2015年11月15日

◆語り継ぎたいトルコの友情

阿比留 瑠比



安倍晋三首相が主要20カ国・地域(G20)首脳会議に出席のため13日からトルコを訪れるのを前に、日本とトルコの合作映画「海難1890」(12月5日公開)の試写を見た。実話をもとに、時を超えた両国の友情と絆をしみじみと描いていて、感慨深い。

安倍首相とトルコのエルドアン大統領は今回、一緒にこの映画を観賞する予定だ。

物語は1890(明治23)年、和歌山県串本町沖で遭難したトルコの軍艦「エルトゥルル号」の乗組員らを地元住民らが懸命に救出し、自らの食料をすべて供出してまで助けた史実が一つ。

その95年後の1985(昭和60)年、イラン・イラク戦争に巻き込まれてテヘランに取り残された日本人二百数十人に対し、トルコが危険を承知の上で救援機を派遣し、自国民より日本人を優先して救出した出来事がもう一つの軸となっている。

第三国であるトルコによる邦人救出は、「エルトゥールル号」の恩返しという理由もあった。

2つの出来事映画に実はこの映画が制作されるに至るまでには、世耕弘成官房副長官の助力や、日本とトルコ両国首脳の理解と協力があった。

田嶋勝正串本町長らから映画制作の相談を受けていた世耕氏が、平成25年10月のトルコ訪問前に安倍首相に話したところ、首相はエルドアン氏との会談でこう提案したという。

「できれば2人で映画化を応援しないか」

これにエルドアン氏は「素晴らしい。一体何をすればいいか」と応じ、倍首相が「資金面やロケなどで協力してやってほしい」と答えると、その場で5億円の拠出を即決した。これをきっかけに、映画化は具体的に動き出した。

安倍首相はこれに先立つ25年3月、トルコのユルマズ国防相が来日した際に、その前月に死去したあるトルコ人パイロットへの弔意を伝えている。

この人物は、日本人救出のため決死の覚悟でテヘランに向かった救援機のパイロット、スヨルジュ氏だった。安倍首相は遺族に向けた弔辞でこう述べている。

「スヨルジュ殿の功績を日本国民は決して忘れることはなく、日本とトルコの友好関係の中でいつまでも語り継がれることになるでしょう」

安倍首相はこの年10月のトルコ訪問時には、「エルトゥールル号」の乗組員の子孫らと懇談し、「日本とトルコの友情の原点」とも語っており、映画の題材となった2つの出来事をかなり重視しているようだ。

道徳の教材に「手記」

昨年から使用されている文部科学省作成の教材「私たちの道徳」(中学生用)には、テヘランで救出された男性の「手記」が載っている。同省によると、実際のエピソードをもとに創作したものだそうだが、なかなかよくできている。

「なぜトルコ政府が救援機を出してくれたのか」

この疑問が20年近く頭から離れなかった男性は「エルトゥールル号」事故を知り、現地を訪れるなどして事実を調べる。そして危機に遭遇したトルコ人たちと、テヘランで空爆の危機に直面した自分たち日本人と重ね合わせる…。

トルコでは「エルトゥールル号」事故は教科書にも載っている。日本でも、トルコによる日本人救出はきちんと授業で教えるべきだろう。いたずらに自国をおとしめる歴史教育よりも、他国との友情と相手への感謝を教えた方が、よほど友好に役に立つはずである。
                (論説委員兼政治部編集委員)
産経ニュース【阿比留瑠比極言御免】  2015.11.12
                   (採録:松本市久保田 康文)
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