2016年03月31日

◆トランプの本質は“幼児的攻撃性”の小商人

杉浦 正章



「対牛弾琴」だが反論する
 

なんともはや米大統領選はとんでもない“化け物”を生んでしまったようだ。本選挙では民主党のクリントンが勝つだろうが、米国社会の歪みを見る上で極めて興味深いのが、共和党候補が実業家のドナルド・トランプになりそうなことだ。


その発想たるやすべてを自分の不動産業の経験から割り出す、「経費削減至上主義」だ。最近では日本への軍事経費を削減するため、日本の核武装を勧めるに到っている。すべてが安全保障への無知から来る“小商人(こあきんど)”の発想であり、成り上がりの財界人にみられる「幼児的攻撃性」の権化のようでもある。


北朝鮮にも金正恩という幼児的攻撃性の権化が存在しており、まさに世界の2大奇人が太平洋をへだてて向き合っている。いずれも論語の「小利を見れば大事ならず」で、常に小さな利益を重視して、大きな事業ができるような政治家ではない。


幼児的攻撃性は専門家によると先の先まで読むことが出来ず、常に敵を作る傾向がある。自分の目的や願望を拒むものは両親ですら敵という精神状態だ。


最近のトランプは移民に対する差別発言ばかりでは票にならない事に気づいたか、矛先を日本に向け始めた。最大かつ最良の同盟国を敵に回す発言だ。牛に琴を弾いて聞かせても意味がないことを「対牛弾琴」というが、ここは反論せざるを得ない場面でもある。
 

まずトランプは「米国が日本を守っていることをほとんどの米国人が知らない。日本に金を払わせる。負担を大幅に増やさなければ在日米軍を撤退させるべきだ」と、自分の無能なる尺度を丸出しにして発言した。これは無知から来る愚者の理論だ。日本が世界で唯一「思いやり予算」として今後5年間に9465億円を払う約束をしたことを知らない。


年間1848億円であるが、それとは別に基地周辺対策費、施設の借料、土地の賃料などを加えると年間なんと6710億円の支払いとなる。人種差別主義者だけあって、北大西洋条約機構(NATO)には何も言わないが、NATOが思いやり予算を払っているなどと言うことは聞いたことがない。


湾岸戦争の際にも130億ドル、約1兆5500億円もの戦費を負担しており、現在の中東危機に対する経済的貢献も大きい。日本のカネがなければ米国の世界戦略は成り立たないのだ。「その無知を恥じよ」と言っても馬耳東風だろうが。
 

さらにトランプは「日本は北朝鮮から自分の国を守った方が好都合だ。北朝鮮が核を持っている以上日本も核兵器を持った方がいい」と日本核武装論を展開した。これは日本に核武装させないというのが米国の極東安保の基本であることすら知らない。


なぜなら日本が核武装すればだいいちに「核の真珠湾」が怖い。信長の昔から奇襲攻撃に長けた民族であるからだ。トランプの居るホワイトハウスに正確に命中する核ミサイルなどすぐにでも完成できる。


第2の理由は世界第3の経済大国の核武装は日本が軍事大国化することを物語っており、単に極東のみならず世界の勢力バランスが大きく崩れる。


したがって世界の安全保障は常に動揺する。核不拡散条約は崩壊し、世界の政治・外交・安保の秩序も予測不能の事態となり、もともと機能を発揮しない国連はさらなる弱体化を招く。米国の地位は相対的に低下して、小商人が目指す「米国の復活」などは絵空事となるのだ。


トランプは格好づけか「外交政策チーム」なるものを作ったが、そのトップに据えたのが上院議員・ジェフ・セッションズ。共和党では最右派に属し、不法移民問題に熱心に取り組んでいる議員だが、共和党本流からは馬鹿にされている。ブレーンとして機能するわけがない。


さすがに国務省のカービー報道官は、荒唐無稽(むけい)の対日発言に「ケリー国務長官も当惑している。アメリカは日本や韓国との条約を真剣に守るという考えに変わりはない」と、しごく当たり前の発言で沈静化に懸命だ。しかしただでさえ日本の一部にある核武装論を刺激してしまった。


大阪府知事・松井一郎は29日核保有の是非も含め安全保障政策の議論を進めるべきだとの考えを示した。松井は「日本はどうするのか政治家が真剣に議論しないといけない。完璧な集団的自衛権の方向か、自国で軍隊を備えるのか。そういう武力を持つなら最終兵器が必要になる」と述べた。まともな核武装論としては最初のものだ。
 

こうして米国内にとどまらず、世界中に迷惑をもたらす奈良騒音傷害事件の騒音おばさんのように、騒音老人がかしましいが、日本のマスコミ、とりわけ民放テレビは、今にも大統領になるような面白半分の報道を繰り返さない方がいい。予備選で大統領候補になっても本選挙が物事を決める。


共和党も分裂するかも知れない。まだ曲折があるうえに世論調査は冷静な傾向を示している。CNNの最新の世論調査でも全体の56%がクリントンが本選を制するだろうと回答。トランプの勝利を予想したのは42%にとどまっている。トランプの大衆催眠術にかかった米国民も、やがては目覚めると思う。

          <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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