平井 修一
人も企業も「信用第一」である。信用を失ったら顧客は寄り付かないし、協力企業は「前払いなら」となる。信用を取り戻すには莫大な費用と時間がかかる。築城8年、落城一日。実に恐ろしいことになるから経営者は「信用第一」を常に心がけるのだ。
argusakita氏の論考3/23「SHARPや東芝の破綻を期待」から。
<どうやら鴻海によるSHARPの買収が相当な延期あるいは白紙になりそうな模様だ。一方の東芝は証取委が事情聴取などを始めたようで、粉飾決算による虚偽の有価証券報告書で5,000億を超える資金を集めたことで、ひょっとすると東京地検特捜部なども腰を上げる可能性が出てきた(当然である)。
筆者はこの2つの企業に恨みも何も無いが、破綻(更生法適用や再生法適用なども含めて)を大いに(ワクワクして)期待している。しかし、破綻によって生まれる失業者や下請けの破綻によって発生する不幸をメシウマと喜ぶために期待しているわけではない。
大企業、特にこういった技術をウリにした製造業が破たんするということは、人的資源、物的資源、子会社、関連会社、取引先を含めた商売のネットワークなどの経営資源が一斉に『解放』されることであって、それらがゼロになるのではない。そこに大きな可能性があるから期待なのである。
解放された各種の資源がどれだけの社会的、経済的、技術的インパクトがあるか・・・
また、SHARPのように貸し倒れの痛みを食らう金融機関シンジケートが破たんをさせなかったり、東芝の粉飾決算をウヤムヤにして再融資やつなぎを行うなどムラ社会あるいは護送船団方式で株式を維持するといった不透明なスキームは日本の株式市場に対する信認に疑義が生じ、株式市場に対する投資家達の動向に大きな影響を与えることになる。
さっさと会社更生法なり民事再生法なりを適用する等でSHARPや東芝といったブランドをリスペクトしながらも“レジェンド”にしてしまうのが中長期的に見て日本全体にとってどれほど有意義なことか。
SHARPや東芝といった大企業の場合、保有するそれらの資源は多岐に亘るはずで、技術的なものだけを考えても、特許や実用新案も膨大な数が保有されているはずである。
例えば、もし、それらを一旦公的な機関(あるいは清算会社)で管理することができれば、それらを他の大企業よりも様々なベンチャー(当然日本企業優先)に優先的に廉価で使用させたりしたなら新たな製品や市場が出てくるに違いない。
地方のベンチャーならさらに有利といったインセンティブを付加したら、地方での起業や企業誘致にも活用できだろう。
図体の大きな大企業では発生する各種間接経費(営業所、支店、本部経費等)のせいで、良いモノであっても生かせなかったニッチなものを小規模なベンチャーなら実現できる可能性は大いにあるはずだ。筆者のマイクロな企業ですらSHARPのある特許については非常に関心があるくらいだ。
生産設備を切り売りすることは難しいかもしれないが、流行りのIoTや欧州で言われるところのインダストリー4.0を用いてフレキシブルな生産設備を複数の企業が共有することもあり得るだろう。
本社を始め拠点のビルはオフィスビルとして開放したり、大学やベンチャーの研究拠点やサテライトに使わせることも可能なはずだ。何しろネット等のインフラは既に十分揃っているはずだからである。
技術だけではなく、大企業の場合は社員用の福利厚生施設なども保有している場合があり、それらを一般に開放して新しいビジネスにすることもあるだろうし、それこそ待機児童対策の保育施設にという場所もありそうに思える。観光地にある場合には、外国人に特化した宿泊施設や研修施設などアイデアは様々に出そうだ。
そういった様々なベンチャーや新しいビジネスを思いつくのは外部の人間よりもその大企業の様々な資源を熟知しているはずの社員達なのである。
国や自治体はそういった起業をする人やそれらの短期間の生活保障といった部分で支援もできるだろう。
数万人、場合によっては数十万人の社員とその家族を数でみれば、『解放』によって一度にその数だけの人的ネットワークが数的にも地理的にも構築されることになることで、これは凄いことである。
そんな大きな可能性を見ぬふりをして、貸し倒れ損をしたくない金融機関とポジションに執着する経営陣の保身のために若干の不採算部門を分離し延命措置をしたところで、組織の体質が大きく変わるはずはなく、よほどのオリジナルが無い限り、規模の大きな同業に負けるのは明らかで、じり貧に陥ることになる。
金融機関は貸し倒れ引当金を積み増す時間が欲しいだけで、それが達成できればメガバンクなどは特に大きな問題ではないはずで、その元大企業がどうなろうと知ったこっちゃない。金貸しとはそういうものだ。
大企業を『解放』し、その資源を開放・分散しながらも強力な人的・物的ネットワークは人間が必ずkeepする。その後にまたその元大企業の『縁』でまとまってスケールメリットを追及しても良いはずだし、少なくともゼロから始めるよりは圧倒的なスピードが期待できる。
そういったアメーバ的なスクラップ&ビルドが出来ない大企業はグローバリズムというイデオロギーが席巻している現在は生き残れない。それこそ破綻=ゼロに向かうだろう。筆者のマイクロ企業が『公器』などと尊大なことは言えないが、大企業は間違いなく『公器』である。勿体ない>(以上)
企業が破綻すると、再生する可能性がある場合は更生法/再生法で対処する。再生は無理だとなれば破産になる。
破産すると、資産を処分して債権者に返済することになるが、債権者の優先順位がある。一番は国で、滞納した税金を徴収する。二番は労働債権(賃金)で、従業員に払われる。残ったものを一般債権者(取引先)が分けるのだが、通常は債権の2〜3%ほどしか戻らない。そして企業は完全に消滅する。
これだと従業員は路頭に迷うことになるから、国はできる限り再生させようとする。大企業であればあるほど破綻の悪影響が大きいからだ。失業者が出る、地方経済が悪化する、債権者は青くなって連鎖倒産、株主も真っ青。
それなら従業員は人員を整理して、かつ30%賃金カットに応じる、債権者は10%返済で我慢してもらう、株主は全部諦めてもらうとかで納得してもらう。銀行は新たに融資し、国も金を出す。こうして再生を進めるわけだ。
その過程でargusakita氏の言うように、いろいろな企業資産を売却するなり、レンタルするなり有効に活用できれば、日本経済の活性化にもなり得る。自主再建にこだわってぐずぐず時間を潰すよりも、思い切って更生法/再生法で対処する方がいい場合があるだろう。SHARP、東芝の経営者はその選択肢を検討すべき時期に来たと思う。(2016/3/25)