2015年11月01日

◆韓国が(仲介役)となり得るか?

名村 隆寛



11月1日にソウルで開かれる日中韓首脳会談に向けて“ホスト(主催)国”の韓国が慌ただしい。3カ国の首脳が一堂に会する場で、開催国として中心に立つことにより、北東アジア地域の“バランサー(仲介役)”を自任し、誇示したいかのようだ。

しかし、朴槿恵政権発足後の2年8カ月間、現在まで外交の場で見せてきた姿を振り返れば、韓国がバランサーとはほど遠い存在であることが分かる。今後、外部から仲介役を期待されそうな雰囲気もない。(ソウル)

■自称「仲介者」 バランサーであれ

韓国は日中韓3カ国首脳会談のホスト国であることにこだわり続けている。昨年から3カ国外相会談の韓国での開催を熱望し、執着。今年3月、ソウルに岸田文雄外相と中国の王毅外相を招き、韓国の尹炳世外相との外相会談を実現させた。歴史認識問題で王毅外相が日本を非難したことで、韓国側が満足そうな反応を見せたことは、7カ月経った今も記憶に新しい。

外相会談の“成功”に気をよくし、引き続き3カ国首脳会談の韓国開催を目指してきた朴槿恵政権にとって、今回の首脳会談実現は念願であった。ぜひうまく成功に持

ち込みたいところだろう。首脳会談では北朝鮮の核問題などが中心議題となりそうだ。ここでの朴政権の狙いは、韓国が日中の間でバランサーの役割を果たし、北東アジア地域での存在感を内外に示すこととみられる。

韓国大統領府は28日に日中韓首脳会談の開催を正式発表した際、次のようにコメントした。

「約3年半ぶりに開催される今回の首脳会談を契機に、3カ国の協力が正常に戻り、さまざまな分野での協力がより積極的に進められることを期待している」。

韓国中心の“バランサー論”に鼻息が荒いのは朴政権だけでなく、韓国メディアも同様だ。朴大統領が今月中旬に米国で日中韓首脳会談の開催に触れたことを受け、韓国紙、東亜日報は社説で次のように強調した。

「ソウルでの(3カ国)首脳会議で、韓米日と韓中日のトライアングル(三角)協力の強化に向けて、韓国が役割を確固とさせる外交力を発揮することを期待する」

■大好きな言葉

「バランサー」や「仲介役」という表現は、韓国ではこの十数年間、自らの国際的立場を称する言葉として、しばしば使われている。現地で記憶しているのは、2002年12月の大統領選で当選した盧武鉉候補(当時)が、選挙戦中に口にした言葉だ。

当時、北朝鮮の核開発問題をめぐって米朝関係が緊張していた。また、韓国では在韓米軍の装甲車が女子中学生2人をひき死亡させた事故で、反米感情が極度に高まっていた。こうしたなか、盧武鉉氏は「米国と北朝鮮が争うようなことになれば、われわれ(韓国)が間に入って仲介する」と明言したのだ。

この発言は「韓国は米国と北朝鮮のどちらの味方なのか」「人ごとのように軽々しく言うべきではない」などと物議をかもした。当時の“平和的バランサー論”と現在とでは背景は違うが、韓国がバランサー役を気取り始めたのは、盧武鉉政権以降、特に顕著だ。

韓国こそは中立的であり、当事者の間に割って入り、もめ事を平和的に解決できる-といったところか。要するに、韓国自身が描くところの、理想的な国際社会での自身の姿なのである。現在もそれは“夢の韓国像”であり続けている。

■行ったり来たり外交

朴大統領は2013年2月の就任以来、同年5月のワシントンでの米韓首脳会談に続き、訪中して中韓首脳会談をするなど、日本以外の主要国をほぼすべて訪問した。その様子は韓国国内で華々しく報じられ、「外遊好き」の印象が強い。

ただ、この間の朴大統領の外交を振り返ると、お世辞にもバランサーとはいえそうにない。すでに“歴史の事実”として知られているように、訪問先で慰安婦問題をじめとした「歴史認識問題」で日本への非難、批判を繰り返した。「日本が間違っており、韓国の主張がいかに正しいか」との考えを国際社会で触れ回った。

韓国メディアもこれに同調する報道をしつこく続けた。4月末の安倍晋三首相の米議会演説には数カ月前から反発し、日本の世界遺産登録でも猛烈に難癖をつけた。

安倍首相の戦後70年談話に対しても、発表までの数カ月間にわたり“注文”や“異議”を訴え続けた。一部のメディアは、これらを英語や日本語などのネット版などにわざわざ翻訳して、世界に向けて「反日報道」を展開した。この傾向は現在も大筋で変わりはない。

最近の韓国を見れば、「国際社会でのバランサー」どころではないことは明白だ。朴大統領は9月に、北京で中国の「戦勝70年記念軍事パレード」を中国の習近平国家主席や、ロシアのプーチン大統領とともに最前列で観閲し、日米など、とりわけ米国の眉をひそめさせた。

10月には訪米し、16日の米韓首脳会談で米国の誤解を解いたという。韓国メディアによれば、オバマ米大統領から、韓国にとっての対中関係の重要性を理解してもらったそうだ。ここ数カ月を振り返ってみると、バランサーどころか、朴大統領と韓国はむしろ、米中の間を慌てて行ったり来たりしているかのようだった。

■孤独感、孤立感の裏返し

9月末の国連総会に出席した朴大統領は、またしても演説で日本を批判した。今月、再度訪米し、“成功裏”に米韓首脳会談を終えたのは先述のとおりだ。

ただ、オバマ大統領が朴大統領に示した「韓国への理解」について、韓国メディアの間でも社交辞令である」とし、「中韓の距離の取り方や、米中どちらの側に立つのかクギを刺されただけだ」との現実を直視した冷めた見方もある。

