2015年09月24日

◆3Dタッチが売りだが

小雲 規生



米アップルは9日、サンフランシスコで新製品発表会を開き、スマートフォン「iPhone(アイフォーン)6s」と「6sプラス」を発表した。

ただし米国での新機種への評価は総じて低調で、むしろアップルが打 ち出した米国での新しい販売制度に注目が集まっている。新販売手法はアップルがアイフォーンを通信会社を介さずに顧客に直接販売するもので、アップルユーザーに新機種への切り替えを促すことが狙い。

アップル には中国経済の減速とともに昨年秋以降の急成長が鈍化するとの懸念が出 ており、あらゆる手を使って最大の収益源であるアイフォーンの販売を維 持したい考えのようだ。


発表会、おなじみの演出

「アイフォーンの全てを改良した」。最高経営責任者(CEO)のティム・クック氏(54)は9日、サンフランシスコ市内での発表会でアイフォーンの新機種の性能の高さをアピールした。

新機種は指でタッチパネルに触れた時の力の強弱を感知する機能「3Dタッチ」を搭載することで操作性を向上。また普通に静止画を撮影するだけで、シャッターを押す前後の瞬間の画像も自動的に撮影、保存し、数秒間の動画を再生できるようにする「ライブ・フォト」機能も搭載した。さらに動画ではフルハイビジョンの4倍の解像度をもつ「4K」の撮影も可能になった。

発表会はアップルとして過去最大級の会場で開かれた。聴衆席の最前列に並んだアップル幹部や後方に陣取ったアップルの社員らは新機能が明らかにされるたびに何度も歓声と拍手で応じ、最後には人気ミュージシャンが演奏を披露するというおなじみの演出で幕を閉じた。


通信会社の「しばり」回避

ただし米主要メディアでは「アイフォーンの新機能は興味深いけれど、顧客を引きつけるほどの目覚ましい進歩ではない」(米紙ウォールストリート・ジャーナル)といった指摘が目立つ。発表会当日、アップルの株価は前日終値比1.9%の値下がりで、代表的な株価指数S&P500の 下落幅(1.4%減)を上回った。

その一方、米メディアではアップルがアイフォーンを顧客に直接販売する制度「アイフォーン・アップグレード・プログラム」を米国で導入したことに注目が集まっている。利用者はこれまでベライゾンやAT&Tなど通信会社の店頭でアイフォーンと通信契約とセットで購入してきたが、今後はアップルストアなどでアイフォーンを購入した後、自由に通信会社を選べるようになる。

現行のアイフォーンと通信契約のセット販売では、アイフォーンの料金は頭金と24カ月の分割払いで支払われ、利用者は24カ月が経過するま で新機種へのアップグレードは認められない。これに対して新制度は、アイフォーンの料金を24カ月で分割払いする点では同じだが、12カ月が 経過すれば新機種へのアップグレードが認められる。この際、通信会社を変更することも可能だ。

背景には中国不安も

米調査会社によると、米国でのスマートフォン買い替えまでの期間は平均26.3カ月で2010年当時の18.2カ月から長くなっている。 アップルには新制度で通信会社による「24カ月しばり」の契約を回避す ることで、アップルファンに毎年発売されるアイフォーンの新機種を買っ てもらおうという狙いがある。

アップルがこうした制度を打ち出した背景には、足下の急成長をなんとかして維持したいという思惑がある。

アップルは昨年9月の「アイフォーン6」と「6プラス」の投入以降、売上高が急増。投入から半年以上が過ぎた15年4〜6月期でも売上高は前年同期比33%を記録している。しかし新機種の目新しさだけでは、これだけの高成長の維持を期待することは難しいとの見方も強い。また中国経済の混乱が明らかになるなか、中国市場を成長の牽引役としてきたアップルへの不安も膨らんでいる。

今回の新販売制度は売上高の3分の2を占めるまで存在感を増しているアイフォーンへの「カンフル剤」だ。市場縮小が続くタブレット型端末「iPad(アイパッド)」の収益力が弱まり、腕時計型端末「アップルウオッチ」の販売拡大も十分に見通せないなか、当面はアイフォーンの成長力に期待をかけざるをえないのが現状だともいえそうだ。
(ワシントン支局)
産経ニュース【アメリカを読む】2015.9.23
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