2016年05月17日

◆世界の嘲笑受け36年 ぶりの党大会は閉幕

久保田 るり子

核保有国を喧伝した金正恩氏の“世界デビュー”は、身勝手な主張への世界
中からの批判と嘲笑の中で終了した。経済計画に具体性はなく政治路線も
従来の追認のみ、新人事にも手を付けられなかった。金正恩氏の「朝鮮労
働党委員長」の新しい肩書のためだけの壮大な無駄遣いの政治ショーだっ
た党大会。

世界は“核兵器を抱いた北朝鮮”を再確認、今後、金正恩体制のさらなる孤
立が確実だ。周辺国は北朝鮮の最終ラウンドに向けた準備を始めているよ
うだ。

■「共産国家に委員長はいない」

党大会で唯一のニュースは金正恩氏の権威付け、偶像化に創作された新し
いポスト「朝鮮労働党委員長」の肩書だったが、専門家からは早くも「意
味不明だ」との声が聞かれる。

「共産国家に党委員長などない。無理矢理つくった意味のない肩書だ」
(北朝鮮問題の第一人者、康仁徳・韓国元統一相)

共産党の最高位は旧ソ連であれば党書記長、第1書記、中国であれば党総
書記、主席である。党の指導組織である党中央委員会の委員長職は中国式
で、金正恩氏の祖父、金日成主席は1949年から69年まで同委員長だった。
だが、ただの党委員長というのは前代未聞の職制だ。

そもそも金正恩氏は世襲後の2012年4月、総書記(正確には中央委員会総
書記)に代わる新ポスト、第1書記に就任している。このとき同時に政治
局常務委員・中央軍事委員会委員長となり、党の最高職に就いたはずだった。

ところが、また今回、改めて党委員長への推戴(すいたい)を行った。こ
れまでの第1書記では権威不足との判断だろうが、肩書ばかり粗製乱造と
いったところか。

■人事の若返りができなかったワケは?

党の最高幹部、政治局常務委員に朴奉珠首相、崔竜海書記の2人を加えた
が、70-80代の高齢者の目立つ権力中枢の幹部人事には手を付けなかった。

朴奉珠氏は工場長から最高幹部に上り詰めた“経済通首相”とされることか
ら、金正恩体制の経済と核開発の「並進路線」の象徴として政治局常務委
員になった。

一方の崔竜海氏は、金日成時代のパルチザン世代幹部、崔賢氏の息子。崔
氏自身は毀誉褒貶(きよほうへん)がある。元々は金正恩氏が粛清した張
成沢氏の最側近だったが、最終的に張成沢氏を裏切って金正恩氏に忠誠を
誓ったとされる人物だ。

金正恩氏の実妹、金与正氏は崔竜海氏の次男と結婚したとの情報もあり、
これが事実なら最も近い身内となる。妹の金与正氏は党の実力組織で党、
軍の幹部人事や粛清を行う組織指導部を任されているとの情報もあるた
め、表の肩書より金正恩氏の“懐刀”のような存在とみられている。

今回、老幹部の世代交代を行わなかったことについては党内安定を優先し
たため「世代交代まではできなかった」との見方が多い。党や軍部で中間
層の世代交代はすでに終わっている。

目を付けられれば即刻、排除され、粛清も盛んに行われている恐怖政治の
浸透で「最近は出世を望む幹部が減った」(北朝鮮情報関係者)とされる。

■米国、中国、韓国、日本周辺国は最終ラウンドを準備中

党大会で明らかになった金正恩体制の主張する“正当性”は換言すれば核保
有しかなかった。金正恩氏は北朝鮮を「恒久的核保有国」を宣言、これを
党規約に明記した。

だが国際社会に彼らの核保有を受け入れる国はあり得ず、この路線は北朝
鮮と世界との軋轢(あつれき)以外に生まない。今後、北朝鮮問題はすべ
てが核実験や核保有に連動して膠着(こうちゃく)することが確実になった。

周辺国は北朝鮮の“最終ラウンド”に向けた調整をすでに開始している。ま
ず日米同盟にとって、朝鮮半島有事は伝統的といってもよい想定の脅威
だ。米中も動き出している。

両国は外相会談などで「金正恩氏の行動は無謀で危険」と明言し、朝鮮半
島がコントロール不能の状態に陥る状況をめぐってシミュレーションを始
めているとされる。「習近平氏が北朝鮮の核に敏感なのは、金正恩の核戦
略が対米向けだけではないと考えているためだ」(朝鮮半島専門家)

米韓はさらに具体的だ。従来の半島有事に向けた軍事訓練をグレードアッ
プした「作戦計画5015」がそれで、韓国の被害を最小限にするため北朝鮮
首脳部へのアタックを含む“斬首作戦”を今年から演習に加えた。金正恩有
事が核兵器、生物化学兵器を使うことを前提に、これら大量破壊兵器をま
ず無力化するのが狙いで、米韓は金正恩氏の軍事挑発には「数十倍にして
報復する」と公言している。(産経新聞編集局編集委員)

産経ニュース【久保田るり子の朝鮮半島ウオッチ】核を抱いて孤立の道へ
 金正恩委員長の寂しき未来を透視すると…

【久保田るり子の朝鮮半島ウオッチ】2016.5.15
                  (採録:松本市 久保田 康文)



            
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