2015年09月17日

◆みんな賃上げが大好きだ

平井 修一


山本夏彦翁曰く「みんな値上げが大好きだ」。

言わんとするところは、戦後の経済成長のパターンは「値上げ→賃上げ→値上げ→賃上げ→値上げ→賃上げ」できたのだから、値上げに苦情を唱えるのはおかしい、それで賃上げになるのだから本当は「みんな値上げが大好きだ」というわけだ。

たとえばパン1斤の値段と公務員の初任給はこうだ。

1960年:32円/1万2900円、1970年:50円/3万6100円、1980年120円/10万1600円、今は150円/21万円ほど。

55年間でパンは5倍になったが、初任給は16倍になった。生活が豊かになったということだ。だから少しずつの値上げはいいことなのである。

値上げというのはインフレだ。需要があるのに供給が不足するとインフレになる。今は需要が弱くてデフレ気味だ。値上げしたくてもできないから賃上げもできないで、みんなちょっと元気が無い。

小生は「緩やかなインフレが経済の安定成長をもたらす」と思っているが(リフレ派というらしい)、もともとが大酒飲みだから「宵越しの金は持たない」、けち臭いのは厭だから、消費税が上がろうが必要なものは買う。

しかし一方で大した値上げではないのに購入をためらったりする人もいて、マスコミは針小棒大に「キャベツ200円超、主婦ためいき、家計を直撃」なんて報道する。インフレ反対というわけだが、歴史を振り返ればまったく間違った見識で、本来なら「キャベツ200円超、社長さん、給料上げて」とすべきなのだ。

鈴木政経フォーラム代表/経済学博士・鈴木淑夫氏の論考「高すぎる日銀のインフレ目標」(世界日報9/14)はいい提案だった。

鈴木淑夫氏のプロフィール:昭和6年、東京生まれ。東京大学卒業後、日本銀行入行。同行理事。野村総研理事長を経て平成8年から15年まで衆議院議員。現在、鈴木政経フォーラム代表。経済学博士(東大)。

<*追加緩和はすべきでない 過去の2%台はバブル期だけ

7月の全国消費者物価(以下CPI)は、前年比プラス0.2%、価格変動の大きい生鮮食品を除いたコアCPIは、同0.0%とほとんど上昇が止まっている。これには、世界的な原油市況の下落が響いているので、生鮮食品だけではなく、エネルギーも除いた「コアコアCPI」を見ると、7月は前年比プラス0.7%である。CPIの上昇率よりは高いが、安倍政権の強い要請の下で日本銀行が目指している2%のインフレ目標から見ると、低い。

コアコアCPIの上昇率の趨勢は、異次元金融緩和の下で、一貫してゼロ%台である。

それでは黒田東彦日本銀行総裁は、2%の目標を実現するため、「量的・質的緩和」の第3弾を打ち出して、追加緩和を実施するべきであろうか。私は、追加緩和をしてはならないと考える。

そもそも2%のインフレ率は、今後日本経済が持続的に成長していく上で、必須の条件ではないからだ。

安倍内閣が登場する以前は、日本銀行自身、「中期的な物価安定の目途」として、「消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域、当面は1%前後を目途とする」と言っていた。

イレギュラーな個別価格の変動で攪乱されることの少ないコアコアCPI(消費増税調整済み)の前年比上昇率を遡って見ていくと、今日までの30年間、2%に達したのは地価、株価のバブルに沸いた最終局面の1989〜92年だけである。

戦後最長の「いざなみ景気」(2002年2月〜08年2月の73カ月)の末期、GDP需給ギャップが需要超過となった05年9月〜08年6月にも、コアコアCPIの前年比は1.2%がピークであった。

このことから判断して、「真の物価が横這い」の時のコアコアCPIの前年比は、1%前後ではないかと判断される。それを、無理矢理2%に持っていこうとする「量的・質的金融緩和」は、緩やかなインフレを志向しているのであろうか。

しかし、たとえマイルドであっても、物価の持続的上昇(インフレ)は、物価の持続的下落(デフレ)と同じように、生産性の上昇を阻害し、潜在成長率を引き下げる。

デフレが家計に有利な訳ではない。同じようにインフレが政府や企業に有利ともいえない。要するに、物価安定が最善なのである。

日本人は、デフレが経済の持続的成長を阻害することを十分に学んだが、だからと言ってインフレが経済の持続的成長をもたらす訳ではない。

とくに今回は、GDPの2倍を超える超低金利の国債を日本銀行と民間金融機関が大量に保有しているので、インフレで金利が上昇、国債が減価した時のシステミック・リスクは極めて大きい。(平井:国債が減価→円の価値が下落→物価上昇)

金融システムの安定を維持し、持続的成長を目指す政策フレームの観点から見て、2%のインフレ率を実現しようという政策姿勢は危険であり、修正すべき局面に来ているのではないだろうか>(以上)

すなわち「2%のインフレ目標は歴史的に見てもおかしいし、危険をはらんでいる、1%前後で物価安定を図るのが最善だ」ということだろう。

インフレ政策が問題なのはなぜか。調べてみると、「経済は政策で簡単にコントロールできるものではなく、実体経済面においてデフレを維持させる要因がある中で、金融政策だけで事態を改善することは難しい。場合によってはバブルを引き起こす可能性がある」ということらしい。

インフレはアクセルみたいなもので、中共はイケイケドンドン、バンバン造ってドンドン売って、価格も上がって、給料もグングン上昇だあと吹かしに吹かしたが、いい時は「わが世の春、この好景気は永遠に続く、目指せ世界一」なんてはしゃぐものだが(日本も小生もそうだった)、ある日、「あれ、なんか様子が違う」。

そう気付いた時には在庫の山、売上が急減し、値段を下げてもなかなか売れない。会社の借金も返せない。給料も払えない。社員をクビにするしかない。これがバブル崩壊のパターンだ。

インフレ政策はコントロールが難しく、失敗するとバブル崩壊で長期の低迷に苦しむことになる。

それならばアベノミクスも「物価安定と実質賃金の緩やかな上昇」へ軌道修正した方がいいのかもしれない。経営者に引き続き賃上げを求めるべきだろう。大企業は率先垂範し、中小企業を牽引、育成してほしい。「みんな賃上げが大好きだ」(2015/9/16)

              
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