2015年11月23日

◆大阪ダブル選挙「維新」が圧勝

早川 昭三



22日投開票の大阪府知事と大阪市長のダブル選で、知事選では、地域政党「大阪維新の会」公認で現職の松井一郎氏(51)が、自民が推薦する前府議の栗原貴子氏(53)に勝利し、再選を果たした。

また市長選では、大阪維新公認で前衆院議員の吉村洋文氏(40)が、自民推薦で前市議の柳本顕氏(41)を破り、初当選を決めた。

これにより「維新」が、連選だった自民党候補者との大阪ダブル選挙を制したことになった。

<開票結果>

知事選
・松井一郎氏     2025387票  当選
・栗原貴子氏     1051174票
市長選
・吉村洋文氏     596045票  当選
・柳本顕氏      406595票


だが気になるダブル選挙だ。今度のダブル選挙は、5月の住民投票で否認された大阪都構想の実現を「維新」は再び持ち出し、更に他都市より劣悪になっている大阪経済向上政策を如何に進めるか、高齢者養護政策どのように具体化するかの重要論争等をとりあげて、対決自民党への「批判」を集中したことだった。

「批判」に集中し、近未来大阪をどうよくするのかの論戦を繰り返すのが中心だったので、有権者の期待と理解を与えることは、殆ど脆弱に終わっていた。

「維新」と「反維新」がそれぞれ行った街頭演説や夜間集会での講演でも、上記のように政策実現の違いに基づく批判を活発に行うだけで、正直なところ聞き耳を傾ける参加者には、達成したいとする政策の詳細内容は、希薄的で、理解の求めは中々応じていない。

筆者もそうだが、「維新」が対決自民党陣に対して、下記のような「批判」の内容では、「維新」の政策実行がいかなものか理解出来なかったのが真実だ。

◎自民・共産・民主の相乗り候補では、マニフェストを実行できません
◎知事と市長が別の政党になれば二重行政は出来ません
◎再び始まったデマ攻撃!選挙で勝つために嘘にご注意ください

結局、府と市の二重行政を、一体化するのが本音だと思う以外になかった。つまり「都市構想の実現」を主張の中に暗に捩じ込んでいたのだ。

そして「知事と市長が、別の政党になれば、二重行政は解決しない」としめ括っている。これは、ダブル選に勝てば、住民投票で否認された大阪都構想の実現を、「維新」が再び正論として進めていくことが出来るとしているとしか思えないものだった。

では、知事と市長が別々の政党であった場合、何に支障があるというのだ。別々の政党の二重行政のほうが、相互に正当議論を行い、前向きで、財政・行政運営を実効性;合理性の政策が出来る筈だ。

「維新」は、知事と市長が同じ政党であったら、大阪都構想の実現が「維新」の目に見えてくると思い込んでいる。大阪都構想の実現を「維新」が実現させたら、何と「政令都市の堺市」までも抱きこもうという腹積もりが組み込こまれているのは確かだ。間もなく「維新」と「堺市」との混乱が起きて来るのは必至。府政の動乱が迫るのは確かだ。

とは云うものの、こんな視点に対して今回、有権者の理解が出来ず、全く判らなかったことがあげられる。即ち大阪ダブル選挙で「維新」が連勝した理由の一つに繋がっている。これが連勝の目的の鍵だろう。

大阪ダブル選挙で「維新」が連勝した理由には、もうひとつある。

それは知事選では、政界を引退する橋下市長の知事代理役を務めた現職の松井一郎氏が、対立候補の自民が推薦する前府議の栗原貴子氏より、4年間の実績を背景に、遥かに「知名度」が高かめたことに再選が繋がったことは否定できない。

また市長選では、大阪維新公認で前衆院議員の吉村洋文氏が、現橋下市長の「後任」の烙印を貰い、終始橋下市長から支援を受けてきたことが、初当選を決めたことだと云えよう。

