寺本 孝一
厚労省が学校薬剤師に求める最も大きな役割が薬物乱用防止の啓もうと
なっています。が、大麻について乱用防止の垣根が低くなってきました。
平成26年秋に、余命半年〜1年と宣告された末期肝臓がん患者(50代男
性)が、治療のために大麻を自ら栽培し使用したところ劇的に症状が改善
しました。
痛みが和らいだほか、食欲が戻り抑鬱的だった気分も晴れ、また、腫瘍
マーカーの数値が20分の1に減ったとのこと。製薬会社にも「私の体を医
療用大麻の臨床試験に使ってほしい」と伝えたが、「日本国内での臨床試
験は不可能だ」として断られたという。
逮捕起訴されましたが、憲法が保障する生存権を楯に無罪を主張し東京地
裁で公判中であり、日本での医療用大麻解禁の是非が争点になる可能性も
あるようです。
[世界の動向]
大麻(アサの葉を乾燥させたものはマリファナ、アサの花冠を喫煙する場
合はハッシッシ)に含有される化学物質カンナビノイド(約400種類の合
成物の一つ特にテトラヒドロカンナビノール (THC))には様々な薬理作用
がある。
現在の日本では危険薬物として所持や使用は犯罪であるものの、国によっ
て合法化や非犯罪化されている。
アメリカでは、2014年7月時点で23州で医療大麻として、2州では嗜好品と
して合法化されている。米国の連邦法と矛盾するものの、米国では一般法
は基本的に州法が優先されるため、大麻問題に関しても同様に州法が優先
することとなっている。
ニューヨーク・タイムズは「アルコールよりも危険の少ない大麻を禁止し
ていることで社会に多大な害悪を及ぼして来たことを批判し、大麻を禁止
しているアメリカ連邦法を撤廃すべきだ」とする社説を掲載し議論を呼ん
だ。
アメリカ合衆国では、合成された大麻成分のテトラヒドロカンナビノール
(THC)であるドロナビノール(英: Dronabinol)は、マリノール(英:
Marinol)という商品名で販売され、腰痛、消耗症候群、慢性痛、末期エ
イズ患者の食欲増進、ガンの化学療法に伴う吐き気の緩和のために処方さ
れている。
カナダでは医療大麻として合法化され、カナダでの医療用マリファナ市場
規模は年間約8,000万カナダドルとなっている。 また2015年カナダ政党の
過半数の議席を持つ自由党により「マリファナの自由化と課税を実現す
る」として、嗜好品としてのマリファナ合法化へ向けての法整備も進めら
れている。
オランダでは大麻がコーヒーショップなどで販売され、早くから大麻が事
実上合法化されている事が広く知られている。
医療大麻は、大麻や合成THC、カンナビノイドを利用した生薬療法。2014
年7月時点で、アメリカ合衆国の23州、カナダ、イスラエル、ベルギー、
オーストリア、オランダ、イギリス、スペイン、フィンランドなどで使わ
れている。
[日本の状況]
日本では、大麻取締法による規制を受ける麻薬の一種に分類され、無許可
所持は最高刑が懲役5年、営利目的の栽培は最高刑が懲役10年の犯罪である。
日本では大麻草は大麻取締法の規制により、大麻の化学成分(THC)は麻
薬及び向精神薬取締法の規制により、医療目的であっても使用、輸入なら
びに所持は禁止されている。
2013年ごろから日本で規制されていない、茎や樹脂からとれたカンナビジ
オール (CBD)を含むオイルがアメリカから輸入されるようになっている。
CBDオイルはTHCを含んでおらず合法的に輸入代行業者から購入できるた
め、必要な患者から期待が寄せられている。
日本では、江戸時代の博物学者貝原益軒の『大和本草』に大麻(アサ)の
項があり、麻葉の間欠発熱への治療薬としての効能、日本で大昔から麻が
植えられていた様子が日本書紀や舊事紀に見られることなどが記されてい
るほか、戦前の生薬学では、大麻の麻酔性がインド、中国では紀元前から
知られており、嗜好用途のほかに鎮静薬及び催眠薬として、喘息への熏煙
剤及び紙巻煙草としての用法があるとされている。
また、1886年に印度大麻草として日本薬局方に記載され、1951年の第5改
正日本薬局方まで収載されており、庶民の間でも痛み止めや食用として使
用されていた。
戦後、GHQの政策により大麻取締法が設けられ、日本人は大麻を使用する
ことができなくなった。
なお、日本では産業用のアサは陶酔成分が生成されないよう改良された品
種が用いられている。また、品種が同じでも産業用と嗜好用とでは栽培方
式が異なる。
[医学的見地]
効能として、ガン、エイズ、緑内障、てんかん、パーキンソン病、クロー
ン病、不眠症、うつ病、喘息、多発性硬化症など、約250種類の疾患に効
果があるとされています。
2008年にはLSDの人体投与研究や頭蓋骨穿孔の研究で知られるアマンダ・
フェイルディングが設立したイギリスの研究団体ベックリー財団も「大麻
は精神及び身体を含む健康問題で良くない場合があるが、相対的な害で
は、それはアルコールかタバコより極めて害が少ない」とする報告書を発
表した。
2014年9月10日、ランセット・サイキアトリーに発表された研究では、17
歳未満の日常的な大麻使用者は、そうでない者と比べ、他の違法薬物を使
用する可能性が8倍高いとされた。
日本において大麻を取り締まる大きな理由の一つに、いったん大麻を使う
と他のドラッグをも使用するようになり、他の薬物への入り口となるとい
う「踏み石理論」がある。
[大麻は日本国の象徴]
大麻草(=麻)とは、縄文時代の昔より日本人の生活(衣・食・住)と密
接に関わってきた植物であり、また燃料用・医療用・祭事用・神事用にも
使われ親しまれてきた植物です。
第二次大戦前はその栽培が国家によって奨励されてきました。
かつての日本人の生活の中では、赤ちゃんが生まれる時のへその緒は麻糸
で切り、子供は麻のように丈夫にすくすく育つようにとの親の願いから麻
の葉模様の着物で育てられ、結婚式では夫婦が末永く仲良く幸せであるこ
とを願って夫婦の髪を麻糸で結ぶ儀式が行なわれていました。
日常生活では、麻の鼻緒で作った下駄を履き、麻布でできた着物や褌
(ふんどし)を身に付け、麻の茎の入った壁や天井に囲まれた家に住み、
麻糸で作った畳の上で過ごし、夏は麻糸で作った蚊帳(かや)で寝ていた
のです。
神道においては、大麻は罪穢れを祓うものとされています。
そして、伊勢神宮のお札のことを「神宮大麻」と言い、大麻とは天照大神
の御印とされています。
このように大麻草は精神的にも物質的にも、日本人のシンボルともいえ
る植物であり、桜が日本の国花とするならば、大麻草は日本の国草である
といって良いのです。(名古屋市 学校薬剤師)