2016年02月24日

◆安倍の訪露外交は中露分断に不可欠

杉浦 正章



オバマの言うことばかり聞くことはない
 

外相・岸田文男がカンカンになって怒っている。中国外相・王毅が電話会談にも応じないからだ。この事態が象徴するのは2014年の首相・安倍晋三と中国国家主席・習近平との会談以来徐々に良好になっていた日中関係が冷却化しつつあることを物語っている。


原因は慰安婦問題解決で日韓が急接近。さらに北朝鮮の核・ミサイル実験で極東安全保障情勢は米国を中心に日米韓が結束し、中朝にあたる図式が鮮明化してきたことにある。

韓国内のメデイアではこれを「日米韓対中朝露」の構図ととらえる見方が強いが、日本から見ると間違っている。韓国は安倍とプーチンの関係を知らないからだ。


安倍は領土問題もさることながら、プーチンとの会談で中露分断に比重を置く必要に迫られることになった。24日付読売のスクープによると、安倍がオバマの日露会談中止要請を突っぱねたといわれるのは大局的に見れば正しい。独自外交でも極東の安全に資すれば良いのだ。
 

とにかく中国は自分に都合が悪いと、他国首脳との接触は電話にも出ないという国柄らしい。安倍が習近平と電話会談しようとしても応じないし、岸田が王毅に電話しても出てこない。言うまでもなく北の暴挙を安倍や岸田が指摘しても、返答に困るからだ。


ただオバマや朴槿恵の電話には応じており、小憎らしい対応だ。中国の北寄りの構えは、基本的には1961年に締結された軍事条約・中朝友好協力条約にある。北が攻撃を受ければ中国は自動介入する軍事同盟だ。ロシアと北は親善条約はあるが軍事同盟ではない。この基本的関係を中国は未来永劫(えいごう)変えることはないと見るべきだろう。
 

なぜなら北は米国に対する防波堤であるからだ。したがって北の政権はどのような愚者がなろうとも維持せざるを得ないのだ。


北と中国の貿易は総額で55億ドルに達しており、北の貿易総額の90%以上を占めている。世界がたとえ石油の禁輸措置を取っても、丹東の石油基地から鴨緑江の地下を通るパイプラインを通じて中国産原油がどんどん入っているから無駄だ。

米国が原油の禁輸をしようとしても、まさにだだ漏れで効果がない。もっと悪いことには、北のミサイルも核開発も中国が技術を小出しに出して、あおっているといわれることだ。まさに確信犯であり、米国主導の制裁に中国が賛成するわけがないゆえんである。
 

その中国が、恐怖で顔が引きつったのが韓国による終末高高度防衛システム(THAAD)導入検討である。THAADは超高性能レーダーと迎撃システムを合致させたもので北の中短距離ミサイル防衛に役立たせるためのものだ。米国の度重なる要請に朴槿恵はこれまで迷いに迷っていたが、核実験とこれに次ぐミサイル実験でやっと導入に前向きとなった。


THAADのレーダーは北朝鮮どころか中国の奥座敷まで見通せる能力があり、導入されたら朝鮮半島しいては極東の安全保障の構図に決定的とも言える有利さをもたらすからだ。中国は慌てふためいて韓国大使を呼びつけ抗議した。


中国は、東シナ海だろうが南シナ海だろうが自分はどんどん軍事的進出を繰り返し、周辺国の痛みなどどこ吹く風としてきたが、THAADで初めて人の痛みを知ったかのようである。またTHAADは防衛的色彩の高い兵器であり、文句があるならミサイルを設置しなければ良い。
 

こうして、米韓の安保の構図は強化される流れとなった。また慰安婦問題の前進は、日韓関係に根本的な好影響をもたらした。韓国は日本との軍事情報包括保護協定にも前向きになってきている。既に日米関係は安保関係法の成立で一段と良好なものとなっており、極東の安全保障地図は日米韓による対北、対中抑止強化の流れとなってきたのである。


中国の対日冷却化の動きは、これに何とか棹さしたい気持ちの表れと見るべきである。とかく割れやすい日本の世論分断も狙っているのだろう。中国は昨年9月の軍事パレード以来、ロシアとの関係改善に重点を置いており、習近平には韓国のメディアが見るようにできれば中朝露で日米韓に対抗したい気持ちがあるのだろう。
 

しかし中露は長い国境を接しており、基本的には対立を常に内包している。そう簡単には仲良くなる国同士ではないのだ。


ここで役立つのがプーチンと度重なる会談で個人的にも良好な関係を築いてきた安倍が、5月連休にもソチで会談する流れとなっていることだ。もちろん領土問題が主要議題になるが、重要なのはロシアを極東で中朝側に追いやらないことだ。


読売によるとオバマは2月9日の安倍との電話会談で、安倍の訪露に懸念を示したと言われる。理由はウクライナ紛争の停戦をきめたミンスク合意をロシアに履行させるため、共同歩調で追い込む必要があるというのだ。

しかし安倍は「日本にとってはロシアとの平和条約も大事だ。ロシアと対話を続けていくべきだ」と突っぱねたという。オバマには中東重視の余り極東情勢への観点がかけている。安倍は中露接近にくさびを打ち込めば良いのである。領土問題が一歩でも半歩でも前進すれば、極東情勢の安定には寄与する。


さらに日露首脳が朝鮮半島の平和維持の必用と半島の非核化で合意すれば、結果は米国の戦略にもつながることである。なにもオバマの言うことだけを聞くのが日本外交のすべてではない。日本がウクライナより極東を優先するのは当然だ。別に安倍はロシアを経済援助して、息を吹き返さそうとしているのではない。


ドイツ首相のメルケルが対露外交で独自色を出し勝ちだが、日本も時には堂々と独自色を出すべきだ。弱虫オバマも同盟国にばかりに要求しないで、やるべき事をやらねばならない。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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