2016年03月26日

◆韓国が重ねる歴史研究の「虚偽」

古田 博司



自分たちが作った「韓国史」という偶像を崇め奉る韓国人

最近、第2期日韓歴史共同研究委員会(2007〜10年)日本側委員たちに、当時の韓国側総幹事である鄭在貞氏(ソウル市立大教授)から、著書が送られてきた。『日韓〈歴史対立〉と〈歴史対話〉』(新泉社)という本で、日韓歴史共同研究について多くのページを割いている。

同研究委員会は日韓両国首脳が合意して始められ、日韓の歴史を両国学者が共同で研究する事業である。特に第2期は古代、中近世、近現代に加えて、「教科書小グループ」を新しく設け、両国の歴史教科書の記述ぶりについても検証し、共通認識は教科書編集過程で参考にし、おのおのの教科書制度の枠内で努力することとしたものである。筆者が教科書小グループの日本側のチーフだった。

 ≪政争の材料とされた歴史教科書≫

ところが著作では、「今回の共同研究の目標の重要な一つは、歴史教科書の記述を支援することであった」(249ページ)と、参考程度の教科書記述ぶりの結果が、重要な目標にされてしまった。それならば「日韓歴史共同研究委員会」は「日韓歴史教科書共同研究委員会」になってしまうだろう。

≪親北左翼政権を見越した提案?≫

そもそも韓国が歴史教科書を巡る政争を日本に仕掛けてくるのは、親北左翼政権下の時に限られている。過去2回は01年の金大中氏と05年の盧武鉉氏の政権時であった。

北朝鮮に国家支援や秘密支援を送り、韓国が北の経済を支える時代である。その時代には北に同調する分、国内の不満を積極的に日本へと向けてくるのである。

総幹事・鄭在貞氏は、次が親北左翼政権になることを見越して、第3期日韓歴史共同研究委員会を提言しているのであろうか。政争が起こるたびに関わり、政治的なポジションを高めていくというのは、コリアの学者の行動パターンの一つである。これには李氏朝鮮の儒学者・張維(1587〜1638年)の自己批判がある。

「中国には学者がいるが、わが国にはいない。蓋(けだ)し中国の人材は志が頗(すこぶ)る並みでない。志のある士大夫であれば心から学問に向かい、好むところ学ぶところも同じではない。そこで各々(おのおの)が往々にして実を得るのだが、わが国は違う。齷齪(あくせく)と縛られ、未(いま)だにみな志がない」(『谿谷漫筆』巻之一)

李朝の宮廷では、朱子学の諸説を巡って士大夫(官僚)たちが偉くなろうと政争を繰り返していた。今は植民統治の研究を巡り、政争を繰り返しているのである。

 ≪自ら作った偶像を崇め奉る≫

『帝国の慰安婦』の著作により、韓国憲法で保障されているはずの学問の自由を奪われた朴裕河氏もこのケースだ。

第2期の教科書小グループの委員である重村智計・早稲田大学教授は、報告書の論文に朴裕河氏の著作を引用したところ、「引用するならば論文として認めない」という韓国側の主張により引用を削除された。先の鄭在貞氏の著書で「日本側は自国の歴史教科書はいっさい扱わずに韓国史教科書だけを検討した」(246〜247ページ)というのも虚偽であり、「日本歴史教科書の現代韓国記述ぶり」を書いた重村氏に対して失礼である。

最後に、「ある日本側の委員が約束を破って、右派の大衆雑誌に委員会の進捗(しんちょく)状況を公表して物議を醸した。しかも韓国史と韓国側の委員を批判する内容であった」(249ページ)というのは、私のことらしい。

約束というのは、本研究と直接関係のある内容を予(あらかじ)め公表しないというものだった。ゆえに最終報告書とは関係のない「韓国『正しい歴史認識の虚構と戦略』」を毎日新聞社のアジア調査会『アジア時報』に掲載した。

右派ではないし、委員会の進捗状況など書かれていない。「韓国史を批判した」というが、鄭東愈(てい・とうゆ)という儒者の『晝永編(ちゅうえいへん)』(1805年)を紹介し、李朝には針がなくシナ針がなければ衣も縫えない、舟はあるのになぜ車はないのかと嘆いていると、コリアの技術水準の低さを示しただけだ。

韓国人は自分たちが作った「韓国史」という偶像を崇(あが)め奉る。まるで旧約聖書でモーセが打ち砕いた異教徒の「金の子牛」崇拝のようだ。最後に、日本の実証研究の遺産は韓国よりもむしろ台湾で育っていることを付言しておこう。
(ふるた ひろし・ 筑波大学大学院教授)   
                 産経ニュース【正論】2016.3.17


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