ところで問題は、自民・共産・民主・(公明)が議会で相乗りすれば、「これこそバラマキ行政の大阪・公務員天国に逆戻りする」という「維新」の大方針を、大阪市長初当選の吉村洋文氏が、市政運営の中でどう進めていくかが問題となる。どうもダブル選の連勝には気になることが多い。

松井知事は、22日夜の当選後の記者会見で、「これから都市構想政策」の言葉を、闇にはせず「公言」して、実現を目指していくと、遂に本音を述べた。これもダブル選結果後の府市議会の追及の的になり、揉めていくことになるだろう。

しかも、「引退表明した橋下市長」が市長任期終了後から、この「都市構想具体化」に国政と絡めてどのように組み込んでくるかだ。大阪府市政は、これから大きな動静を見せて来るだろう。
                                   (了)

◎ 本日本誌掲載の「大阪ダブル選 維新が連勝」の記事に、下記の全国版「頂門の一針3845号欄」の「話の福袋」に、藤井聡氏からご感想が掲載されました。拝読して下さい。

転載 <わたなべりやうじら う のメイル・マガジン「頂門の一針」 3845号
http://rd.melma.com/ad?d=P0U0bRsrg0F1MGjnF0VyU0jHK115D11j878d8008 >

◆大阪人はなぜ「維新」に惹かれるか〜橋下徹の東京コンプレックス戦 略
=藤井聡

大阪府知事・大阪市長のダブル選挙は11月22日投開票され、維新公認の松 井一郎氏(51)と吉村洋文氏(40)がそれぞれ当選を果たしました。いっ ぽうで国政政党「おおさか維新の会」への期待感には、大阪とそれ以外の 地域で大きな開きがあるようです。なぜ橋下徹氏の「維新」は大阪で“だ け”支持されるのか?藤井聡・京都大学大学院教授が仮説的論考を試みます。

大阪人の潜在的願望に訴えかける、橋下徹の強烈なファンタジー

橋下さんの維新って、大阪ではそんなに強いんですか?

先日、東京である会合があったのですが、その席で、大阪の世論調査の報 道が流れてきました。

橋下徹大阪市長に近い大阪選出の議員らが発足させる「おおさか維新の 会」に「期待する」は28%で「期待しない」が56%に上った。
橋下新党に「期待」28% 関西圏では50% ? 日本経済新聞(2015/10/25)

どうやら、大阪市長選では、維新の吉村候補が、(元)自民党の柳本候補 に10ポイント以上の差をつけてリードしており、大阪府知事選では、維新 の松井候補が、(元)自民党の栗原候補にさらにより抜本的な差をつけて 優勢にたっている、という報道でした(新聞では数字は出さないのです が、専門家が見れば、「リード」「優勢」という表現から、おおよそどの 程度の差がついているかが分かるようになっているのです)。

新聞記者たちの感覚では、これだけ差がつく結果が出れば、府知事選につ いてはもう松井さんの勝利が確定、市長選についても吉村さんがおそらく は勝利するのでは、という憶測が十分に成立する…というような種類の報 道でした。

この報道が会食の席上で話題に上ったとき、多くの方が、

「えっ!?橋下さんの維新って、大阪ではまだそんなに強いんです か!?」という驚きの反応でした。

大阪では2人に1人が「おおさか維新」に期待している

つまり「橋下維新」は、もう東京では(大阪以外では)、完全に「賞味期 限切れ」なのでは…という雰囲気が、濃密に流れているのです。特に、昨 今では維新の「分裂騒動」が何度も報道されていましたから、多くの方々 が維新に対して「うんざり」する感覚をお持ちになっているようです。

最近の世論調査(全国)において、橋下氏が立ち上げた「おおさか維新の 会」に「期待しない」という声が、「期待する」という声を圧倒している 事実は、大阪以外でいかに橋下維新が賞味期限切れの状況にあるかを指し 示しています(「期待する」は28%で「期待しない」が56%)。

