2016年07月01日

◆「離脱」は極東安保にも波及する

杉浦 正章



G7弱体化阻止で日本も積極関与を


 Britain(英国)とExit(離脱)を合わせた新造語ブレグジット(Brexit)が早くも完全定着した。そのブレグジットをめぐって首相・安倍晋三がイギリスのキャメロン、ドイツのメルケルと30日夜電話会談した。サミット議長国首相としての安倍の動きは、選挙中であるにもかかわらず早い。


米大統領オバマのレームダック化が必至であることから、今後、ブレグジットで発生したG7のほころびと紛れもない弱体化の動きを安倍は何としてでも食い止めなければなるまい。責任は重大である。既に中露は6月25日首脳会談で結束を確認、ブレグジットを自国に有利に活用するかのような思惑を露呈させている。国際情勢は英国の愚挙をきっかけに目まぐるしい展開を見せようとしている。
 

思い起こすのは伊勢志摩サミットにおける世界経済の認識で、「危機に直面している」とする安倍に対して、メルケルは「世界経済の現状を危機(crisis)とまで言うのは強すぎる」と反論、当のキャメロンも財政出動より構造改革を主張したことだ。


安倍はサミット文書に「イギリスのEU離脱が世界経済のリスク」と書き込んだ。野党は散々この安倍の主張を批判したが、一連の「安倍イニシアチブ」は、完璧なほどに当たった。国内的にも消費増税を予定通り実施していたら、このブレグジットで日本経済は相当手痛い打撃を被ることになったかも知れない。
 

キャメロンとの電話会談では、東・南シナ海情勢を念頭に、「法の支配」に基づく秩序維持での協力で一致した。ここは会談のキーポイントの一つである。なぜなら中露がブレグジットをチャンスと見て今後攻勢に出る可能性が強いからだ。安全保障面にも影響が及ばざるを得ないのだ。


中露にとってEUのほころびはまさに「隣りの不幸はカモの味」なのである。欧州の弱体化はウクライナ問題で経済制裁を受けているロシアにとって、圧力がそがれるチャンスである。プーチンはここをせんどとEU分断に向けての謀略をめぐらす可能性が高い。
 

中国にしてみれば東・南シナ海への世界世論の圧力が減殺されると見ることが出来る。既にこの動きは東南シナ海における艦船や航空機の動きとして顕在化しつつある。中国は米大統領選でオバマのレームダック化のすきを狙うかのように軍事攻勢を強める可能性が強いのだ。これら安全保障上の問題についても安倍の果たすべき役割は大きい。
 

また世界経済の側面から見ても、ブレグジットの影響を最小限に食い止める必要がある。ブレグジットがリーマンショックと異なる最大のポイントは、見通しが立たないまま未知の領域に進んでいることだ。安倍は5月の訪英でキャメロンに「離脱が決まれば、日本の投資先としての魅力を失うだろう」と強調、日本は明確に英国のEU残留を望むという見方を示し、「世界にとって、強いEUに英国がある方が良い」と指摘している。


しかし、次期首相有力候補で残留派だったテリーザ・メイも、残留の可能性を否定しており、国民投票再実施にも否定的だ。流れは離脱を前提として、交渉の長期化に持ち込み影響の軽減を図る方向に向かいつつあるように見える。
 

30日夜の会談で日・EU間の経済連携協定(EPA)交渉について、安倍と英独首脳は年内の早期妥結に向けて連携していくことを確認しあった。これは、世界経済分断化の動きを食い止めることを意識したものである。これをさらに進めて欧州との間で環太平洋経済連携協定(TPP)への連携を進めることも重要だ。


TPPは「環太平洋」にこだわらず、英国の参加を求めてもおかしくないかもしれない。旧宗主国イギリスとしては、かって支配した国々が参加しているのであり、違和感はない。
 

一方国内については延期に成功した消費税が、2年半の延期で済むかどうかが浮上するかもしれない。凍結の方が良いのではないかと思われるが、もう少し様子を見るべきであろう。問題は円高基調が続いた場合にいかに歯止めをかけるかだ。


100円を割る事態になれば介入が考えられるが、米国との調整が大きな課題だ。大統領選挙を控えてドル高は不利に作用するから協調介入はハードルが高い。その場合は日銀による金融緩和で円安に導く方が容易に見える。これも日銀伝家の宝刀であり、たびたび抜けないからチャンスを見定める必要がある。


さらに加えて自民党はゼロ金利活用の「超低金利活用型財政投融資」を実現させる方向に動いている。今後5年間で30兆円をめどにインフラ整備などへの事業規模を確保する方向で秋の臨時国会での補正予算に盛り込む構えだ。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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