2016年05月17日

◆企業は太り、社員は細る

平井 修一



小生は折に触れて「企業は溜め込んでばかりいないで給料を上げろ、ケチ
ケチするな、社員の可処分所得が上がれば消費の拡大になり、やがて企業
も潤うのだから」と書いてきたが、河東哲夫氏の論考「マイナス金利と先
進諸国におけるデフレ対策の誤り」5/12を読んで我が意を得たりの感がした。

<産業革命でモノがあふれるようになって以来、工業国は何度もデフレに
見舞われてきた。19世紀の後半がそうだし、最近では1970年代米国で「ス
タグフレーション」が表面化して以来、先進国はデフレがその経済の根底
にいつもあると思う。

スタグフレーションは、物価の面ではデフレではなくインフレだったのだ
が、それは1974年の石油危機で原油価格が跳ね上がったからで、基本は
「消費と投資の停滞」、つまり「生産設備の過剰と購買力の不足」にあっ
たのだ。

昔から共産主義者が揶揄してきたとおり(「大衆窮乏化理論」と言って、
資本家が労働者を搾取してろくに給料を払わないから、資本主義では需要
が不足するというもの)、「資本主義工業社会は過剰生産設備と購買力の
不足によって国内経済は行き詰まり、海外にはけ口を求めて帝国主義化し
て、戦争で自滅する」シナリオが現実のものとなっているのだろうか。

その共産主義はすべてを分配することで、投資、イノベーションには力が
回らず、資本主義より先に窮乏し自滅してしまったが。

資本主義国での生産能力の過剰は、これからますますひどいことになる。
ロボットとAI(人工知能)で資源も掘れる、モノも作れるということにな
ると、地上の人類は全員左うちわ、奴隷にモノやサービスの生産を押し付
けて自分は上品ぶっていたアテネの市民と同じような境遇を享受できるこ
とになる(カネがあれば)。

ところがアベノミクス工房の人たちは、このデフレを有害で、治療すべき
もの、治療できるものと思って、効かない薬、もしかすると有害な薬を経
済に与えているのでないか。浜田教授や黒田日銀総裁の見立ては理屈倒れ
で、どこか現実から遊離しているのだ。

本来、物価の安定を任務とする日銀に経済刺激の任務も押し付け、自分は
財政出動と国債の増発から逃げようとした財務省の目論見もその背後にあ
るのだろう。

そして、国会議員たちも、日銀たたき、銀行たたきに加わったのだろう。
地方は「シャッター通り」だらけ(東京でもあるが)。不況である。これ
は、その土地の国会議員達には、「銀行が中小企業や商店に貸し渋りをす
るからいけない。銀行がもっと企業や商店にカネをつけるようにしないと
いけない」と見えるだろう。

だから日銀は、銀行が手持ちの国債を日銀に売るように仕向けたり、日銀
への過剰の預金にマイナス金利を課したりして、何としてでも銀行に企業
向けの融資をさせよう、そうすればすべてが良くなる、ということで緩和
政策をやってきた。

しかし、このやり方は間違っている。先に述べたように、現代のデフレの
原因は生産力がどんどん伸びる一方で需要が伸びないことにあるので、物
価を無理に上昇させてそれで企業の収益増期待を高め、投資を増やさせる
というのは、おかしい。

優等生が算数式だけ見て考えるとそうなるのかもしれないが、現実には物
価が上がれば我々は益々消費を控えるのである。

ケインズ政策にせよ、マネタリー政策にせよ、一辺倒や行き過ぎは有害
だ。現実をもっと見てくれないと、生活している人間達はたまったもので
ない。

需要、消費を刺激するには、アベノミクスの別の面、つまり財政支出拡
大、賃金格差の縮小、賃上げへの音頭取りが有効だろう。企業はこの数年
の円安で厖大な自己留保を抱えるに至ったが、社員給与のベース・アップ
には乗り気でない。その気持ちもよくわかるので、ならばボーナスとして
一時金を払えばよかろう>(以上)

社員の懐はちっとも温かくないのに企業の内部留保金はナント343兆円、
国家予算の3年分にもなっている。「企業の内部留保3年で69兆円増加、尻
込み体質鮮明に」から。

<[東京2/29ロイター]過去最高益を出している日本企業だが、昨年9月
末の利益剰余金は343兆円まで積み上がり、安倍晋三内閣発足した直後の
2012年12月から約69兆円増加した。

