杉浦 正章
中国の「挑発的行動」への反対も表明へ
先進7か国(G7)首脳会議の首脳宣言は、その核心である世界経済への対応について、首相・安倍晋三の主張通り「機動的な財政出動」を前面に打ち出し、その重要性を確認する流れとなった。安倍はこの路線を25日のオバマとの会談で確認した。
この結果サミットは総じてオバマと安倍がタッグを組んで会議をリードする流れとなった。この結果、安倍が大震災や、リーマンショック並みの事態が発生しない限り予定通り実施するとしてきた消費増税については、これを延期する流れが確定的になってきた。
議長国として首脳宣言に逆行することはまず不可能であり、夏の国政選挙は消費増税延期がアベノミクスの失敗を意味するかどうかが焦点となる。一方、政府筋によると政治宣言では中国の南シナ海進出に「反対」の表明をする流れが出てきた。
25日夜に急きょ日米首脳会談が行われた背景は、沖縄における女性の死体遺棄事件が、日米関係のみならず、サミットとこれに続くオバマの広島訪問などに、影を落としかねない側面があったからだ。安倍は「事件」と国際政治を切り離す必用があり、首脳会談は、安倍の強い抗議とオバマの哀悼の意の表明で、事実上切り離しに成功した。政治的には区切りをつけた形だ。
政府筋によると経済宣言はまずすべての前提として、世界経済の下方リスクに対する強い危機感を前面に打ち出している。中国経済の悪化、石油価格の低迷による産油国経済への打撃などを背景に、宣言は「成長は依然として緩やかで、かつ不均衡であり、世界的な見通しに対する下振れリスクが高まってきている」と警鐘を鳴らしている。
さらに宣言はこの下方リスクが「通常の経済循環を超えて危機に陥る危険がある」と分析した。これは、経済活動が拡張する好況と収縮する不況とが交互に発生する周期的変動を逸脱しかねない大不況に陥る可能性もあり得るとの認識を意味する。
その上に立って宣言は「経済成長、雇用創出および信認を強化するため機動的に財政戦略を実施し、構造政策を果断に進めることに関し、協力して取り組みを強化することの重要性に合意する」との方針を明記した。これは日米のみならず、フランス、イタリア、カナダ、などの意向に合致したもので、財政出動を中心に、G7が協調して世界経済の成長に貢献する姿勢を打ち出したものだ。
一方で財政出動に消極的なイギリス、ドイツに関しては構造改革に言及するなどバランスを取っている。宣言はアベノミクスの3本の矢の発想から、サミット版3本の矢を打ち出した。成長を支えるために「強固で、持続可能な、かつ均衡ある成長を達成するためのわれわれの取り組みを強化することに対する3本の矢のアプローチ、すなわち相互に補強し合う財政上、金融上および構造上の政策の重要な役割を再確認する」としている。
これは日本国内の論調が「財政出動への足並み焦点」(朝日)などと、サミットの食い違いを強調するかのような方向へ傾くのを、戒めた形となっている。もともと世界経済の持続的な成長が重要なのであって、財政出動は構造改革とは矛盾しないことを強調しているものだ。
その証拠に「相互に補強し合う財政上、金融上および構造上の政策の重要な役割」と表現して、あくまで相互補完関係にあることを指摘した。それぞれの国が独自の政策で目的を達成すれば良いという発想だ。
この宣言は26日の会合で確認される方向となっている。経済宣言の大枠が固まったことで、焦点は対中関係など政治問題に移行する。オバマがまずベトナムを訪問してから来日したことが物語るように、南シナ海における中国による海洋進出が俎上(そじょう)にあがる。
ベトナムからは首相・フックが拡大会合に出席のために来日しており、安倍とも会談する。オバマと安倍はサミットで「力による現状変更」に強い懸念を表明し、ヨーロッパ諸国の同意を取り付けたい考えだ。日本としても東シナ海での現状変更の動きに直面しており、その対応についてのサミットの支持を得たい考えだ。
ヨーロッパはウクライナ問題など、ロシアによる「力による現状変更」反対では一致しており、総論としては一致する流れとなろう。さらに南シナ海における中国の進出について、日米は「挑発的な一方的行動として強く反対する」と表明する案を提示しており、サミット全体でも認められる公算が大きい。
ただ中国に対しては、危機感を意識する日米と、西欧諸国とは温度差があり、対中包囲網をサミットとして表明することにはならないだろう。しかし、サミットの成功自体が対中けん制になることは確かだ。
また「パナマ文書」の公開で明らかになった大企業などによる課税逃れの問題についても、税の公平性回復に向けての国際的な連携強化の方針が確認される流れだ。
<今朝のニュース解説から抜粋> (政治評論家)