ただし…大阪・関西では、2人に1人が「おおさか維新の会」に期待してお り、期待しない声(42%)を大きく上回っているのです。

そして、そうした「期待」を反映するかのように、いま維新候補が、先に 紹介したように大阪府知事選、市長選の双方で、非維新候補をリードして いる、という次第です。

こうした状況に、東京、全国の方々が「驚き」を見せるのですが、その 「驚き」の根底には、よくよく聞くと次のような印象があるようでした。

「なぜ大阪の人って『振り込み詐欺』みたいなものに、何度も引っかかっ ちゃうの?」

実際、こういうセリフで当方に質問してこられた方は、一人や二人ではあ りません(!)。

つまり、多くの関西外の方は、都構想の住民投票で「これがラスト!」っ て言ってたのにいきなり「再挑戦」って言っているし、「負ければ引 退!」って言ってたのにやっぱり政界復帰する様子だし――そんなことを考 えれば、橋下氏が「うそつき」であることなぞ誰の目から見ても明らかな のに、なんでまだそんな「うそつきの橋下さん」を大阪の人たちの多くが いまだに支持しているのか、「ワケ分かんなーい」というご様子なのです。

橋下徹氏は計算づくの「大阪限定」プロパガンダを仕掛けている

しかし、これには簡単な理由があります。

「ブラック・デモクラシー」論、すなわち「全体主義」論を踏まえれば、 多くの大阪の人たちが橋下さんたちを支持する一方で、東京の方々が支持 しないことの、大変にシンプルな理由が見えてきます。

ブラック・デモクラシー=全体主義では、ポピュリスト(人気を得るため なら何でもする者)のデマゴギスト(ウソツキ)は、彼自身の党利党略を 実現するために、人々の潜在意識に働きかける「政策」を、政策的合理性 を度外視しつつ「開発」して、世論的支持を得ることを目指します(同時 に、その政策を批判する人々に、徹底的な封殺圧力、弾圧をしかけます)。

もしも、橋下氏がそうしたブラック・デモクラシーを展開するポピュリス トのデマゴギストであるとするなら、彼がいま目指しているのは「大阪で の支持」であって、「大阪外の支持」ではない、ということになります。

なぜなら、現時点で必要なのは、大阪ダブル選挙での勝利であり、それ以 上でも以下でもないからです。橋下氏がポピュリストであるのなら、いま は東京での人気など度外視して、大阪での人気だけを得るようなプロパガ ンダを仕掛けるのが最善の策となります。

それはちょうど、詐欺師は狙い定めた相手だけに「信用」してもらえれば それで事足りるのであって、それ以外のすべての人から「胡散臭い」と思 われようが、知ったことではない、ということと同じなのです。

仮説的論考〜大阪人の劣等感を巧妙に刺激する「橋下維新」のファンタジー

そもそも、「大阪都構想」も「おおさか維新の会」も、大阪の人々の潜在 的願望に訴えかける、強烈なイメージを持つものです。

「大阪都構想」という言葉の響きは何やら、大阪を豊かにするというイ メージを持ちます。何よりそれは「東京に匹敵するようなもの」というイ メージを持ち、大阪の人々が潜在意識の内に抱えている「東京コンプレッ クス」を強烈に刺激します。

しかも、「おおさか維新の会」という政党の言葉も、そんな大阪を豊かに する政策を中央の政治の力で実現する、というイメージを強烈に換気します。

そしてそれは、「どうしても大阪は中央に進出できない」というコンプ レックスに対して再び、強烈に働きかけるものです。

(なお、個人的な印象を申し述べるなら、これらのコンプレックスは、 「大阪の舎弟」ともしばしば言われる奈良県民の当方には、痛いほど分か るものなのです)

したがって、「大阪都構想」や「おおさか維新の会」というものは、専門 的知識に基づいて考案されたものではなく、大阪の人々の潜在意識を読 み、その潜在意識が求めるものとは何かを考えながら作り出されたファン タジーなのです。

人気TV番組を作る手法と同じ

それはちょうど、人気TV番組を作るときの手法と同一です。それは、視聴 者が求めるものを、優秀なスタッフたちが企画会議で一生懸命考え、視聴 者が求める番組を作りあげる、というプロセスです。

