2015年11月26日

◆橋下は「維新特区」依存の脱皮がカギ

杉浦 正章



“正月休み”の後は「国政」を目指せ


BOROのシングルに「大阪で生まれた女やさかい東京へはようついていかん」があるが、大阪は「維新特区」というべき政治風土を持っている。府知事、市長両選挙で大阪維新を圧勝に導く風土だ。その投票行動には全く一貫性がない。


橋下徹の大阪都構想を住民投票で否決したかと思うと、今度は橋下を圧勝させた。背後に何があるかといえば江戸時代に大阪から始まった「浪花節」だ。「橋下さんのメンツをつぶしたから今度は助けにゃああかん」という浪花節的な風潮が根本にあって、それが政治を動かす。


橋下も心得たもので、最後の街頭演説で「8年間お世話になりました。府知事と市長をよろしく」と訴え、おばちゃんたちの涙を誘う。ほかの政治家が言ったのでは「ああそうかい」で終わるが、橋下が言うと涙、涙なのだ。これこそがカリスマ政治家の面目躍如たるものだ。その涙は将来票になる。


 問題は、橋下がいなくなった大阪が「ジョン・レノンのいないビートルズ」(デーブ・スペクター)ということになるかと言えば、そうはなるまい。いなくならないからだ。本人は一時「政治家はボクの人生から終了した」と宣言していたが、市長選に圧勝して確保した「国政への土台」をみすみす逃すわけがないのだ。橋下は大阪が維新特区である限りいなくならないのだ。


問題は引退するかしないかではなく「引退の期間」であろう。早ければ正月休みの後出てくるのではないか。でなければ「夏の選挙」に間に合わない。


なぜ「夏の参院選」ではなく「夏の選挙」かといえば、首相・安倍晋三が勝つと見込めば「衆参ダブル選挙」に踏み切る可能性があるからだ。再来年の春には消費税率の10%への引き上げが待っており、「愚直に行く」として増税選挙に踏み切った大平正芳の例を挙げるまでもなく、誰がやっても増税後の選挙の大敗は確実だ。


8%でも重税感がのしかかっているのに10%になったら、軽減税率もクソもない。選挙民の怒りは心頭に発するのだ。公明党は創価学会の票が分散するとして常にダブルに反対だが、しょせんは政権の味が忘れられなくなった政党、解散してしまえばついてくるのだ。
 

だから橋下は、正月休みだからと言ってのんびりとはしていられないことになる。だいいち国政政党「おおさか維新の会」は、橋下のカリスマがなくては成り立たないのだ。しかし、大阪の特別区が全国的な広がりを持ちうるかといえば、これはない。橋下人気は特別区限定であり、広がりを見せる可能性は少ない。


2012年の選挙では第3極ブームが到来したが、これは民主党に政権を取らせて戦後の政治史上まれに見る誤判断をした有権者が、自民党に戻るのも照れ臭く、第3極ブームを作ったのだ。したがって、次回の国政選挙では橋下ブームも生じない。国政選挙は“自共対決型”となり、下手な政党ははじき飛ばされる。
 

加えて「大阪都構想」などという、訳の分からない政策が復活することもあり得ない。他党を敵に回したうえに、維新は府議会でも市議会でも過半数を割っており、再度住民投票をするにもハードルが高すぎる。もともと「大阪都構想」なるものは、「都」と名前がつくだけで大阪特区のプライドをくすぐって来ただけで、これにこだわっていては国政に進出する政治家としての素質が問われかねないのだ。
 


国政に出る以上、参院ではなく衆院に出るしかない。参院はしょせん衆院の補完であり、政治家のレベルも総じて低い。首相への展望も開けない。いずれにせよ国政では内政・外交・経済で確固とした識見を求められる。大阪都構想は国政には全く通用しない。


橋下は今ブームとなっている田中角栄とそのカリスマ性においては相似形にあるが、似て非なるものは、政策上の知識である。小学校しか出ていない田中は脳梗塞で倒れるまで、そのハンディキャップを補おうと深夜の「勉強」を続けて、国をリードするまでに到った。


しかし橋下は大阪都構想なるもの一点張りであり、国政を勉強している風にも見えない。弁舌でごまかすような癖はタレント以来のものであり、なくならない。


ここで行うべきことは、今後は政治・外交・経済を勉強してこれに独特の直感を加えて、国政に向けて積極的に発言することだ。雑巾がけ専門の陣笠代議士にとどまる器かどうかはその発言によって判断されるべきものであるからだ。心根を維新特別区頼りから、国政に向けて大転換しなければ真の展望は開けまい。

          <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家) 
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