2016年02月27日

◆「外交・安保」手抜きは危険

平井 修一



羹(あつもの)に懲りてなますを吹く・・・安倍氏は昨年は安保法制をめぐってアカのバッシングを受け、どうにか法案成立に持ち込んだが、かなり消耗したのではないか。

軽減税率、支那発の世界的経済不安、アベノミクスの停滞、参院選 or W選などの課題があり、今年は「外交・安保より内政重視」のような印象だ。しかし、中共の軍事的脅威は高まりこそすれ、低くなっているわけではない。日本と周辺国の国民の「生命と財産を守る」ことは、政権の取り組むべき最優先課題であることは少しも変わっていない。

山口さんちの晋三君、この頃少し変よ。甘利氏辞任事件などもあって、このところ精彩がないような印象だが、どうなんだろう。疲れてきたのか、体調が悪いのか・・・

北村淳氏の論考「日米両首脳はなぜ中国の脅威から目を背けるのか 安倍首相もオバマ大統領も現状認識が甘すぎる」(JBプレス1/28)から。

<安倍首相の施政方針演説では、日本を取り巻く緊迫した軍事情勢と、それに対する政府の基本方針が全く語られなかった。さすがに安倍政権寄りの一部日本メディアも、その姿勢には少なからぬ危惧の念を表明していたようである。

だが、それらのメディア以上に不満を口にしているのが、極東軍事戦略に携わるアメリカの軍事関係者たちだ。

*日本を取り巻く不穏な情勢への言及は?

米海軍関係大学院で極東戦略の教鞭をとる退役将校は次のようにこぼす。

「安倍政権は昨年、国民的議論として盛り上がった安全保障関連法案を成立させた。その際、せっかくリーダーシップを発揮した(アメリカの軍関係者たちの目から見てだが)にもかかわらず、その後は日本の具体的な国防政策に目立った動きが見られない。安倍首相の施政方針演説でも、安全保障関連法制に基づいた国防戦略や具体的方針などへの言及がなされなかった。

アメリカと違って、スローテンポでじわりじわりと政策転換を進めていくのが“日本方式”なのかもしれない。しかし、日本を取り巻く軍事情勢は急展開している。日本国内の内政問題と違い、相手が外国勢力である軍事外交に“日本方式”は危険ではなかろうか?」

たしかに、昨年(2015年)末から正月を挟んでのわずかの期間だけでも
以下のような出来事が立て続けに起きている。

(1)中国海警局の重武装巡視船が尖閣周辺海域に出没を繰り返す。

(2)中国海警局の超大型“モンスター巡視船”が尖閣周辺海域と南沙諸島海域に同時に展開できる態勢が整う。

(3)南沙諸島の中国人工島に建設されていた3000メートル級滑走路が運用可能な状況に立ち至った。

(4)北朝鮮が水爆実験と称する核実験を実施した。

(5)中国人民解放軍が、日本が大金を投じてアメリカと共同配備を進めている弾道ミサイル防衛システムを打ち破る能力を持った極超音速グライダーの開発に成功していたことが確認された。

(6)日本を射程圏に収める各種長射程ミサイルを開発し配備する司令塔である「人民解放軍第二砲兵部隊」が「人民解放軍ロケット軍」に改組され、さらに強化された。

(7)ロシアが中国人民解放軍に対して、世界最強戦闘機の1つと言われているSu-35戦闘機の本格的な供給を開始した。

このように日本に直接悪影響を及ぼしかねない軍事情勢だけでも、次から次へと発生しているのである。

しかしながら施政方針演説では、日本の領土領海が脅かされている東シナ海情勢についてまったく触れなかった。日本に対する様々な軍事的脅威を強めつつある中国人民解放軍についての言及もなされず、南沙諸島をはじめとする南シナ海情勢も無視された。

