2015年11月16日

◆訪韓団がビシッと決めた勝負

大谷 次郎



安倍晋三首相が11月1、2両日に韓国を訪問した際の「安倍カラー」が永田町の一部で話題になっている。カラーといっても、ネクタイの「色」。安倍首相をはじめ政府訪韓団の幹部がそろって青色のネクタイを着用していたことから、「何らかのメッセージだ」(自民党関係者)と囁かれた。果たして青で統一した真相とは-。

11月1日昼、政府専用機からソウル空港に降り立った安倍首相のネクタイは紺色だった。あとに続く萩生田光一官房副長官、別所浩郎駐韓大使も青系。首相の警護官まで青だったため、「意図をもって示し合わせたはずだ」などの憶測が広がった。

首脳会談に先立ち行われた日中、日韓外相会談で岸田文雄外相も青のストライプ柄だったから、なおさらだ。

政治家は服装、特にネクタイにこだわる。海部俊樹元首相の水玉模様は有名だが、かつて加藤紘一元自民党幹事長らが森喜朗内閣の倒閣に動い「加藤の乱」のとき、加藤氏は「高揚してくると赤を身につけたくなる」と自らを鼓舞するかのように連日、赤系のネクタイをしていた。

おしゃれに気を遣い、好みもはっきりしている安倍首相だから、こだわりも人一倍のはず。そんな安倍首相一行が今回、青色でそろえていたのはなぜか?

ある同行筋に確認すると、こんな答えが返ってきた。「偶然だった…」。それでも、安倍首相らと「みんな青だね!?」と話題になったといい、そこで「朝鮮半島ということもあり、みんな拉致問題への思いがあったことが分かった」と明かす。青は「ブルーリボン運動」で知られる北朝鮮による拉致被害者の救出を祈るシンボルカラーというわけだ。

しかし、拉致被害者帰国を政権の最重要課題に掲げる安倍首相は、常にブルーリボン・バッジをつけている。訪韓のときも当然つけていた。そして、そもそも安倍首相の“勝負ネクタイ”は黄色だ。節目には必ずといっていいほど黄色のネクタイをつける。

自民党が政権を奪還した平成24年12月の衆院選で、党のポスターや党公約集の表紙は黄色のネクタイ姿。25年8月の東京五輪招致委員会の出陣式のときも黄色だった。

外交でも、25年2月のオバマ米大統領との初会談や、26年11月に中国の習近平国家主席と初めて会談したとき、黄色のネクタイで臨んだ。今年6月のウクライナ訪問では、同国の国旗の色と同じ黄色と青色のストライプ柄を着用する気配りをみせている。

それだけに、偶然とはいうが、いつもの勝負ネクタイをあえて避けたのは間違いない。その上で選んだのが「冷静沈着」「真面目」「信頼」などの印象を与えるとされる青。

つまり、日韓首脳会談などで慰安婦問題を取り上げられることを見越して、社交的な雰囲気は演出せずクールな対応に徹し、妥協は一切しないという強い意志を込めていたのだ。

実際、安倍首相は朴槿恵大統領との初会談を「冷静にお互いの考え方を淡々と述べ合った」と振り返っている。慰安婦問題では、韓国側が求めた「年内妥結」を突っぱね、昼食会を取り引き材料にして譲歩を迫られても「昼飯なんかで国益を削るわけにはいかない」と一蹴。

逆に「大切なことは、(慰安婦問題で)合意すればその後、この問題を再び提起しないことだ」と韓国側の対応にくぎを刺している。

そんな安倍首相とは対照的に、「情熱」「決意」「権威」を象徴するといわれる赤系の服装に身を包んでいた朴大統領。安倍首相に要求を飲ませるべく一連の会談に臨んだはずが、「決裂」は避けられたとはいえ目算が大きく外れ、政権の支持率は下落した。

青で結束した安倍首相率いる日本訪韓団の前に、情熱、決意が空回りした格好となった。
(政治部次長)
産経ニュース【政治デスクノート】2015.11.15
                  (採録:松本市 久保田 康文)
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