平井 修一
漢字、ひらがな、カタカナからなる日本語メディアは、多分世界一学ぶのに困難な言語だろう。つまり国際発信力に弱い。英語は世界共通語だから強い。米国の外交誌フォーリン・アフェアーズ・リポートから。
*中国経済のメルトダウンは近い 中国経済はまったく成長していない(2016年3月号掲載)サルバトーレ・バボネス/ シドニー大学准教授(社会学)
<中国の経済成長が減速しているのは誰もが認めるところだが、北京が言うように本当に中国経済は依然として成長しているのだろうか。中国政府は2016年の成長率を6.5%と予測しているが、コンファレンス・ボードは3.7%という数値をあげている。
だが、実体経済の動きを示すさまざまな指標をみると、3.7%という数字さえ、楽観的かもしれない。2015年に電力、鉄鋼、石炭の消費はいずれも低下している。
購買担当者指数(PMI)もこの10カ月にわたって50を下回っており、これは製造業部門の生産が長期的な収縮トレンドにあることを意味する。中国経済の成長率は3%かそれを下回っているかもしれない。
そして政府の赤字財政支出は、実際には間違いなくGDPの3%を超えている。つまり、中国の実体経済はおそらくまったく成長していないかもしれないし・・・いまや中国経済を動かしているのは政府支出だけだと考えてもおかしくない>
*「中国の台頭」の終わり 投資主導型モデルの崩壊と中国の未来(2016年2月号掲載)ダニエル・C・リンチ /南カリフォルニア大学国際関係大学院准教授
(国際関係論)
<いまや中国はリセッションに直面し、中国共産党の幹部たちはパニックに陥っている。今後、この厄介な経済トレンドは労働人口の減少と高齢化によってさらに悪化していく。
しかも、中国は投資主導型経済モデルから消費主導型モデルへの移行を試みている。中国の台頭が終わらないように手を打つべきタイミングで、そうした経済モデルの戦略的移行がスムーズに進むはずはない。
でたらめな投資が債務を膨らませているだけでなく、財政出動の効果さえも低下させている。近い将来に中国共産党は政治的正統性の危機に直面し、この流れは、経済的台頭の終わりによって間違いなく加速する。
抗議行動、ストライキ、暴動などの大衆騒乱の発生件数はすでに2000年代に3倍に増え、その後も増え続けている。
経済の現実を理解しているとは思えない習近平や軍高官たちも、いずれ、中国経済が大きく不安定化し、その台頭が終わりつつあるという現実に向き合わざるを得なくなる>
*中国経済のスローダウンを分析する(2016年2月号掲載)セバスチャン・マラビー /米外交問題評議会シニアフェロー(国際経済担当)
企業投資の前提は高度成長であり、成長の結果である消費の拡大によって、投資が作り出す財が吸収される。しかし、経済成長がスローダウンすれば、大規模な不良債権を抱え込む。これが資金の流れを淀ませ、経済成長は鈍化する。成長率の鈍化はさらに多くの融資を不良債権化する。
中国でこの手のネガティブなフィードバックループによる負の連鎖が起きる危険がある>(以上)
欧州はついこの間まで中共の台頭を歓迎していた。英独仏の首脳は昨年、商売のために立て続けに訪中し、ウィンウィンとニコニコ顔だった。習近平も李克強もせっせと欧州を訪問した。
軍事的脅威については、地政学的には「極東の話」だからほとんど今も用心していないが、中共の経済失速には「あれあれ、どうなっちゃっているの?」とけげんに思うようになったろう、一周遅れだが。
つまり欧州も中共への投資を控えるようになる。リスキーだからだ。撤退する企業も増えるだろう。カネが中共から逃げる。失血死しかねない。
中共は2008年のリーマンショックをインフラやビルへの固定資本投資で短期間で切り抜けた“成功体験”がある。成功は失敗の元でもあり、先進国はそれを知っているが、北京は初心者だから知らない。現在の苦境も固定資本投資で切り抜けられると思っているようだが、人民網3/2でさえ「大丈夫だろうか」と迷いに迷っているようである。
<1つの物件の価格が1日の間に3回の値上げ、手続きロビーで並んでいてなかなか順番が回ってこない。不動産仲介業者の門前には長い行列ができていた…
春節が終わると、中国の不動産市場は低迷から抜け出したかのように活発になり、上海、北京、深センなど一線都市では不動産価格がまるでカンフル剤を打ったように上昇し続けた。そして両会の時期になると、不動産価格の問題に再び焦点が当たるようになった。
中国の不動産価格は安定するだろうか。国土資源部(省)の姜大明部長は9日、「都市別に対策をうち出す努力をすることで、不動産価格は必ず安定する」と述べた。
姜部長は、「両会期間に多くの代表委員が土地の供給面積を増やして不動産価格を安定させる必要があると提言した(平井=加熱させるなということ)。国土資源部はこれに対し保護策と抑制策の使い分け、構造の最適化、分類に基づく調整などの措置を取って、都市の土地供給面積を合理的に増やしていく」と述べた(平井=実態を見ながら土地供給をコントロールしていくということ)。
全国政協委員を務める清華大学経済管理学院の李稲葵教授はこのほどメディアに対し、
「現在のようなキャッシュフローが相対的に充足した基本的環境(平井:投資先がないのでカネが余っている)を、大都市の不動産価格の急激な上昇に転換させてはならない。目下の不動産価格上昇をあおる金融パワーは前回よりも大きく、大勢の人が市場の外で資金の分配を行っている(平井=マネーゲームをしているということ)。
そこで為替市場も含む金融市場を全体的に安定させることが必要で、そうしなければ債務の再編を加速させ、遅れた生産能力の撤退を加速させ、不良債権の処理を加速させることはできない(平井=構造改革はできないということ)>(以上)
「カンフル剤を打ったように上昇」・・・つまり江沢民派が売り逃げをし、経済不安を起こし、習近平に打撃を与えようとしているということだ
ろう。
金融市場の安定は結局は市場にゆだねるしかないが、一気に元安が進めばハイパーインフレで経済は不調となり、人民の不満は大爆発するだろう。中共はIMFにすがるかもしれないが、そうなれば軍事予算は真っ先に切られる。軍は利権を守るためにクーデターを起こすしかないのではないか。
いずれにしろ「中華民族の復興」は「中国の夢」で終わりそうだ。
(2016/3/15)