加瀬 英明
■ 舛添都知事問題で露見した国民も呆れる役立たずの「ザル法」
Date : 2016/06/21 (Tue)
6月に、北朝鮮が日本を射程に収めるミサイルを試射すると予想されたた めに、“虎の子”のPAC3が防衛省構内に据えられた。
防衛省を見降して、マンションなど多くの高層ビルが建っている。猟銃で も使って、“虎の子”の迎撃ミサイルが狙撃されたら、どうするのだろうか。
北朝鮮がミサイルの試射に失敗したということから、PAC3は撤去された。
今年に入ってから、日本のマスコミは金正恩書記長の北朝鮮が“水爆実験” を行ったり、長距離ミサイルを打ち上げたために、連日、北朝鮮一色に染 まった。
6月にシンガポールのアジア安全保障サミットに出席する途中、東京に 寄った国防省(ペンタゴン)幹部から、「中国が数多くの核ミサイルを、日 本に照準を合わせている。中国の核ミサイルの脅威のほうが切実なのに、 なぜ日本は北朝鮮の核実験や、ミサイルにばかり目を奪われて、目を瞑 (つむ)っているか」と、たずねられた。
日本はどうかしている。民進党の岡田克也代表が、「中国との関係がうま くいってないのは、安倍首相の言動が原因」とか、中国の習近平主席が 「戦争に備えよ」と叫んでいるのをよそに、安保関連法を「戦争法」と極 めつけているように、箍(たが)が緩んでいるのだ。
新聞はもう新聞離れが進んでいるから、目端(めくじら)を立てることはな い。日本国民の大多数が、テレビニュースを頼るようになっている。
日本の大手テレビは、ニュースを食い物にしている。北朝鮮の“水爆実験” や、“ミサイル試射”を取り上げてはしゃぎ立てるのは、このところの舛添 報道とよく似ている。
舛添都知事による一連の不祥事は、あまりにも卑しく、とうてい風上に置 けない。私もテレビがいくら懲めても、足りないと思う。
だが、舛添都知事という妖怪をテレビの寵児(ちょうじ)にして、スター政 治家として育てたのは、テレビではなかったのか。テレビは舛添都知事を 賑々しく叩いて、喜々としているが、自分たちが化け物をつくった張本人 であることに対して、ひと言の反省もない。
舛添氏は「申し訳ありません」とか、「汗顔に堪えない」とか、「今後は 自らを厳しく戒めて」と連発しているから、まだ可愛いが、テレビは図太い。
まさに手塩をかけて猛牛を育てたうえで、数万人が見守るリングに引き出 して、観客が大喝采するなかで、嬲(なぶ)り殺しにするスペインの闘牛と 同じものだ。
舛添氏が傭った、“第三者”である2人の弁護士によれば、サラリーマンで あったら横領となるのに、政治資金規制法のもとでは違法に当たらないと 説明したのに、都民全員が政治資金規制法が役立たずの「ザル法」だと、 呆れかえったはずである。
有事に当たって、総理大臣が防衛出動命令を下さなければ、自衛隊が武器 を使用することができない自衛隊法も、役に立たない「ザル法」である。
海上自衛隊の護衛艦の目の前で、海上保安庁の巡視船か、日本の船舶が、 外国の公船か、軍艦の攻撃を蒙っても、内閣総理大臣が自衛法第76条に 從って閣議にはかったうえで、衆参両院が承認しなければ、防衛出動命令 を発することができない。
もっとも、緊急の場合は、国会の事後承認でもよいとされているが、首相 が防衛出動命令を発するまで、武器を使用するのを、のんびりと待ってい るわけにはゆくまい。