2016年01月10日

◆自民に諌言  A

〜 野党統一候補を侮(あなど)らない方がいい!〜

浅野 勝人 (安保政策研究会理事長)



共産党委員長の志位和夫が、小沢一郎と会って、安倍政権に対抗する政治勢力を結集するにはどうすればいいか教えを乞うたという報道には、共産党の「やる気度」が透けて見えます。

政党アレルギーの強い共産党委員長が、政治的影響力を失った個人的アレルギーの強い保守政治家と会ったところで、成果は期待できないと切り捨てるのは早過ぎます。志位は、おそらく、自民党への対抗軸を模索し続けて成功、失敗を繰り返してきた政界再編のプロに率直な助言を求めたのだと思います。

半世紀、政局の表裏を知り尽くしている小沢は、共産党が死守してきた綱領を踏み越える政策と政治姿勢の転換を指摘しているに違いありません。

ですから、今回の野党統一候補の擁立をめざす政治動向の主役は共産党です。
自公両党は、嫌われ者の共産党が主役なら、野党間の選挙協力をめぐる話し合いがまとまるはずがないから心配無用と判断しがちですが、断定しない方がいい。流れによっては、共産党が民主党と同等ないしは民主党以上に、自公批判票の受け皿となる可能性を否定できないからです。

去年(2015年)10月の宮城県議選で共産党が倍増したのは記憶に新しい。安保関連法案の扱いが無縁とは考えにくいでしょう。

その傾向が顕著になってくると、民主党内の圧倒的な共産党アレルギーが薄れて、票をくれるのなら「シロアリ」でも歓迎と変化します。

共産党の参院比例区、最高得票は819万票(1998年、14.6%)。
当面の参議院選挙1人区はゼロの上、当選の見込みはありませんから、もともと失うものがありません。共産党の票は要らないと言われても、黙って野党統一候補に集中します。

一昨年(2014年)暮れの総選挙、比例区は606万票(11.3%)。選挙区、比例区合わせて21議席。この比例区の票を300選挙区ごとに得票実態に従って振り分けますと、2万〜9万票になります。与野党接戦の選挙区の野党統一候補には、なんとも魅力的な数字です。

確かに、これは単純な足し算です。多くの民主党議員の懸念は、もらう共産党の票以上に、穏健な民主党支持票が離れるから、結果はマイナスという予測です。

共産党が発表した「国民連合政府」構想によれば、党綱領に掲げている日米安保条約の廃棄は、「凍結」するだけで「廃棄を放棄」しません。天皇制や自衛隊の解消についても一時的に「棚上げ」するだけです。彼らのいう戦争法案(安保関連法案)を撤回させるためだけの「一点限定共闘」です。

国民の目には、有権者を安心させて選挙の票集めに役立てるための当たり障(さわ)りのない提案と映っています。

ですから、この限りにおいては、「オリーブの木」(イタリア共産党がリベラルな社会民主主義政党になって、中道および左派政党との連合を実現し、右派連合の政権与党に勝利した1996年の選挙の例)にはなり得ません。

多くの民主党議員の指摘は当たっていますし、与党が懸念するには及びません。

流れがホンモノになって与党の脅威になるかどうかは、共産党が日米安保条約の廃棄を「廃棄」して存続を確認し、天皇制を認め、自衛隊の存在を必要とする綱領に変更すること。よし、国民連合政府が成立しても、今回は閣僚を送らない閣外協力に止めると明言することです。

つまり、共産党が市民運動を背景にホントに捨て身になって、国家・国民のためにひたすら尽くす決意をした姿を有権者が実感した時は怖い。

私は重大な関心をもって、この2点のゆくえを注視しています。

自民党が夏に勝つための政治工作としては、衆参ダブル選挙です。野党共闘は複雑に錯綜して統一候補の取りまとめは一段と困難になって、擁立の歩留まりは激減します。

短期の政策課題としては、世界同時株安とはいえ、新年早々「安倍相場、終焉」と駅売り夕刊紙の見出しになるようではダメです。アベノミックスの評価は、株価が基準になり易い。

年金基金の運用を市場の下値の支え役と勘違いしているのではないか。だから、毎回、海外投資機関に美味しいところを浚(さら)われる役割しか果たしていません。下落した相場の後始末しかしていない現状の改善を急ぐことが肝要です。

もうひとつ、中長期の政治課題は、衆議院の選挙区制度の抜本的改正です。端的に申せば、定員3人の全国100選挙区、総数300人の中選挙区の実現です。

日本人の情感に合った制度ですし、政党間の共闘は成り立ちません。選挙結果によって、政治を安定させるために連立政権を組むのは時々の実情に応じて自由です。

憲法改正は、国会の発議を受けて、いずれ国民が決める課題です。
長期安定政権維持のために、今の自民党が取り組むべき最優先課題は、今の陣容なら出来る選挙制度の改正です。
(2015/1月7日、元内閣官房副長官)



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