、肝心の景気回復も中国経済の失速と無関係ではいられない。日中・日韓関係も改善方向にはあるもののまだ不安定だ。

 安倍首相にとって幸いなのは、戦後70年の安倍首相談話発表後の各種世論調査で内閣支持率が上昇傾向にあることだ。「支持率が5ポイント程度下がるだろう」(政府高官)と懸念した原発再稼働もほとんど影響しなかった。

国民の支持をいかにつなぎとめながら、憲法改正をはじめ日本を取り戻すための政策を実現していくか。安倍首相にとり、これからの3年間が本当の正念場だ。
(論説委員兼政治部編集委員)
産経ニュース 2015・9・9

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