韓国では今年春ごろに、「韓国孤立論」がメディアをにぎわした。特に顕著だったのが、朴大統領の中南米歴訪中に、インドネシア・ジャカルタで行われた約5カ月ぶりの日中首脳会談の直後だった。

韓国メディアは当時、安倍首相に対する習主席の態度の変化に衝撃を受けていた。

歴史認識をめぐって韓国と対日共闘姿勢をとってくれていた中国の一転した融和的ともとれる姿勢に、一種の焦燥感さえ伝わってきた。「日中が5カ月ぶりにまた首脳会談を行ったのに、韓国は孤立を避ける戦略があるのか」(朝鮮日報の社説)と、日中に取り残される韓国の外交戦略への懸念もあった。

韓国外務省報道官は「韓日中首脳会談の早期開催のために韓国は努力している、日中関係の改善は韓国側の努力の助けになる」と、しきりに韓国孤立論を否定していたことを記憶している。孤立感を払拭し、早期開催へと韓国が努力してきた日中韓首脳会談が、ついにソウルで開かれる運びとなったのだ。

■バランサーに絶好のチャンス

韓国がバランサーとして“活躍”できる(?)かもしれない、思いもよらない出来事が直前に起きた。米駆逐艦がスプラトリー(中国名・南沙)諸島の人工島付近を航行したことによる、米中の緊張だ。

現在進行中の米中対立は、韓国にとって“名誉挽回”“存在感誇示”の絶好の機会であるはずだ。しかし、韓国政府は一見、慎重に対応。実におとなしい。

朴大統領は先の米韓首脳会談で、オバマ大統領から、中国が国際規範を順守しなかった場合には「米国と同じ(非難の)声を上げることを期待する」と求められた。

最大の同盟国・米国と、最大の貿易相手国・中国の間で苦慮しているのが現状だ。

国際社会が注目、期待するなか、朴槿恵政権は日中韓首脳会談というバランサーと絶好の機会を得ながらも、現実として中国を批判しづらい立場に立たされている。

「平和的に解決」というきれいな言葉で、お茶を濁すことも可能だろうが、そうした韓国の状況を見越している中国が、どのように出てくるかだ。

■外交も自転車操業?!

ソウルの外交筋によれば、韓国外務省はここのところ、米韓首脳会談にかかりっきりだったという。ようやく日中韓首脳会談の準備に入り、日本よりも中国優先で取りかかったらしい。そして、会談4日前の28日、ようやく正式発表に至った。

オバマ米大統領は朴大統領に対し、日韓関係の改善に期待を示し、朴氏は米国での記者会見で慰安婦問題には触れず、安倍首相との会談実現を優先する姿勢を明らかにした。日中韓首脳会談を前に、一見、丸く収めようとしているかのようだ。

まさに、ホスト国として中心となり、日中の間でバランサーの役割を務めるとのプライドや意気込みがうかがえる。だが、一方で振り返ってみれば、韓国はバランサーというよりも、自分を中心に置き、特に日本を批判し続け、周囲を振り回し困惑させてきたきらいがある。

その結果として自覚したのが「韓国孤立論」であり、さらには米国や中国の間を行ったり来たり、戸惑ったりするはめになった。自らの事情で、態度や姿勢は急にコロコロと変わる。

“自転車操業的”な側面は否めない。ただ、韓国が一貫して変えないのが、困ったことに、歴史認識問題を絡めた対日外交なのだ。

■反発できるのは日本だけ

今回の日中韓首脳会談で、韓国のメディア世論が最も注目しているのは、翌2日に行われる日韓首脳会談だ。朴槿恵発足後、2年8カ月あまりを経て初めての一対一の首脳会談となる。

朴大統領は、それまでの慣例に反し、就任後、米国に続く2番目の訪問国から日本を外し、中国を公式訪問した。大統領就任後、一度も訪日しておらず、初の首脳会談は前例のない韓国での開催となる。

安倍首相は再三、「条件なしの首脳会談」を呼びかけてきた。これに対し朴大統領は「慰安婦問題の解決」を条件に、徹底して会談を拒否し続けた。慰安婦問題は日本への“丸投げ”の状態が続き、この間、日韓関係はほとんど進展していない。

米中の間では戸惑いを見せる韓国だが、唯一、反発を繰り返せる相手、批判を“許してくれる”のは日本だけなのだ。日中韓首脳会談を前に韓国紙、東亜日報が社説で安倍首相に注文をつけていた。その一部を要約してみる。

「安倍首相は、自国での人気を意識して韓国を刺激する言葉は慎み、「結者解之(自分のしたことは自分で解決せなばならない)」の立場で解決策を示さねばならない。自由民主主義や人権、法治の価値を共有する韓日に不要な不安と誤解を払拭させるためにも、両国の首脳が会い率直に意見交換する必要がある」

言いたい放題である。この手の主張は、韓国メディアでは日常的であり全く珍しくない。この文章の「安倍首相」を「朴大統領」に、「韓国」を「日本」に置き換えてみるとどうだろう。奇妙なことにシックリとくる。そう感じるのは筆者だけだろうか。

自ら忌避し続けてきた日韓首脳会談で今回、朴大統領が慰安婦問題の解決を安倍首相に求めることは必至であり、注目されるところだ。一方で、ホスト国、バランサーを自任する韓国の朴政権に、日本としてはこれ以上、またしても振り回されないことが期待される。

産経ニュース【ソウルから 倭人の眼】 2015.10.30
           (採録:松本市 久保田 康文)

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