2016年05月18日

◆今こそ 国産の飛行機を

石原 慎太郎



私はかつて都知事在任中に日本を核にしたアジアの大都市のネットワーク
なるものを作り出した。その組織を通じて防災や医療の知識を交流させる
というのが建前だったが、本音は幾つかの都市が政府に呼び掛け協力して
アジア製の中小型の旅客機を作り出すという魂胆だった。

130、140人を乗せる中小型の旅客機は世界の中でのいわば隙間製品でその
有効性は極めて高い。かつて日本はYS11というエンジンをのぞけば全て日
本製の旅客機を作り出し南北に長く幅の狭い国土に合わせて極めて有効に
機能させていたが、それに乗じてアセアン諸国への売り込みを試みたが、
日本の航空機産業の台頭を恐れたアメリカの謀略によって潰されてしまった。

その当時私の親友で後に商社丸紅の社長にもなった鳥海がインドネシアの
丸紅の支店長を務めていてアメリカの航空会社の幹部たちが現地に乗り込
みあらゆる画策を講じて日本機の売り込みを封じた実態を教えてくれたも
のだった。

アメリカは太平洋戦争の緒戦における日本の軍用機の性能に怯(おび)え
て彼らの国是として、以後日本の航空機産業を徹底して潰しにかかってきた。

しかしその一方、航空機に関する日本の技術収奪には飽きることがない。
最近ボーイングが開発中の新型大型旅客機の胴体の大半は日本製のカーボ
ンファイバーで出来上がっているがそれをアメリカに運ぶための巨大特殊
な輸送機までを作って現地に運んでいる実態だ。

現にボーイング社の社長も、「この新型機はメイドインアメリカではなし
にあくまでメイドウイズジャパンだ」と明言している始末。

そうした超大型機の裏をかいて今日の航空機産業の隙間を突いての中小型
の旅客機をアジアで作り出し彼らの鼻を明かしてやるつもりで前述のアジ
ア大都市ネットワークでアジア製の旅客機を作り出すべくその可能性のあ
る国の首都の代表に声をかけものだった。

即座に呼応したのはすでに自前のジェット練習戦闘機を作り出しているイ
ンドの会社『ハル』と、これまた自前の中小型旅客機を作ろうとてアメリ
カの陰謀で潰されたインドネシアのバンドンにある会社、ちなみにその会
社の前庭にはアメリカの妨害で潰された完成予定の旅客機のドンガラが意
趣ばらしに飾られていた。

彼らに加えて航空機の緻密な部品の製造能力のある台湾までが呼応し合同
会議に専門家を送り込んできていた。もしこの計画が成就していたならば
その飛行機は、国内ではかつてのYS11のように限られた距離間で使えば良
いし、インドのような亜大陸ではまだジャンボのような大型の旅客機によ
るような多人数の移動のニーズはまだ乏しいからコストの制約のために中
小型の旅客機が適当のはずだ。

発展の可能性の高いアセアン諸国間の行き来には地域間の距離からしてこ
のサイズの旅客機が極めて有効だという専門家たちの意見の合致をみたも
のだった。

しかしその会議の情報が伝わるとつまらぬ横槍(よこやり)が日本の政府
筋から入りアメリカを刺激せぬようにと新規の旅客機の収容容積に対する
横槍が入ったと聞いた。

その結果日本製の新型旅客機の容積は予定を下回るMRJに縮小させられ計
画に参画していた専門家たちを落胆させてしまったものだ。かつては無類
の強さを発揮しアメリカを震撼(しんかん)させた『ゼロ戦』や当時世界
一高速の偵察機『新司偵』さらに高度の空中でもB29を撃ち落とせた『紫
電改』のような軍用機を生み出した日本の航空機技術を恐れているのは誰
よりもアメリカだ。

中曽根内閣時代に三菱重工が発案したF型次期支援戦闘機の計画をアメリ
カは圧力をかけて潰してしまった。これは空中戦でのドッグファイトでの
宙返り半径が従来の半分という画期的なものだったがアメリカの圧力で潰
され、F15を日米だけで改良使用するという姑息(こそく)な案にすりか
えられてしまった。

世界化現象の中で経済が低迷する日本経済の活路は戦時法制が合理化され
た今、兵器の国産化以外にありはしない。軍事産業なるものはジャンルを
超え他のいかなる産業より底辺が広いのだ。

その中でもアメリカが一番恐れて強引に抑圧してきた航空機産業の国産化
こそが彼等に向かって胸を張り日本の主張を遂げるための有効な手立てに
他なるまい。アメリカの高度航空機たとえば戦闘機の操縦席のほとんどが
日本製であることを多くの者が知らずにいる。

かつてクリントン政権の後期にアメリカの技術調査団がやってきて、日本
の関連企業の生産工程の秘密部分にまで首を突っ込み、結局これは日本産
に依存する以外にあるまいとの結論で引き揚げていったものだ。

彼らの強い関心はコックピットの器材を固定するダッシュボードのセラ
ミック、そして数多い計器の中に入れるクリスタルリキッドだったがその
生産工程と器材の質度の高さは自前では不可能という結論で引きさがった
のだ。

いずれにせよ国家の主権の確立のためには歴史が証明しているように、全
ての兵器
を国産化することが基本なのだ。そして日本は優にその能力を備えてい
る。アメリカが密(ひそ)かに開発しようとしている核兵器を超えた次世
代戦略兵器コンベンショナル・ストライクミサイルのような兵器は恐らく
アメリカを凌(しの)いで精巧な物を日本こそが完成出来る筈(はず)だ。

例えば観測衛星を打ち上げるロケットに取り付けられるブースターは通常
は二基だが、日本の場合には四基もある。アメリカのロケットの打ち上げ
は失敗続きだが日本の内之浦から打ち上げられるロケットに失敗はない。

ことほど左様に日本の宇宙開発の技術は他を凌いでいる。かつて火星まで
飛んでいき小惑星の砂を採取して無事帰還した『はやぶさ』のような技術
はアメリカを含めた他国から見れば垂涎(すいぜん)のものに違いない。

航空機産業に限らず我々は己が保有する高度な技術を高ぶる事なく熟知
し、この混沌(こんとん)の時代に『天は自ら助くる者をのみ助く』とい
う歴史の公理を信じて進まなくてはなるまいに。

産経ニュース【石原慎太郎 日本よ】低迷する日本経済の活路は兵器の国
産化しかない 2016.5.16

                 (採録:松本市  久保田 康文)

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