2016年06月03日

◆安倍は「賢者は聞く」を悟れ

【筆者より】
 政界は選挙戦入りで政治のニュースは途絶えがちになります。今後はニュースがないときは随想風【永田町独語録】でしのぎます。ご愛読ください。

【永田町独語録】

◆安倍は「賢者は聞く」を悟れ
杉浦 正章



官邸筋によると5月30日の安倍・麻生会談は「爺さん自慢に終始した」のだという。巷間の俗説では、消費増税延期で財務相・麻生太郎が3時間にわたる首相・安倍晋三の説得に、やっと首を縦に振ったとされるのが同日の会談だ。しかし、いくら麻生太郎が「解散だ」と首相の特権を奪ったかのように芝居をしても、もともとが盟友関係の出来レース。誰もが「大芝居、さもありなん」ということになる。


確かに両者とも爺さんは自慢に値する。麻生が、吉田茂の孫なら安倍は岸信介の孫だ。戦後の日本を立て直した名宰相である。ただ安倍はもう1人の名宰相・佐藤栄作を叔父に持つ。どっちが偉いかと言えば、2人の名宰相の血筋を引く方が偉いのだ。岸と佐藤は兄弟であるからだ。
 

政治記者を半世紀もやっていると、蓄積されたノウハウや理屈よりもまず政治家を容貌で判断してしまう癖がつく。容貌を見れば長期政権か短期かが分かる。鳩山由紀夫も菅直人も顔を見てすぐに「長続きしないな」と思ったがその通りだった。


総じて日本の首相の容貌は、豊臣秀吉型と徳川家康型にわけられる。家康型はその子孫まで300年間にわたり統治を続けた。家康型は肖像画を見れば分かる。ふくよかで目鼻立ちが大きく、安定感がある。容貌だけで説得力があるのだ。秀吉型は田中角栄や小泉純一郎だろう。知略で持つタイプだ。このタイプはエネルギーの消耗が甚だしく、家康型に比べると損している。
 

安倍の場合はどうかと言えば、歴代最長の7年7か月続いた佐藤栄作の顔を受け継いでいる。容貌は出っ歯の祖父でなく、叔父の血筋を受け継いだような気がする。まさに家康型の容貌だ。佐藤は「政界の団十郎」と言われた絶世の美男子だったが、安倍も佐藤ほどではないが容姿が整っている。家康型のポイントは、存在するだけで説得力があることだ。威圧感があるのだ。


だから政治記者は淡島の佐藤邸に夜回りをかけるときは、内心「誰か他の社が来てくれないかなあ」などと思ったりしたものだ。「2人だけで会うと怖い」というのが定評だった。とりわけ「沈黙の時が怖い」のだ。威張っている政治記者だって怖いことはあるのだ。
 

安倍は怖さがなくむしろ気安さが感じられる。佐藤の支持率は30%前後で安倍と比べると低迷していたが、長期政権であった。沖縄返還の大事業が長期政権にした。大野伴睦が「伴ちゃん」と愛称で呼ばれていたのを佐藤はうらやましがって「栄ちゃんと呼ばれたい」と本音を漏らしたことがあるが、支持率が気がかりであった。安倍はその点「安倍ちゃん」と呼ばれている。支持率の高さもこの辺にあるのだろう。
 

佐藤の言うことは何を言っているのか分からない事が多かった。とりわけ予算委答弁などは、後でメモを見て発言を判読するのに一苦労だった。これに比べると岸の答弁はクリアカットで分かりやすかった。安倍はどうも切れ味は岸の方を受け継いだような気がする。国会答弁を聞けばぽつりぽつりの佐藤型や、「一言断定型」の小泉とは違う。立て板に水なのである。

すべてが頭の引き出しに入っていて、野党がどんな質問をしても、あふれるように答弁して間違わない。こんな首相はかつて見たことがない。野党は時間稼ぎと批判するが、そうではない。
 

なぜなら安倍は吉田松陰の「至誠にして動かざるもの、これいまだあらざるなり」を座右の銘としている。こちらが懸命に誠の心を尽くせば、感動しない人はいない。誠を尽くせば、人は必ず心動かされるという意味だ。だから懸命に説得しようとするのだ。


マスコミ界の長老がかつて安倍を評して「一生懸命なところが可愛い」と述べていたが、年長者から見るとたしかにそう見える。しかし田中角栄が晩年良く口にしたのは「賢者は聞き、愚者は語る」だ。古代ユダヤのソロモン王の言葉だが、安倍も記者会見の質疑応答では、もう少し多くの質問を受ける“対話調”にしたほうが良い。さる1日の会見でもまくし立てる印象があったが、この辺は脱皮した方が良い。
 

政権というものは運であり、長期政権は狙っても達成できるものではない。佐藤は60歳代後半から70代初めにかけての政権であったが、安倍は一回り若く50代後半から60代の政権だ。まさに政治家としては体力・気力・知力が最も充実した年代だ。年を取るごとに威圧感は増すが、まだ枯れるには早い。アベノミクスで日本中興の祖になることは十分可能だ。

         <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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