2015年10月09日

◆プーチンに安倍が駆け寄った謎を解く

杉浦 正章



日露合作の「芝居」説も垣間見える


北方領土問題などについて話し合う日露外務次官級協議は8日平行線に終わったが、もともと問題解決の本質は政治決着しかない。ちょっと古いが首相・安倍晋三が9月28日プーチンに駆け寄ったこと、余人を交えず10分間会談をしたことが何を意味するかだ。


情報が出なければボディランゲージを推測するしか無いが、北方領土問題が話し合われたに決まっている。


プーチンも安倍もあと任期は3年ある。この間に領土問題にメドを付ける事くらいは話し合われた可能性が十分ある。これを裏打ちするのがこれまた外に漏れていない9月24日の国家安全保障局長・谷内正太郎とプーチンの懐刀で安全保障会議書記のパトルシェフによる4時間近くにわたる会談だ。


この会談が安倍を「駆け寄る」という“出血大サービス”につなげたと見るのが“当たり”かもしれない。安倍は就任以来プーチンと親交を重ね、米欧諸国首脳がボイコットしたソチオリンピックにまで出席して個人的関係を作ってきた。個人的関係において安倍はプーチンの方が明らかにオバマよりウマが合う感じだ。


奇異に感ずるのはそのような良好な関係にあるにもかかわらず、表面にあらわれているのがロシア側の強硬な態度ばかりである。首相メドベージェフが択捉島、保健相・スクボルツォワが色丹島、副首相トルトネフが択捉島をそれぞれ訪れた。


皆一様に、日本の神経逆なでの発言を繰り返す。安倍・プーチンの良好な関係にそぐわない何かを感ずる感性を持つのが外交ウオッチャーであろうが、新聞も専門家もこれに気付いて言及するものがいない。


筆者はプーチンと安倍が「握っている」気がしてならない。「握っている」からこそ「お芝居」が可能となるのだ。誰を目当てのお芝居かと言えば日ソ両国の世論に対するお芝居だ。日本の世論に対しては、ロシアがこんなに厳しくては、未来永劫(えいごう)4党返還など実現しないがそれでいいのかという問いかけであろう。


ロシアの世論に対しては、「日本を追い詰めてやったが、経済状況の好転をはかるにはもともと返す約束をした2島返還くらいの妥協はやむを得ない」ということであろう。1956年の日ソ共同宣言では北方領土問題は、まず国交回復を先行させ、平和条約締結後にソ連が歯舞群島と色丹島を引き渡すという方向を打ち出している。


こうした状況から人並み外れた推理力がある和製シャーロックホームズをみずから気取っている筆者が推測すれば、まず「歯舞・色丹2島返還で合意するが平和条約は結ばないことで国後、択捉継続協議の担保とする」ところあたりが落としどころとなるのではないかと思う。


問題はその流れをどうして作るかであるが、期限は区切られている。プーチンの任期中でなければまず妥協は実現しまい。安倍とプーチンでなければ実現しない構図なのだ。折からロシアは米欧の経済制裁がかなり効き目を生じており、加えて石油価格の暴落で経済状況は四苦八苦だ。日本の経済協力はのどから手が出るほど欲しいのである。


もっとも意外なことに主要国の中で日本だけはロシアへの化石燃料の依存度を高めており、かつては5%程度だったものが8.5%まで上がっている。CIAはちゃんとここに目を付けて報告しているから、米国の神経をこれまた逆なでしている。これに加えてプーチンの年内訪日となればオバマの頭に血が上ることは必定だ。
 

その姿勢は現に国務省やホワイトハウスがアドバルーンに使っていると言われる議会調査局が出した報告書に如実に表れている。共同通信によると報告書は、ロシアのプーチン大統領訪日を目指す安倍政権の動きについて「日本がロシアと友好関係を深めないよう、米国は圧力を加えるかもしれない」と警告している。


またウクライナ危機以降、米国が経済制裁を科してきたロシアに対し、安倍政権は「手を差し伸べる」ような働き掛けをしているとも記し、欧米との結束を乱しかねない日本の対応に不快感を示しているという。
 

その背景にはロシアの介入でシリア情勢が泥沼化し、怒髪天を突く状況になっているホワイトハウスと国務省のいら立ちが見える。オバマの空爆は効果を上げないのに、ロシアの巡航ミサイルは的確にイスラム国を痛撃し、おまけにアメリカの支援する反体制派まで爆撃されているとあっては焦るのも無理はない。


すべては弱虫オバマの中途半端な対応に起因するのであるが、下手をすると日本が米欧諸国から八つ当たりに遭いかねない状況でもある。ここは安倍が日本の悲願である北方領土問題を抱える特殊事情を米欧諸国に有り体に説明しておく必要がある。日本が抜け駆けしていると思われかねないからだ。


米国にしてみれば安倍が中露分断に成功し、将来はたとえ2島でも返還されれば、地政学的にも戦略的にも日米同盟には有利に働くのである。ロシアを孤立させて中国と結託させるべきではない。これは極東戦略のイロハだ。そのあたりの大局を安倍が直接オバマに電話なり、大使館を経由するなりで説明しないとこの問題はこじれる。


こじれて喜ぶのは中国と韓国だけである。プーチン来日も今年は時期が悪すぎるのではないか。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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