2015年09月19日

◆日本の安全保障の山が動いた

杉浦 正章
 


政権基盤は一段と強化された

外交・経済で待ったなしの安倍政治
 

国の安全保障の山が動いた。戦後の日本の安保政策の大転換である。昭和の講和・安保両条約と並んで国内に一大安保論争を巻き起こした安全保障関連法案が19日未明の参院本会議で成立した。国連憲章が認める集団的自衛権の行使は限定的に容認され、米国との連携で日本の抑止力が圧倒的に強化される。


60年安保では、安保改定を成し遂げたものの、デモ隊に死傷者が出たこともあり岸信介は退陣を余儀なくされた。逆に首相・安倍晋三の場合は、奇跡的とも言える造反者ゼロの与党の団結を背景に政権基盤を一層強固なものとした。安倍は超重要法案成立への重圧から解き放たれ、アベノミクスの充実など経済問題と激動期の世界情勢に対処する日本のかじ取りに全精力を集中させる。


外交は来年夏の伊勢志摩サミット、内政は参院選への対応がそれぞれターゲットとなろう。
 

国際環境の激変を読み取れず完敗した野党の哀れな姿は、19日未明の本会議における民主党安保特別委理事・福山哲郎の反対討論にいみじくもあらわれた。福山は与党のヤジにいちいち神経質に反応し、終いには「あなたたちは武士の情けが分からないのか」と落涙せんばかりとなり、敗軍の現場将校の焦燥ぶりをあらわにした。


数において足りないばかりか野党から3党が賛成に回り、民主・共産両党はついに孤立化し、外部勢力を煽る政治の邪道を開始した。しかし、敗北が鮮明になるとデモは次第に少数となり、18日夜はわずか1万1000人しか集まらなかった。やがてはデモも霧散するだろう。


マスコミはテレビメディアが放送法違反の偏向報道を繰り返し、新聞通信社は朝日、毎日、東京、共同などが著しく左傾化した報道に徹したが、60年安保同様に、これまた敗北の憂き目を見る結果となった。当時は全紙が敗北したが、今回は賛成に回った読売、産経、日経は勝利を手中にした。


新法は防衛的性格を主軸に置いており、19日付朝日の見出しのように「海外での武力行使に道」など目的としていない。攻撃的な要素は法案のどこにも見られず、極めて受動的な法案である。であるのに大新聞までが「戦争法案」「徴兵制に結びつく」とデマゴーグを展開するようでは、やがてメディアが心ある国民の支持を得られなくなる事が明白となるだろう。


祖父と共に世紀の偉業を成し遂げた安倍は、今後50年は続く平和の礎を築いたことになるが、参院選に向けて自民党が組織的に、真摯な姿勢で選挙民に訴えればこれは理解されよう。各地で曲学阿世の売名憲法学者などが違憲立法訴訟を起こそうとしているが、法案成立の過程に瑕疵(かし)は全くなく、新法自体の無効が争われることはない。


むしろ内容が争点になるが、最高裁まで到達するには10年かかるだろう。その間の国際情勢の激動は安保法制の正しさを立証する可能性が強く、最高裁は砂川判決と同様に合憲の判断を下すに違いない。
 

重要法案を処理したが内外の情勢は安倍に待ったなしの対応を迫る。経済は中国のバブル崩壊がもたらす世界同時株安の流れに、日本はアベノミクスの新規まき直しで対処しなければなるまい。


とりわけ再来年4月には消費税が10%となり、景気の足を引っ張るから、それまでに景気回復を確たるものにしなければならない。それにはニュージーランドのごり押しもあって足踏みしている環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の早期妥結も不可欠な要素だ。
 

国内政局に与える要素も大きいが、参院選には影響は出ないだろう。あの安保闘争ですら、半年後に池田勇人が断行した総選挙で選挙民は自民党を勝たせて、高度成長期への道を開いている。


民主党はシールズを組織的に利用しようとしているが、もともと「こんなところには来たくないけど来た」と言っている連中だ。政党組織として利用しようとしても無理だろう。逆に民主党の体たらくを知るにつれて批判勢力となりかねない。


◆塗り変わる極東戦略地図

諸外国、特に中国、韓国、北朝鮮は安全保障関連法案の成立過程に注目していたとみられる。なぜなら安倍の力量を測るバロメーターであるからだ。ところが自民党は一糸乱れぬ団結ぶりを示して、安倍を支えた。これは隙あらば日本の領土に手を出そうとする中国と、大都市名指しで核ミサイルのどう喝を繰り返す北朝鮮への大きな抑止力として作用するに違いない。

GDP1位と3位の日米同盟の強固な絆は一層固くなったのであり、これが極東の戦略地図を大きく塗り替えることになるのは確かだ。米国は既に安保法案成立を歓迎しており、国力低下の米国にとってこれほど強い味方はないと言ってもよい。
 

世界はあの大人しい日本の変容を驚きの眼を持って見詰めており、国際環境の激変を改めて認識していることだろう。とりわけ豪州、フィリピン、ベトナム、インドなど中国の海洋拡張路線に直面する国々は、より一層日本との連携を重視する流れとなろう。


ロシアの進出を危惧(きぐ)する北大西洋条約機構(NATO)諸国も、極東の日米同盟が強化されることにより、欧州と東アジアでのロシア封じ込めの形成ととらえることが出来るだけに歓迎している。


一方安倍は対中、対韓、対露関係の改善に取り組むことになるが、日本の首相はこれまで衣(ころも)の下は裸であった。しかし安保法制は衣の下に鎧(よろい)がちらつく効果をもたらし、抑止力として作用するとともに、安倍外交に力を与える。手始めは10月下旬か11月はじめに韓国で開かれる日中韓首脳会談となろう。


さらに安倍はプーチンとの個人的関係を生かして対露関係改善を模索することになる。まず来週のびのびとなっていた外相・岸田文男のモスクワ派遣を実施して、年内にもプーチンを訪日させる瀬踏みをすることになる。またすべての外交活動は、今後伊勢志摩サミットを意識したものとなってゆくだろう。
 

安倍の支持率は一時的には下がるだろうが、新聞とはいえ私企業が行う世論調査などに一喜一憂する必要は無い。アベノミクスと好きな外交に専念すれば、自ずと支持率は回復する。本当の世論調査は国政選挙であり、自民党は参院選か衆参同日選挙に向けて態勢を建て直して真の支持率を維持しなければなるまい。


内閣改造では、あのひげの隊長・佐藤正久を参院から何らかのポジションに起用すれば内閣支持率に大きく貢献する。当選回数を考慮せず抜擢すべきだと思う。

【筆者より=旅行のため休暇に入ります。再開は10月6日。内政外交で大きな動きが生じれば書きます。】

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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