その一方で、ビッグデータ、人工知能(AI)など最先端分野で米企業に後
れを取っている。また、従業員給与と賞与の総額は減少。貯め込むだけの
企業の姿が浮き彫りだ。日本企業は今こそ、リスクを取って新分野に挑戦
すべきだ。

*経済の拡大、一部に実感できないとの声

アベノミクスがスタートした2012年12月以降、円安の進行と株高によって
企業セクターの活力は急回復した。

民主党政権時代の円高や高い法人税率など「6重苦」が輸出系企業を中心
に重荷になり、日本経済を停滞させているとの批判を経済界から受けていた。

そこから株価はV字回復し、確かに日本経済は明るさを取り戻してきた
が、世の中には、どうも「景気回復を実感できない」という声が多い。

日本経済新聞とテレビ東京が29日に公表した世論調査では、アベノミクス
を「評価しない」が50%、「評価する」が31%という結果になった。  

アベノミクス前半の3本の矢では、大胆な金融緩和と積極的な財政政策、
成長戦略によってデフレから脱却し、経済を拡大基調にすることを目指し
てきた。

実際、2012年から2015年までに国内総生産(GDP)は5%超の伸びとなって
いる。ところが、実質GDPの伸びは1.7%にとどまっている。

このギャップを解き明かすキーワードとして、企業の「内部留保」を挙げ
ることができる。

*従業員の給与・賞与、3年間で1.6兆円減

財務省の法人企業統計によると、2015年9月末の全産業の利益剰余金は343
兆円。2012年12月の274兆円から69兆円も増えている。

一方、従業員給与と賞与を合わせた額は、12年12月の35.1兆円から33.5兆
円へと1.6兆円減少した。

少なくとも、この3年間で企業は利益を積み上げてきたが、従業員の収入
を押し上げるような対応はしてこなかったということが、法人企業統計の
ベースでは明らかだ。

また、国内人口の減少などを背景に、多くの企業は国内における増産投資
を手控えており、利益の増大が付加価値を生み出す方向に波及せず、結果
として企業の内部留保が積み上がるということになっているようだ。

一方、米国系企業を中心に情報分野での技術進歩を生産性の向上に結び付
ける動きが活発化している。「FANG」と呼ばれるネット技術の進歩を生産
性の向上に直結させたアマゾン・ドット・コム、フェイスブックなどの巨
大企業は、あらゆるものがインターネットにつながる「モノのインター
ネット(IoT)」やAI、ビッグデータなどで、日本企業のはるか前方を疾
走している。

製造業を中心にした日本の大企業は、あまりにも組織が官僚化し、アニマ
ル・スピリッツが枯渇した可能性がある。何よりの証拠は「FANG」のよう
な企業が日本国内から出てきていないことだ。

*自社株買い殺到は、安易な道

日銀が1月29日に決めたマイナス金利付き量的・質的金融緩和(QQE)も、
最終的にはキャッシュを持っているよりも、積極的に投資などにマネーを
シフトさせた方が「お得ですよ」とシグナルを送った政策とも言える。

だが、企業サイドに明確な成長モデルがなく、目指すべきフロンティアの
イメージがなければ、より安易な道に向う可能性がある。その1つが自社
株買いの増加傾向だ。

ここ数週間で、著名な企業も含めた自社株買いの発表が相次いでいる。こ
の先、銀行が大口預金に手数料を課し、実質マイナス金利になった場合、
企業はどう対応するのだろうか。

多くの企業が自社株買いをすることは、短期的に株価の下支え要因になっ
たとしても、日本企業の競争力を中長期的に向上されることにはつながら
ない。

3月1日に15年10−12月期の法人企業統計が発表される。もし、そこで12月
末の利益剰余金の残高が10月末より増加しているなら、日本企業の「尻込
み体質」は、いよいよ極まってきたと言えるのではないか>(以上)

利益剰余金は7−9月期49.3兆円、10−12月期51.0兆円と1.7兆円増加、
「尻込み体質」は病膏肓か。

社長は昼に鰻重、夜は久兵衛で寿司、社員は昼は弁当だったのが今はおに
ぎり3個、夜は牛丼だったのが今や豚丼。こんな感じか。

確かに経営は難しく、ナンゾのときに備えて内部留保金は必要だ。それで
も貯め込みすぎ。企業はますます太り、社員はますます痩せ細る。安部氏
はもっともっと、しつこいくらいに「給料上げろ、ボーナス上げろ」と叫
び続けるべきだ。

プア層はうんざりしているのだ。このままだと米国のようにプア層の怒り
が爆発し、選挙でしっぺ返しを食うだろう。(2016/5/15)


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