2016年04月13日

◆「ポスト安倍は安倍」だが、岸田も善戦

杉浦 正章



万一の場合はダークホースで菅もあり得る


産経と日経が広島でのG7外相会合の成功で外相・岸田文男が「ポスト安倍」 に向けて存在感が高まったと報じているが、果たしてそうか。確かに「一強多弱」の政治構図のなかで「多弱」の中から頭一つ抜きん出た感じはある。目立ったからである。


しかし産経と日経の論法で言うならば本番サミットで首相・安倍晋三がリーダーシップを発揮すれば「ポスト安倍は安倍」ということになってしまう。安倍がダブルに踏み切って衆参で絶対安定多数を維持すれば、ますます「一強」ぶりは高まる。焦点は外交と言うより夏の“政治決戦”の動向にあるのだろう。
 

確かに自民党内が、政局に向けて今ほど「寂(せき)として声なし」の状況は珍しい。長期政権で最長の7年6か月2,798日を達成した佐藤栄作の場合を例に挙げれば、実に4回にわたり総裁選を繰り返している。つまり党内抗争を繰り返した上での厳しい政権維持であったが、安倍の場合は昨年の総裁選に候補者が立たず無投票で2018年9月まで3年の任期を確保している。無競争で6年が維持される例は自民党史上希有のことである。


場合によっては任期を延長してオリンピックも安倍という事もないではない。この安定の原因は何処にあるかだが、何と言っても選挙に強い首相であることだ。過去3回の国政選挙で与党を圧勝させた首相が依然として支持率50%前後を維持しているのでは、文句の出ようもない。衆参議員は自分の当選が何より大切なのであって、支持率が高いリーダーが自分の為にも必要不可欠なのだ。
 

これには小選挙区制という選挙制度が強く作用している。佐藤の場合は中選挙区制であり、同一選挙区内で自民党各派が戦う構図である。勢い党内もぎすぎすして、総裁選をめぐって怨念の戦いが繰り広げられることになる。


その最大の構図が田中角栄対三木武夫、田中角栄対福田赳夫の戦いであった。小選挙区制では敵は野党であり、党内には敵が生じにくいのだ。加えて安倍の巧みなる党内操縦術がある。将来候補になりそうな岸田文雄、石破茂、石原伸晃を閣内に取り込み、谷垣禎一を幹事長に据えて挙党態勢を形作っているのだ。


これでは、誰も手を出そうとしないし、手を出せば狙い撃ちされるのがオチだ。筆者は週に一度くらい多摩動物園にタカの写真を撮りに行くが、岸田の場合は鷹の大ケージに入ったハトのようなものだ。出来るだけ目立たないようにしていなければ、一発でタカに食われてしまう。その他はスズメでありケージには出入りするが、タカが来ればすぐにケージの外に出てしまう。


こうした中で冒頭書いたように頭一つ出たのが岸田だろう。田中角栄は首相候補の条件として、「幹事長、蔵相、外相の経験があることが必用だ」としたが、自分は外相経験はなかった。
 

確かに歴代首相を見れば吉田茂に始まって岸信介、佐藤栄作、三木武夫、大平正芳などそうそうたる首相が「外務省出身」である。


しかし宇野宗佑から羽田孜、小渕恵三、麻生太郎となるとがくんとレベルが落ちる。岸田は外務省が久しぶりに手にしたエースであり、官僚は先を読むから最大限頭を絞ってG7外相会議を成功に導こうとする。その御輿の上に乗って岸田は、頭角を現したのだ。


昨年末の日韓慰安婦合意もG7に勝るとも劣らない成果であろう。対照的に冴えないのが地方創生相・石破茂だ。紛れもなく伴食大臣の椅子をあてがわれたが、その存在感の無さは格別である。田中角栄とは真逆の対応である。


田中は佐藤から幹事長を外されたとき、冷や飯に甘んじるような男ではなかった。党内に都市政策調査会を作って日本列島改造構想を打ち出し、政権獲得の支柱にした。ところが石破からは「地方創生」で、何ら斬新的な構想を聞けないままである。若手に小泉進次郎がいるが、まだ10年早い。麻生太郎の復帰などは論外だ。


女性政治家は、昨年の総裁選で推薦人も確保出来なかった野田聖子にせよ、高転びに転んだ民進党政調会長・山尾志桜里といいこのところ無能力さが露呈されている。委員会で携帯をいじくり大あくびする元法相・松島みどりなどを見れば、日本の女は政治家には適さないのだろうとつくづく思う。
 

しかしいくら強い首相でも、万一のケースがないとは言えない。病気で倒れたり、不慮の出来事に遭遇したりする可能性は否定出来ない。その場合だれがなるかだが、衆目の一致するところは谷垣であろう。人格といい、党内に敵を作らない姿勢といい常識的にはあり得る。しかし官房長官・菅義偉というダークホースが存在することを忘れてはなるまい。


石原慎太郎は“雑文”「天才」を書いても田中角栄の敵だったから知るまいが、かつて大平が急逝したとき、キングメーカー田中は一時官房長官・伊東正義に視線が及んだことがあった。伊東が固辞したため鈴木善幸になったが、結局「暗愚帝王」と呼ばれて政権を投げ出した。


伊東は大平の緊急入院で内閣総理大臣臨時代理を務めたが、周囲からいくら勧められても首相執務室には入らずに官房長官執務室で仕事を続けた。田中は「伊東があったんだ」と漏らしていた。


その伊東に勝るとも劣らない能力を発揮して内閣を支えているのが菅であろう。絶妙のバランス感覚があり、官邸は菅がいるから持っているようなものだ。万一と言うことがあれば菅への禅譲もあり得ると見る。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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