2016年04月13日

◆無所属なのに党役員ってどういうこと?

酒井 充



民主党が維新の党を吸収合併した民進党が3月27日に発足し、150人規模の野党第一党が誕生した。ただ、新代表は旧民主党の岡田克也代表が「続投」したとあって、「新党」のイメージを欠き、政党支持率も伸び悩んで
いる。

あまり注目されない中で、党に所属しない無所属の国会議員が党の要職に就くという不可解な“脱法行為”が、淡々と実行されていた。

経緯が複雑なので、順を追って説明する。民進党は旧民主党の130人、旧維新の党の21人、解散した改革結集の会の4人、無所属だった水野賢一参院議員の 計156人で発足した。

解散した旧維新の党は議員26人の政党だったが、参院議員の小野 次郎、川田龍平、柴田巧、寺田典城、真山勇一の各氏は民進党に参加しなかった。正 確に言えば、この5人は参加したくてもできなかった。比例代表選出議員の政党の 移動を原則禁じた国会法の規定があるためだ。

小野、柴田、寺田3氏は平成22年の参院選で当選した。真山氏はこの選 挙で落選したが、24年に繰り上げ当選している。川田氏は25年の参院選で当選。いず れもみんなの党の比例代表で当選した。だが、党内抗争が激化したみんなの党は26年 12月の衆院選を前に解散した。

 国会法は、比例選出議員の政党の移動禁止の「例外」として、選挙時には存在しなかった新党への参加や、他党との合併に伴う移籍などを認めている。ただ し、合併の場合は比例名簿を届け出た政党が存続していることが条件となる。

本来ならば、松野頼久衆院議員(比例九州)ら旧維新の党の比例当選議員も民進党に参加できない。しかし、民進党は民主党を存続させた上で維新の党が合 流する「存続合併」方式で誕生した。松野氏らは旧維新の党として合併を意思決定し たので、合流が可能となった。

一方、みんなの党はすでに解散していたため、当選時にみんなの党に所属していた小野氏ら5人の民進党への合流を意思決定すべき主体が消滅したとみなさ れている。そのため5人は民進党に参加できないのだ。

しかし、小野氏は民進党の副代表に、川田氏は「次の内閣」厚生労働相にそれぞれ就任した。副代表は、党規約で「党運営に関する重要事項を議決する機 関」と定めた常任幹事会のメンバーだ。川田氏も、党の政策を審議、決定する「次の内 閣」の一角を占める。いずれも要職といえる。

民進党には今後、税金による政党助成 金が97億300万円(28年分)交付される。巨額の税金が投入される公党の意思決定 に、「部外者」の国会議員が深く関与するというわけだ。

なぜ、このような事態が生じたのか。

川田氏をのぞく4人は夏の参院選で改選を迎える。真山氏は参院選神奈 川選挙区に「国替え」出馬する見通しで、小野氏ら3人は比例代表で出馬する予定 だ。

だが、比例代表は政党が候補者の名簿を提出して争うので、「無所属での比例候 補」は存在し得ない。改選を迎える小野氏ら参院議員の任期満了は7月25日。

参院選の 投開票日は7月10日が有力視され、告示は6月中となる見込みだ。無所属のままでは民 進党公認として戦えないので、小野氏らが民進党から比例代表で出馬するためには告 示前に辞職する必要がある。

つまり、国会法の規定で民進党に参加でないとはいえ、いずれ「民進党公認」で参院選を戦うのだから、今から「民進党の議員として扱う」という意図が あったと推測される。晴れて当選した暁には、堂々と党所属参院議員として迎えるのだ ろう。

そこで「苦肉の策」として編み出したのが、党規約の付則の「経過措置」という項目だった。そこには次のように明記してある。

「本規約にかかわらず、2019年9月末日までの間、共同会派に所属する 国会議員で、本党所属議員でない者に、役員又は役職を委嘱し、両院議員総会の決 議に基づき両院議員総会における議決権を付与することがでる」

