2015年12月16日

◆豪州次期潜水艦をめぐる日独受注戦

野口 裕之



豪州の次期潜水艦をめぐり、日本はドイツと熾烈な受注合戦を繰り広げているが、地力は申し分ない。そこに「韓国海軍の援護射撃」も加われば、勝機は拡大する。韓国海軍の潜水艦はドイツが開発し、韓国企業が組み立てるが、韓国側の瑕疵などでトラブルが続出。「潜水できぬ潜水艦」を保有する世界的に珍しい海軍に、各国海軍は脅威、否、驚異を抱いているからだ。

今後のトラブル件数によっては、ドイツ製の評判を落としかねぬ。韓国軍の兵器は「韓国製」を自称しても欧米の開発で、高度技術が必要な部品・システムは輸入、単純な部品は国内製造し、韓国企業が全体を組み立てるケースが多い。

だが、部品が性能要求を満たさぬ代替品や欠陥品だったり、整備不良だったり。韓国製ではなく、韓国特有の「韓国性兵器」と呼ぶべき惨状だ。そんな危ない「致死性兵器」をインドネシアを皮切りにフィリピンやイラクが買い付ける。危険を顧みぬ、勇気有る決断に敬意を表したい。

 ■トラブル続出の自称国産

3カ国の空軍が導入を決定したのはジェット練習機T-50や派生型の軽攻撃機FA-50など。

韓国内での組み立てに焦点を絞れば「韓国製」ではあるものの、実態は米軍需大手ロッキード・マーチンが開発し、韓国の航空機メーカー・韓国航空宇宙産業(KAI)が製造する。従って、エンジンや電子装備など枢要技術がほとんど「米国生まれ」という「血統」には絶対服従。

10月にはウズベキスタンへの輸出に、米国が武器輸出管理法を持ち出し待ったをかけた。技術流出や周辺国との緊張誘発が問題視されたもようだ。でも、ウズベクは幸運だった。

インドネシアは導入後にひどい目に遭う。受領したのは「視界不良品」。
現代戦は、自機レーダーだけでなく、陸海軍レーダーの捕捉情報も送られ、より立体的かつ遠方の戦況を掌握する。ところが、当該システムに、米国が厳しい機能制限を課した。

イスラム国家との理由、とか。陸上/艦艇レーダーの支援がなくば作戦半径が著しく制限される。そこでKAIは、民生用周波数の代替使用を提案したらしい(異説アリ)。ハッキングの危険に加え、民間電波への干渉が起きるのは必然だった。携帯電話とミサイル誘導電波の周波数を同じにできる国柄が、遺憾なくにじみ出た格好だ。

もちろん、当然、インドネシアは他の契約でも裏切られまくる。整備する部品リストがナシ。そも、交換部品のストックがナシで、稼働中の機体よりはずして使い回す。客の食べ残しを「二次利用」したどこかの料亭顔負けの安全無視行為だ。

機体整備マニュアルも軍事機密を盾に公表しなかったが「新品なので故障しない」と強弁する始末で、むべなるかな。

 ■開発元のドイツも頭痛

もっとも、全てがそろっていても怖い。韓国空軍曲技飛行隊所属のT-50Bは2012年、飛行前整備で整備後取り除くべきパーツを抜かず、操縦系統が誤作動→墜落→操縦士が死亡した。

日本を過剰に意識し、総花的でチグハグな兵器体系、背伸びし過ぎの兵器生産→輸出。無理の上に無理を重ねているのだが、拍車がかかろう。日本の武器輸出が緩和、10月には防衛省の外局に防衛装備庁も設立され、独り相撲ならぬ「独り対抗心」を燃やしているためだ。

豪州海軍の次期潜水艦をめぐり、日本がドイツやフランスと性能面で互角以上に闘っている現実もシャクの種のようだ。嫉妬は、朝鮮日報が11月《中国や日本と対峙する韓国は、生存を懸け原子力潜水艦建造計画を進めよ》と題する論説主幹の記事を載せた辺りにも表れる。

何とも気宇壮大な夢ではないか。ドイツからライセンス生産(輸出仕様)する1800トン級通常型潜水艦も満足に就役させられぬ“技術力”への自覚がない。

ただ、小欄は「韓国海軍による宣伝効果」を頭の片隅に置く。わが国は豪州の次期潜水艦建造を自力で勝ち取る。が、韓国海軍の潜水艦は珍しく「友軍」に成ってくれよう。

まず、数年間ドックに鎮座したままの1番艦の辛抱強さ。原因不明の騒音を修理中というが、契約を破りブラックボックスを分解し、元に戻せなくなったとの観測も、米国兵器に対する過去の「分解犯罪歴」に照らし有力説に浮上する。続いて3番艦。

艦名は安重根(アンジュングン)。日本の初代首相・伊藤博

(1841〜1909年)を暗殺したテロリストの名だ。相も変わらず日本に凄味を利かせたつもりの奇行ではあるが、哀れなほど「締まり」のない艦だ。独企業の締め付け強度要求を満たさぬボルトを韓国企業が製造し、艦橋と甲板を固定するボルトが緩んだり折れたり。

 ■兵器輸出、8年で14倍強

しかし、3番艦の韓国企業製作のスクリュー・プロペラに2014年、151カ所もの亀裂が見つかったと聞き、笑っては気の毒だと思った。敵を待ち伏せする通常型潜水艦の命は静粛・隠密性で、日本企業は芸術的ともいえる精度でプロペラを仕上げる。1カ所の傷でさえ「個性的な雑音」を発出し、敵に艦名まで割り出される危険を伴うのに、151カ所とは…。ドイツ製に交換と成った次第。

このほか、燃料電池の不具合発覚などをへて「潜水艦モドキ」が続々と“就役”。導入時に「マレー半島やマラッカ海峡まで作戦域」と豪語した韓国海軍潜水艦隊は、主に沿岸をウロチョロする本来の実力を余すことなく発揮中だ。

一連のトラブルにはドイツ側の瑕疵が一部含まれるとしても、独技術陣に超頻繁に泣きついている。他国の部品・システムや技術をつまみ食いして兵器を組み立てるので、いつまでたっても力が備わらぬのだ。同時に、外国による技術供与へのロイヤルティーや部品輸入代金の支払いが韓国企業の利益率を圧迫し、将来にわたり苦しめる。

06年に2.5億ドルの兵器輸出額は14年に36億ドルを超え、8年で14倍強に。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、5年ほど前に世界20位前後だった韓国は今や13位に急上昇した。国益よりメンツにこだわる韓国政府は20年までに7位を目指すため、企業負担は膨張を止めないというわけだ。

潜水艦ではトラブルの度、ドイツ技術陣が訪韓を繰り返したが、「韓国性兵器」の拡散に比例し、開発元=欧米の技術者が尻拭いに世界中を駆けずり回る事態も増えそう…。合掌。

(政治部専門委員 野口裕之)

産経ニュース【野口裕之の軍事情勢】 2015.12.14
(採録:松本市  久保田 康文)
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