2015年12月07日

◆大阪「淀川の川底」に蕪村生誕地

毛馬 一三


江戸時代の俳人与謝蕪村生家は、一体何処に在ったのか。正確な場所が未だに分かっておりません。

そう云えば、大阪毛馬の淀川堤防上に「蕪村生誕地」と書いた「記念碑」が建立されてはいます。しかし「蕪村が生誕し、幼少を過ごした生家の場所」は、ここではないのです。一体、何処に在るのでしょうか。

実は「蕪村生家」は、この堤防から眼下に見える「淀川の川底」に在るのです。なぜ淀川の川底に埋没してしまったのか。これには江戸時代ではなく、後年の明治政府の「淀川河川改修工事」によって、そうなったのです。

つまり、明治18年に淀川上流の枚方で大水害が起き、下流の大阪で大被害を受けたことをきっかけに、明治政府が本格的淀川改修に乗り出しました。

その際明治政府は、改修工事に当り単なる災害防止ためだけではなく、大阪湾から大型蒸気船を京都伏見まで通わす航行による「経済効果」などの多目的工事に専念することを決めました。そのために淀川の「河川周辺の陸地」を埋め立て、それまでの小さな淀川を 大きな河川にする大改修としたのです。

これに伴い、旧淀川沿いにあった「蕪村生家」地域は、埋め立ての対象となり、すべてこの「河川改修工事」によって「川底」に埋められて仕舞いました。これについては追々。

さて、明治政府は関西の大型河川・淀川を大改修するため、オランダから招いた河川設計者・デ・レーケとフランス留学から帰国していた設計士沖野忠雄とを合わせ、「淀川大改修」の設計を依頼しました。

明治政府の依頼を受けた2人は、「大改修工事」の設計を創り上げ、明治29年から工事を開始しました。

とにかくこの大型改修設計は、大阪湾に京都の宇治川や桂川、奈良からの木津川を中津川に合流させ、一気に淀川として大阪湾に繫ぐ、巨大な設計でした。

そうすれば貨物蒸気船を大阪湾と京都を結んで航行させることが出来、逆に京都・枚方などで大水害が起きた場合でも大量の水量をさらりと、大阪湾に流すことが出来るのです。二本立ての「効果狙い設計」です。

勿論、上流の災害で流出してくる「土砂」が、大阪に被害を与えないような「毛馬閘門」設計も創りました。

これが淀川から大阪市内に分岐させる「毛馬閘門」設計の主旨だったのです。ここから分岐した河川は、「大川」と名付けられ、「水害に伴う上流からの土砂」の回避は実現し、大阪の上流からの水害から今日まで護られています。

このように2人による設計書は、世界の河川工事技術水準に準じたもので、明治政府が施工した「河川大改修工事」としては、全国的に見ても画期的なものでした。同工事は、明治43年に完成したのです。

ここから本題。この「河川大改修工事」によって、前記の様に、与謝蕪村が生まれ、幼少を過ごした大阪市都島区毛馬町(摂津国東成郡毛馬村)は、上記工事依頼全く跡形もなく「淀川の川底」に埋没し、深い川底に沈んで仕舞ったのです。

役所の指示でしたから、当時の住民は仕方なくそれに従ったようですが、川幅も660b(従来の10数倍)となり、浅かった河の深さも5bの巨大河川に変容したのです。

この住居埋没の強制工事で、前述の如く、蕪村生家(庄屋・問屋・宿屋)に関しては勿論、生家のお寺、生家周辺に菜の花畑、毛馬胡瓜畑跡などの位置も皆目全くわかりません。

今は淀川の毛馬閘門近郊にある「蕪村記念碑」の上から、淀川の眼下に見える川底に「生家」が在ると想起すだけで、寂しい限りです。

筆者は淀川近郊の蕪村生誕家(庄屋・問屋・宿屋)の後継者の方といわれる家を訪ね、「家歴」を伺いましたが、結局、「お寺も埋没し、「過去帳」もないために、蕪村生誕地は「川底」にあると信じているだけ」という答えが返って来ただけでした。

「蕪村生誕300年」は、間もなくに迫った2016年に迎えます。どうか大阪毛馬町の「蕪村公園」と通り過ぎて、「毛馬閘門」と「蕪村記念碑」ある淀川堤防から、下に流れる「淀川」を見ながら、その河底に蕪村生誕地があることと想いつつ、蕪村が幼少期をここで過ごしたのかと、想いを巡らせて眺めて頂きたく存じます。



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