2015年09月22日

◆自らを正当化する中国共産党

〜常識を超えてまで〜

櫻井よしこ
 


中国は度々日本に「歴史修正主義」の非難を突き付ける。しかし8月25日に王毅外相が発表した中国の戦後70年談話、「第2次世界大戦の悲惨な教訓を銘記し、協力・ウィンウィンを核心とする新型の国際関係を共につくる」という談話は、中国こそが歴史修正の国であることを明確にしている。

中国外相として、氏はまず、「中国共産党が中国人民を指導し、全面的に抗日戦争を堅持」した結果、ソ連および連合国に「世界反ファシスト戦争の全面勝利」をもたらした。その「永久不滅の歴史的貢献は明らか」だとうたい上げた。

右の主張における歴史修正の筆頭は中国共産党が日本軍と戦ったという点であろう。日本軍と戦ったのは国民党軍で、彼らは日本軍に対しては連戦連敗だった。共産党軍は日本軍とは戦っていない。なぜなら彼らはひたすら逃げたからだ。

従って中国共産党軍の働きが日本軍を敗北させたという王氏の主張は、国民党だけでなく連合国側の顰蹙をも買うであろう。

次の歴史修正は、中国がソ連、英米などと共に国際連合を創設したという主張でる。「中国は、ソ連、米国、英国などの国と共に、第2次大戦勝利の成果に基づき、協議の上、国連を創設し、戦後の国際秩序の建設を推進し、世界平和維持のための国際法や国際システムの基礎を確立させた」として、王氏はとりわけ中露の功績は大きいと、自画自賛するのである。

国連創設時の中国加盟は国民党政府によるものである。共産党政府の加盟は国連創から4半世紀以上が過ぎた1971年にすぎない。

こうした歴史修正は習近平政権がいま、共産党の威光を周知徹底させようと躍起であることを示すが、もう1つ文字通り信じ難い歴史大修正がある。

カイロ宣言である。同宣言は43年11月、米大統領フランクリン・ルーズベルト、英首相ウィンストン・チャーチルと中国国民党の蒋介石が、日本降伏を前提にその後の日本の取り扱いなどについて合意したものだ。それを、中国はいまルーズベルト、チャーチルと共に毛沢東が成し遂げたと主張し始めたのである。

もっとも中国国内でもここまでの歴史修正には付いていけないとの声が上がっていることが側聞される。

それでも、共産党一党支配維持にどうしても必要だとなれば、カイロ宣言の立役者は毛沢東だったという大嘘を中国当局はつき続けるであろう。中国共産党は自らを正当化するために国際社会の常識を超えてあらゆる策を弄するということだ。

習主席は、安倍晋三首相に9月3日の抗日戦争勝利70年記念式典への出席を要請し続けた。決して日本を標的にした式典でない、だから出席を、とのメッセージが幾通りもの表現で伝えられた。しかし、習主席は2日、実際には次のように演説した。

「日本の軍国主義の侵略者は極めて残虐で、この世のものと思えぬほどの悲惨な手段で中国人民を扱い、大虐殺をもって、屈服させようとたくらんだ」

経済成長の鈍化、環境問題の悪化、格差の拡大などで共産党への信頼が揺らぐ中、日本を悪者にすることが共産党支持を高める最善の道であることを骨身に染みて知っている彼らは、それがいかに非生産的な道であると知っていても、日本たたきで求心力を高める構造から脱することができないのである。同時に、彼らはいま日本との経済交流の促進を強く求めている。日本なしでは中国は前進できないことを実感しているのである。

日本がすべきことは中国の情報戦略に正面から事実を掲げて反論し続けることだ。尊大になる必要はないが、世界は日本を支持していることを認識せよ。自信を持って日本の主張を展開していくのがよいのである。

『週刊ダイヤモンド』 2015年9月12日号 新世紀の風をおこす オピニ
オン縦横無尽 1099
               (採録:松本市 久保田 康文)

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