そしてこの現象は、ナチスドイツで「ドイツ人はアーリア人の末裔で、 もっとも優れた民族である」というデマが全体主義の中で繰り返し宣伝さ れ、人気を博していった現象と同じです。そんな「理屈」は、公正な論理 に基づいて提案されているのではなく、「どうすれば人気が出るか?」と いう意志の下で作りあげられたファンタジーに過ぎないわけです。

一方で、「大阪都構想」や「おおさか維新の会」というファンタジーは、 あくまでも大阪人の潜在意識、とりわけその東京コンプレックス、中央コ ンプレックスに働きかけることを前提として作りあげられたものでありま すから、それが人気を博すのは、「大阪だけ」ということになります。

とりわけ、東京コンプレックス、中央コンプレックスを持たない当の東京 のひとびと、中央の人々には、「大阪都構想」や「おおさか維新の会」の 魅力なんて、皆目見当がつかない、ということになるわけです。

これこそが、いま橋下維新勢力が大阪で「だけ」人気があり、全国的な人 気には至っていない、根源的理由なのです。

次のファンタジーは、東京を含む全国をターゲットに「開発」される

以上はあくまでも、「橋下氏がブラック・デモクラシー=全体主義におけ るポピュリストのデマゴギストである」という仮説に基づいて申し述べた 仮説的論説に過ぎませんが、こう考えれば、現在の世論状況、特に東京と 大阪の世論状況の大きな格差が論理整合的に説明できることは、十分にご 理解いただけるものと思います。

では、もしもこの仮説が正しいとしたら…これは、東京を含む全国の人々 にとっても、今回の大阪維新現象は、極めて重大な意味を持つことにな る、という結論が導き出されます。

今、(仮説的)「ポピュリストのデマゴギストである橋下氏」は大阪の世 論をターゲットにして「大阪都構想」「おおさか維新の会」というファン タジーを「開発」し、提示しているわけですが、一旦、ダブル選挙が終わ れば、(仮説的)「ポピュリストのデマゴギストである橋下氏」は今度 は、全国の人々、とりわけ最も大量に存在する東京の人々をターゲットに した「ファンタジー」を開発し、それに基づいたプロパガンダを徹底的に 展開することになるはずです。

そうなったとき、東京を含む全国の人々はコロリと「騙される」ことにな る見込みは濃厚にあるのです。

瞬く間に全国的人気を奪う可能性も

そもそも、2012年の12月の世論調査では、「維新」勢力は当時の政権与党 であった民主党を抜き去って、自民党に次ぐ第2の支持率を獲得していた ではないですか!

しかも、今年の5月の住民投票で都構想が否決された日の夜の記者会見で は、(仮説的)「ポピュリストのデマゴギストである橋下氏」は、「さわ やかさ」を超絶に演出して見せ、その演出に沿って多くの論者が彼を「さ わやか」と言い「潔い」と称し、極めて高い評価を得ていたのではないで すか!

つまりもしも橋下氏が、TVで人気タレントを演じていた時の才能を遺憾な く発揮しつつ(政策の合理性を度外視しつつ)、「ポピュリストのデマゴ ギスト」として、東京世論狙い、全国世論狙いの政策イメージを様々に開 発し、世論に提示し続ければ、瞬く間に全国的人気を奪っていく可能性は 十二分に考えられるのです。

繰り返しますが、「ポピュリストのデマゴギスト」(=人気を得るためな ら何でもするウソツキ)は、政策の合理性を全て度外視し、ウソでも詭弁 でもデマでも何でもいいので、とにかく「お茶の間で人気」がでるファン タジーを開発し、世論に提示し、人気を獲得していこうとするのです。

そうであるのなら、いま、大阪で起こっている維新現象は、近い将来、必 ず、東京で生ずることとなるであろう――ということは火を見るよりも明ら かなのです。
http://www.mag2.com/p/money/6401
[MONEY VOICE/Mag2] 2015年11月22日 〔情報収録 − 坂元 誠〕




 

 

この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック