平井 修一
AFP3/17「IS、支配地域の約5分の1失い衰退傾向に」から。
<国際軍事情報企業IHSジェーンズは16日、「イスラム国(IS)」が、シリアとイラクで2015年初めに支配していた地域の22%を失ったとの分析結果を発表した。米国やロシアの空爆に支援され、反対勢力が攻勢を強めたことが背景にある。
報告書「IHS紛争モニター」によると、ISは依然としてシリアとイラクの広域を支配しているが、支配地域は昨年末までに14%、今年に入ってさらに8%縮小した。今月14日時点での支配地域の総面積は7万3440平方キロだという。
IHSの上級アナリスト、ストラック氏は、「ISはますます孤立しつつあり、衰退の傾向にあると思われる」と分析。これにより、ISの主要なライバルであるシリアの国際テロ組織アルカイダ系組織「アルヌスラ戦線」を利する形になっていると指摘した。
ストラック氏はまた、「ISの孤立化が進み、軍事的敗北が今後も続けば、ISが外国のイスラム過激派をシリアに勧誘することも難しくなるだろう」との見方も示している>(以上)
流れは変わってきたのか。佐々木伸氏(星槎大学客員教授)の論考「バグダディはどちらが捕らえる? IS追い詰めた米露特殊部隊 パルミラ奪回の裏でも暗躍」(ウェッジ4/4)から。
<米国もデルタフォースなどの特殊部隊の動きが活発になっている。3月にはシリア東部で、米特殊部隊がISのナンバー2であるハジ・イマームの車両を武装ヘリで追跡し、イマームを殺害した。当初は情報収集のために生きたまま拘束することを狙ったが、イマームが逃走したためミサイルで攻撃した。
米国は現在、シリア北部のクルド人地域に約50人の特殊部隊を投入。クルド人の武装勢力「人民防衛隊」(YPG)の軍事顧問として、助言などを与えている。またイラク北部のクルド人自治区の首都であるアルビルには、約200人のデルタフォースが駐留している。
このデルタフォースはISの首都であるシリアのラッカやモスルにスパイ網を張り巡らし、衛星監視、交信やメールのやり取り傍受などを通じて、アブバクル・バグダディらISの指導者の行方を追跡、拘束や殺害の機会を狙っている。
米軍関係者によると、米軍は3日に1人の割合でISの幹部を殺害、このためもあってISの指揮命令系統はずたずたの状態だ。米国は組織の弱体化が著しいと判断しており、近くラッカ制圧とイラク第2の都市モスルの奪回作戦を開始する見通しだ。オバマ政権はこれら作戦に先だって、幹部らへの攻撃をさらに強めたい考えだ。
イラク駐留の米特殊部隊は昨年5月にシリア東部でISの経理担当の責任者を殺害、その妻を拘束してISの財政状況やバグダディの行動範囲などの貴重な情報を入手した。また10月には、イラク北部のISの捕虜収容所を急襲、処刑される寸前のクルド人約70人を救出した。
暗殺を恐れて姿を消しているバグダディは近い将来、尊敬していた国際テロ組織アルカイダの指導者、オサマ・ビンラディンが潜伏先で米海軍特殊部隊シールズに殺害されたのと同じ運命をたどるのかもしれない>(以上)
IS支配地域の総面積は7万3440平方キロとあるが、これは北海道(8万3450平方キロ)を一回り小さくした広さだ。ただISは面ではなく「点/拠点と線/道路」を支配しているので、距離はかなり長いだろう。あちこちの街を新たな支配下におく上ではいいが、防御となれば縦深防御が難しいのではないか。
ウィキによれば縦深防御は、攻撃側の前進を防ぐのではなく、前進を遅らそうとすることを目的とする。それにより、時間を稼ぎつつ、攻撃側の前進による占領地域の増加と引き換えに敵の犠牲者を増加させる戦略だ。
ただ負けが込んでくると、近隣の支配地に撤退する際には丸見えとなり、攻撃を受けやすくなるのではないか。昔から主力を撤退させるための殿(しんがり)戦は非常に犠牲が多いという。
ISは資金源も細り、守勢に回りつつあるようだ。負けが込めば逃亡する兵士も増えるし、リクルートにも支障が出る。今後も動向をウォッチしていこう。(2016/4/11)