さらりと書いてあるが、「超法規的措置」といえるこの項目により、小野氏らは事実上「民進党所属の国会議員」として扱われているのだ。期限は2019年9 月末。川田氏が改選を迎える平成31年夏の参院選の後までなので、川田氏は少なくと も今後3年り、「無所属なのに民進党議員」として扱われるという異常な事態が続 く。

要職を務める小野、川田両氏以外の3人も、党大会に次ぐ議決機関である両院議 員総会での議決権を持つことになった。

付則を含め党規約は3月27日の結党大会や4月5日の両院議員総会で、異 論なく了承された。「無所属議員を党所属議員として扱う」という政党政治の根本が 問われるような異常な事態に対し、誰も異を唱えなかったのだ。

そもそも選挙後に政党を移動した比例選出議員の行動は、国会法の趣旨から外れた脱法行為としか言いようがない。

議員の政党間移動を禁じた改正国会法は、森喜朗内閣時代の平成12年4 月27日に成立した。改正案は自民党などの与党を中心に議員立法として国会に提出さ れた。

衆参両院の委員会で提案理由説明を行った自民党の鈴木宗男衆院議員(当時)は「現行法は衆参議員とも当選後、選挙のときに所属していた政党から他の 政党に移動することには何らの制限も加えられていない」と指摘。その上で「しかし ながら…」として、次のように続けた。

「比例代表選出議員が当選後、他の政党に移動することについては、選挙に示された有権者の意思と全国民を代表する議員の地位をめぐって、国会をはじめ 学界、マスコミ等各方面で種々論議のあったところであります。

これらの論議を踏ま え慎重に検討した結果、本案は、衆参比例代表選出議員が当選後、当該選挙で争った 他の政党等に移動することは、有権者の意思に明らかに背くものであることから、こ れを禁止することといたしております」

さらに、鈴木氏は「比例選出議員が、選出された選挙における他の名簿届け出政党等に所属する者となったときは、一定の場合を除き、退職者となることと している」と指摘していた。

鈴木氏は「一定の場合」として、この記事の冒頭で触れ た「例外」の事例も説明したが、政党を移動した議員はあくまで「退職者」となることが、このときの改正の趣旨なのだ。

国会法改正案の衆参両院の委員会での実質審議はそれぞれ1日だけで、 採決では当時の民主党を含め与野党が全会一致で賛成した。つまり全党が、法の趣旨 に賛同したといえる。

ところが現状はどうか…。「有権者の意思に明らかに背く」として「原 則禁止」に賛同したはずの国会議員が、「例外」という抜け道を最大限活用して頻繁に政党を移動している。

 国会法で移動禁止の対象となる現職の比例選出議員は衆院180人、参院96人の計276人いる。このうち、18・1%にあたる50人(衆院31人、参院19人)が前回の 選挙後に政党を移動した。比例選出議員の約5人に1人が、法の趣旨に照らせば本来は 「退職すべき議員」なのだ。

衆院の場合は、26年12月の衆院選後に維新の党が分裂したことが大きく影響している。松野氏ら旧維新の党の比例選出議員17人は民進党に合流した。これも 本来は自らが「原則禁止」とした行為だ。参院はみんなの党が消滅したことが大きく 影響し、移動した19人中、11人が旧みんなの党で当選した比例議員だ。

移動した議員を現在所属している政党別にみると、民進党が19人と最も多い。民進党は無所属議員5人も党所属国会議員として扱っているので、その数は実 態として24人となる。民進党の比例選出議員の総数は5人を含めると69人なので、 34・7%に上る。実に3人に1人以上が、「有権者の意思に明らかに背く」のだ。

そんな脱法行為に平然としている政党が今、「安倍晋三政権は立憲主義を踏みにじっている」と声高に叫んでいる。法の趣旨を理解していないのか、それ とも忘却しているのか。あるいは、理解した上で無視しているのか、単なる厚顔無恥 なのか…。

立憲主義の重要性を訴える前に、まずは自らの行為を真摯に見つめ直さない限り、民進党が国民の信頼を得ることはないだろう。

産経ニュース【酒井充の野党ウオッチ】 2016.4.12
                 (採録:松本市 久保田 康文)


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