浅野 勝人 (安保政策研究会理事長)
〜(安保研ネット掲載原稿)〜
安保研ネットの私のブログを転載していただいている「ネットメデイアおおさか」に「侵略に時効は? どなたか教えてくれませんか」というタイトルで、隣国からいつまでも謝れと言われ続けることについて、疑念を呈する指摘がありました。それに関する私の思いです。
●虐(いじ)めがいき過ぎて中学生が鉄道自殺した。
何年経ったら、自殺を強(し)いられた遺族が、虐めた側を許さなければならないという決まりがあるか?
●殺人に時効(正確には公訴時効)はあるか?
かつては25年で時効が成立した。強盗殺人を犯しても25年逃げ切ればセーフだった。今はない。2010年4月27日、死刑に当たる殺人罪、強盗殺人罪の時効を廃止。いささか社会がまともになろうとした証しだ。
●虐めて自殺に追いやることも、自分の都合で他人を殺(あや)めたことについても、歴史上、かつて謝罪した国がどれほどあったか。日本とドイツくらいのものではないか。国家間では、放置されたままだ。指摘の通りだが、だから、日本もそれに倣(なら)うのが適切か。
●個人のやったことは許されないが、国家ないしは集団なら同じ事をやっても許されるのか。
●戦争責任 ― いじめや殺しを指図した者と指図されてやった者との責任の重さに軽重の差があるのは当たり前と考えるのが自然ではないか。
従って、国家の意思で強行された侵略行為(特に宣戦布告無しの一方的な侵略戦争―例えば満州事変、日中戦争)とそれに伴う人的、物的損傷に時効はない。
敢えて申せば、損害を被った側が、物心両面の償いと謝罪に対して「十分理解した。これからは仲良くしよう」と言った時、事実上の時効が成立する。
もともと法や条約で決めるものではない。過去を清算して、お互いに仲良くしていくにはどうしたらいいか、相互理解を願う人間の良心のテーマと考える。
= 去年、来日した際のドイツ、メルケル首相の発言参照。
(元内閣官房副長官)