*オバマ大統領も中国軍の動向に触れず

南沙諸島での人工島建設や軍事拠点の設置をはじめとする中国による南シナ海支配態勢の加速度的進展状況に関しては、オバマ政権も口をつぐんでしまっている。

安倍首相の施政方針演説に先立つ1月12日に行われたオバマ大統領の“最後の”一般教書演説でも、珍しく国防問題に関してはあまり言及がなかった(安倍首相の施政方針演説よりも、演説全体に占める割合は大きいが)。

アメリカの大多数の政治家や軍関係者たちにとって最大の国防問題は中東問題・対テロ戦争である。しかし、それらに対してすら、米海軍関係者の口を借りると「ほとんど中身のあることは述べられていない」。

したがって、オバマ大統領が今回の一般教書演説で、中国や北朝鮮の軍事動向、あるいは中国・北朝鮮周辺の同盟・友好諸国に対する軍事的脅威に関して触れることがなかったのは当然だったと言えよう。

しかしながら、アメリカ海軍関係戦略家たちの間では、アメリカ海軍力の低下が真剣に取り沙汰されている。そして、それ以上に海兵隊や陸軍など地上戦力での戦闘力低下に対する危惧の声が上がっていることも事実である。

もちろん、軍内部からのそのような声があがるのは、予算確保と人員削減への牽制、といった思惑がないわけではない。しかしながら、軍事関係シンクタンクや軍教育機関の研究者の多くも、オバマ大統領が切り捨てた「敵勢力が強力化しつつあり、米軍戦力が弱体化しつつある」という“レトリック”を、具体的データを基にして論じている。

例えば、「中国が南シナ海で人工島を7つも建設した」「軍用滑走路を3本も完成させた」「アメリカ空母を撃破する対艦弾道ミサイルを実用化した」「アメリカの弾道ミサイル防衛システムを打ち破る極超音速グライダーの開発にこぎつけた」といった数々の事実が、今、アメリカの眼前に突きつけられている。

そうしたいずれの脅威も「世界最強のアメリカ軍にとっては恐れるに足りないため、一般教書演説では無視し去ったということなのだろうか?」と、オバマ大統領の対中姿勢に対する疑問の声も少なくない。

*頼みの綱のアメリカが本当に抑止力となるのか?

日本政府、とりわけ安倍政権にはあまりにも現状を甘く見ている姿勢が見受けられる。「日米同盟という“枠組み”が波風立たずに維持さえされていれば、アメリカ軍という“虎の威”に中国は恐れをなして、日本に対する軍事攻撃や軍事的圧迫を思いとどまる」と考えていると見なされても致し方がない。

しかし、いくらオバマ大統領が「現在もアメリカ軍が世界最強である」と強調しても、東シナ海戦域、南シナ海戦域、東北アジア戦域といったように、局地的軍事紛争を考えた場合には「アメリカ軍最強論」こそレトリックにすぎない状況になりつつある。

今回の安倍首相の施政方針演説だけが日本の国防政策の表明ではないが、「日本自身がどのような国防戦略を実施するのか」という基本方針を明確にしないで、ただ「日米同盟を維持することによって抑止力を確保する」と繰り返しているだけでは、決して真の抑止力は生まれない>(以上)

仏作って魂入れず。「日米同盟」を仏壇に飾って拝んでいても抑止力にはならない、具体的な外交・安保政策の推進は政権の取り組むべき一丁目一番地の課題だ。欧米の政権がどちらかというと「中共の脅威に鈍感、商機に敏感」である今、日本は率先して周辺諸国との結束を強めなくてはならない。

Financial Times 1/28「中国の意図を知る手がかりは米国海軍の歴史にあり 修正された軍事ドクトリンが意味すること」から。

<今年に入って中国から流れてきたニュースと言えば、株式市場の下落と不安定な為替相場の話ばかりだ。だが、あまり報じられていないが、上海総合指数の急落や人民元の値下がりと同程度のインパクトを世界に及ぼしかねない北京発のニュースがもう1つある。中国は指針としている軍事ドクトリンを静かに修正していたのだ。

