毛馬 一三
現在、米国での米大統領選挙に向けた候補者選びが、世界政治の最大の話題になっています。
こうした中、最近のNHKニュースで、ワシントン女性支局長が、上記の候補者選びの現場中継コメントの中で、ビックリする「発言」をしました。
それは、「選挙の出口調査“をしますと、共和党トランプの優勢が分かりました」と述べたのです。筆者としては「選挙出口調査」取材方法が、米国の選挙取材にも今は常用されているのだということが、思い掛けずにも知り得たからです。
筆者が、NHK大阪放送局(政治部出身・大阪府庁記者クラブキャップ)で、昭和51年衆院選挙の際、関西選挙デスクを務め、関西全記者の「候補者票詠み」と開票当時刻の「選挙管理委員会の速報」とを克明に照合しながら、候補者の「当選確実」を一瞬も早く打つ”、という極めて厳し記者業務を3回しました。
ところがそんな時、NHK大阪の岸和田支局の濱口忠昭記者が、投票を終えた有権者から投票所出口で「出口調査」を行い、それを選挙デスクへ「選挙情勢」として報告することを、臨時に試んだのです。
その報告を受けた時、デスクの筆者は、投票した有権者が投票後、党の動静を知られたくないために「本音」は云うまいと思い、その「当落」判断の時は、「候補者動静」の参考にさせてもらったのでした。
ところが、選挙後の反省会で、「当落」の結果と、この濱口記者の「出口調査」とを検証したところ、意外に合致していることが多いことが分かったのです。
これが貴重な「参考結果」になると判断と反省をし、選挙結果を早く知りたい「重要選挙区」を中心に、その次の総選挙から「出口調査」本格的に取り組みを開始し出しました。以来このことが、NHK報道局政治部内に広く知れ渡り、なんと全国NHK放送局にもひろがって、実施され出したのです
そのあと、世界にも徐々広がっているとの噂は聴いていましたが、今回ワシントンンNHK支局長のはっきりしたコメントを耳にした時、これが「大阪発出口調査」がキッカケであったことに、改めて歓喜したのです。
そこで、以前にこの出口調査のキッカケを作った濱口忠昭元記者の「発想と感想」の記事を頂いていましたので、再掲したいと思います。
◆濱口忠昭元NHK記者
「当選確実」の速さと正確さが、選挙報道に当たるメディアの真価を問われ熾烈な争いです。仮に「当選確実」を誤って出せば、そのメディアの信用は失われ、勿論担当の記者生命は終わりです。「当確」を打ち間違えて左遷された選挙デスクを何人も知っています。
ところで、ふとしたきっかけから、そうした願望をほぼ果たすのに効果があるのではないかと考え、数年にわたり試行錯誤を繰り返しながらようやく発案したのが「選挙当日の出口調査」でした。
そもそものきっかけは昭和46年、NHK大阪放送局報道部の岸和田通信部記者として選挙取材の時のことです。
投票所の近くで有権者の様子を取材中、たまたま投票を済ませた知人から声を掛けられた際、何気なく「誰に投票したのですか」と聞いた質問がそもそもの始まりでした。
選挙は中立、公平が大前提で、選挙管理委員会の発表前に投票結果を有権者個人から聞きだすのは、なんとなく憚れる雰囲気でした。
ところが驚いたことに、開票の後にこの「出口調査」の結果と候補者(政党)の得票数とを突き合わせて検証したところ、なんと両者が極めて近似傾向を示し、候補者間の優位さと政党間の得票順位を捉えていました。
「やった!この出口調査をやれば、当確が迅速・正確に打つことが出来、寸刻を争う他社メディアとの速報報道を制することができる」と、わが胸を躍らせました。
選挙後の会議でこの「出口調査」が検討された結果、有効であるとの結論が出され、以後NHK大阪報道部の選挙取材でこれが採用されたのです。「出口調査」が大きく羽ばたき出した瞬間でした。
最近の選挙報道では、「出口調査の結果によりますと」などと使われるのが、当たり前になってきたためでしょうか、取材される側の有権者もその心算で聞き取り気持ちよく応じているようで、トラブルは起きていません。ただ、特定政党にその調査結果を利用される恐れは無いのかと心配するのは私だけでしょうか。
いずれにしろ、投票所の前で、恐る恐る聞き出した私の素朴な発案が、時を経てまさかこんなに注目され、大きく飛躍しようとは思いもしなかっただけに余計に感無量です。<濱口元NHK記者再掲2009.02.05>