寺田 輝介(安保政策研究会 常務理事)
〜第三次金融支援の決定〜
首脳会合の基本合意を踏まえ、8月14日財務相会合が開かれ、今後3年間で最大860億ユーロ(約11兆9000億円)の金融支援が正式に決定され、からくもギリシャの財政破綻そしてユーロ圏離脱は回避された。夏の「ギリシャ・ドラマ」は斯くして幕を閉じた。
〜ギリシャ問題の地政学的側面〜
今次ギリシャ債務危機については、主として経済・財政面から詳細に報道されてきたが、前記ル・モンド紙の「ギリシャ特集」は、「ギリシャのユーロ圏離脱が意味する地政学的危険」と題する記事を掲載していたので、簡単にその要旨をご紹介する。
「ギリシャ危機発生以来、地政学的重要性の議論が全面的に無視されている。ギリシャのクレタ島スダアには米国第6艦隊の重要拠点港がある。安定したギリシャはバルカン半島の安定に寄与できる。弱体化したバルカン半島にロシアが食指を動かしているのに加え、イスラム過激派も手を伸ばしている。
地中海を越えて欧州に入国を試みる難民・不法移民の入境地点はギリシャにある。加えて中国はギリシャを新シルクロードの欧州の入口と考えている。ロシアはギリシャのユーロ圏離脱によってもたらされる戦略的利益に関心がある他、新パイプライン構想のトルコ・ストリームにギリシャを取り込むことにも関心を強めている」。
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今年のヴェルサイユの夏は、過ごしやすい「冷夏」であったが、ギリシャ債務危機をフォローする筆者にとっては「熱い夏」であった。
ギリシャの債務危機は一応遠のいたものの、ギリシャ国内政治の不安定性、経済の不調、更に返済不能の債務額を考えると、遠からず債務危機が再発することが危惧される。
筆者が帰国の準備を始めた8月下旬になると、今度は難民・不法入国者問題がEU諸国全体を取り込む問題となってきた。連日メディアで大きく取り上げられるようになり、どうやらこれから秋にかけて最大のイシューとなる気配である。
――ヴェルサイユにて。2015・8・27記。(終)
(元韓国駐在大使・元メキシコ駐在大使)