馬場 伯明
本誌3928号(2016/2/13)に向市眞知氏(医療ソーシャルワーカー)の「『認知症』には『散歩』が効果」という文章があった。住友病院神経内科の(宇高不可思)先生の講演を聴いたところ、(宇高)先生は「こんな症状があったら要注意!」と具体的な11の症状を指摘されたという。
たとえば、1.同じことを何度も言ったり聞いたりする。2.ものの名前が出てこない。3.置き忘れやしまい忘れが目立つ。4.時間、日付、場所の感覚が不確かになった。5.病院からもらった薬の管理ができなくなった。(6.〜11.は省略する)。
向市氏は「(それらの指摘に)思い当たるフシがいくつもある」と自分の経験を紹介し、認知症の人の実態の解説をされていた。また、「医療ソーシャルワーカー」の経験と立場からの助言をされていた。
その助言は認知症の人への家族や周りの人の対応方法に関することが主であったが、最後に「『認知症』には『散歩』の効果があります」とあった。言葉不足の気がしたが、「『認知症』(の進行を抑える)には『散歩』(することで)の効果が(相当)あります」ということであろう。
(向市氏の文中にあったわけではないが)一般的に「酒を控える」「煙草をやめる」「ご飯を減らす」「太らず、痩せる」などが指導されている。
だが、これらは物事や現在の状態を否定する(マイナスの)行動である。一方、「散歩する(歩く)」というのは、自らの前向きな積極的な(プラスの)行動である。これは心身にとり非常にいいことだ。
宇高不可思(うだかふかし)先生の講演内容をWEB等で探したが探せなかった。向市眞知氏からの又聞きではなく、「講演録」に直接に触れたいものである。(向市氏にご紹介いただきたいが)。
宇高先生は、単なる「散歩」ではなく積極的に「歩く」意義も述べられたのではないか。そして、認知症の症状が出たから「歩く」のではなく、認知症にならないよう、認知症の発症を半年でも1年でも遅らせるために「歩く」のがいいという提言ではなかったのかと推測する。
私たち人間にとり、生物としての「生物寿命」ではなく、真っ当な心身状態の「健康寿命」を延ばすことが大事だ。「認知症のより早期発見と軽度認知機能障害(Mild Cognitive Impairment:MCI)対策が重要」と宇高先生も強調されている(「RING MIND no5 2011」)。
認知症が進行してしまってからでは遅い。徘徊する老人に(無目的に:目的を認識できず)「散歩」されては困る。(ただし、認知症が進行した人への対応を否定するものではない)。
賢い人はやっている。たとえば、糖尿病の家系との本誌主宰者は毎日1万歩を超えるウォーキングを欠かさない。私の友人A君もジョギングと高負荷ウォーキングを組み合わせている。「転ばぬ先の杖」、予防に勝る対策はない。また、予防は前向きの行動だからやっていても楽しい。
最近、手首に「ウェアラブル端末」、ポケットに「スマートホン」を持つ人が増えてきた。じつは私も。何のためか?自分の体の諸データを自動的に収集・累積し、医師や作業療法士などの専門家の指導を受け、自分の健康を管理し良好に維持するためである。
各自治体でも積極的な取り組みが盛んになってきた。たとえば、奈良県は「健康寿命日本一!の県」をめざす。この先手必勝の施策はすばらしい。こちら。http://www.pref.nara.jp/secure/116657/h25-teigen.pdf
病気の情報を含む健康データは、医療機関や役所などが独占する状態から、個人のものになっていく。自分で自分を知る、自分がデータを主導的に管理する時代になっていくのであろう。そんなときに、認知症などになってはおれない。
認知症にならないように、また、 ロコモ(運動器症候群:ロコモティブ シンドローム:locomotive syndrome)に陥らないよう、日常的に心と身体を自ら管理し正常に保ちたいものである。
元気な高齢世代が最も陥りたくないもの、それは、癌より認知症であるという。何よりも、生物ではなく人間としての自分が消えてしまうという底知れない恐怖感によるものであろう。
私は71歳になった。元気なつもりである。丈夫な「身体髪膚」を与えてくれ長寿で亡くなった父母(94・93歳)に心から感謝する。合掌。
今、東京で月曜日から金曜日までフルタイムで働いている。酒は毎日飲む。薬は飲んでおらずサプリメントも全く摂取していない。健康診断の数値はオールA。休日はゴルフなどで歩き回り適当に遊ぶ。映画が好きであり、本は雑読・多読である
しかし、いくら元気なつもりであっても、遠くない時期に必ず訪れる心身の老化と死に至る不確かで暗い道程が、私にはまだ見えていない。
この不安をどう乗り切るのか。「さあ、早く来い!」と、どんと構えたい気もするが、う〜〜ん、怖いな。(2016/2/18千葉市在住)