国有メディアの環球時報は今月、この新しいスタンスの要約をきびきびとした調子で伝えていた。

これによると、「我が国の軍事力の強さは世界に示されなければならない」という。また、「軍隊が強ければ、中国はこれまで以上に政治的に魅力のある、そして影響力も説得力もある国になれる。ネットワーク作りも容易になるだろう」と論じている。

*「韜光養晦」の終わり

このようなタカ派的姿勢は、1970年代後半以降の中国の外交政策を規定してきた「韜光養晦(とうこう・ようかい)」、すなわち「己の能力を隠し、時機が来るのを待つ」という方針が事実上終わりを迎えたことを示している。

この方針転換は実は数年前から始まっていたが、人民解放軍が年初から発表している一連の声明で、新しいドクトリンが「積極防御」という概念に集約されていることが明確になってきた。

中国国防省のウェブサイトで今月、ある発表がなされた。ほとんど注目されなかったが、海軍所属のあるトップクラスの計画立案者はこの中で、「21世紀の海のシルクロードに沿った航路」を守る中国初の国産空母建造計画を明らかにしていた。

中国政府の公式定義によれば、この海のシルクロードには、中国の東の海岸線とイタリアのベニスの間にあるものすべてと、その途中にある戦略の要衝が含まれる。どう見ても、これは中国の海洋防衛ドクトリンの途方もない拡張である。自国の領海を守ることに的を絞っていた以前のドクトリンとは大違いだ。

中国がこれらの航路のいずれかを支配する能力をまだ持ち合わせていないことは明らかだ。人民解放軍の海軍と空軍は今のところ、中国が自分のものだと主張している南シナ海や東シナ海の領域で活動する米国や日本の船舶・航空機を停止させることはできない。

しかし、中国がその軍事活動の範囲を広げたがっていることは誤解の余地がない。中国の経済活動がますますグローバル化していることを考えれば、これは論理的な行動でもある。

これに米国政府がどう対応するかが、今日の世界で最も重要な外交政策問題だと言えるだろう。

残念なことに、中国の不透明さと西側諸国の知識のなさが相まって、中国が何を望んでいるのか、そしてそれをどのように手に入れる計画でいるのかを十分に把握している人は、中国政府の内部で政策立案に携わるエリートを除けば、ごくわずかだ。

外国の観測筋が「穏和で平和を好む中国」という空想を繰り返せば繰り返すほど、中国の台頭は大きな脅威になる。西側の政策立案者は北京から出てくる巧言に耳を傾けるのではなく、「中国が実際にやっていること」に注意を払うべきだ。近代中国の文化、政治を形作っている作用について、従来よりずっと深い理解を育む必要がある。

*米国が歩んだ道

ほかの興隆する大国の歴史は示唆に富んでいる。今日の中国のように、米国もかつて明確に帝国主義と拡張主義の概念を否定した。

米国の世界的優位の時代は、ほかの大半の帝国と同じように始まった。自国領土から遠く離れたところにいる商人や市民を守る必要性から始まったのだ。

19世紀初め、生まれて間もない米国政府は北アフリカの沖で海賊と戦うという具体的な目的のために最初の公式海軍を立ち上げた。その結果、米国で最も古い戦争記念碑は、アナポリスの米海軍兵学校の敷地内に立つ、第1次バーバリ戦争(1801〜1805年)の英雄を称えるトリポリ記念碑だ。

中国の場合、過去600年以上の間で初めて領海外へ軍艦を派遣したのは2008年のことだ。その任務は何だったか? アフリカ沖でソマリアの海賊と戦うことである>(以上)

大国は安全保障上、地域覇権(縄張り)を求める。中共は東・南シナ海を制覇し、さらに西太平洋、インド洋でも覇権拡張を進めるだろう。彼らの国益は我らの脅威になる。油断することなく迎撃の体制を強化しなければならない。

中共を信じる国は蹂躙され(朝鮮戦争)、中共を警戒する国は侵されない(中越紛争)。これは一つの史実である。(2016/2/26)

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