宮崎 正弘
<平成27年(2015)11月12 日(木曜日)弐 通算第4725号>
〜「打老虎、下餃子」が政敵を失脚させる戦術モデル
次の標的を摘発、失脚させる前に側近を拘束、落馬させる〜
11月6日に、中国共産党中央規律委員会は寧夏回族自治区の副主席だった白雲山を「重大な規律違反」として取り調べ中であると発表した。
11月11日、北京に反腐敗による失脚が発表され、ついに首都圏に及んだかと関係者にとっては衝撃を運んだ。
これを「北京官界地震」と中国語新聞は伝えている。
すなわち北京市党委員会副書記の呂錫文(女性)が重大な規律違反という名目で拘束された。北京のナンバー2である。
同日、上海副市長の?宝俊が、同じ理由で落馬した。
北京市書記は金郭龍、上海市書記は韓正。つまり団派と上海派である。
習近平と王岐山の狙いはもはや言うまでのない、北京と上海のトップを最終的にはねらい撃ちしていることであり、重大な規律違反などととってつけたような理由は、権力闘争の宣伝道具でしかない。
周到に慎重に、団派と上海派を締め上げ、中国を代表する両都市のトップも、習近平お気に入りの人物と交替させるのが目的である。中国の政治通は「このやり方は朱元章に似ている」と分析する。
8月12日に起きた「天津大爆発」にしても、雑魚をつかまえてはみたが、前天津書記だった張高麗はそのまま、天津書記代理の黄興国への責任追及はなにもなされないまま、爆発原因も情報公開がない。
中国の政治にとって権力のトップは政治局常務委員会だが、地方政府の自治は土地使用の許認可権をもち、さらに上限はあるにせよ、省をまたがない企業の進出認可、経営監督、工場の設置許可なども地方政府が持つ。
経済繁栄を象徴する富は北京、上海、天津、広州に集中しており、ひとりあたりのGDPランクで言えば広州、上海、天津、北京となる。これらの党委員会トップは、派閥のバランスによって配分されてきた。
広東の書記は団派のライジングスター胡春華である。習近平は掌握する宣伝機関などをつかって、さかんに胡春華のスキャンダルを追求させている。
北京と上海は伝統的に中国を代表する都市であり、この両市トップが政敵、ライバルが牛耳ることに習近平は焦りを感じていることは明白であり、まずは側近たちを拘束し、じわり真の政敵を葬ろうとしているようである。
これが「打老虎、下餃子」戦術の典型というわけだ。