2016年08月01日

◆いまこそ旗幟を鮮明にせよ

石岡 荘十



ねじれ、混迷する政治情勢の真っ只中で起きた天災が思い巡る。日本列島は、終戦直後にも匹敵する未曾有の数々の難問に直面している。いずれもわが70余年の人生の中でも、極めつけの難問である。

70年安保の前後、警備・公安関係の報道の端っこにいた現役時代は仕事柄、全国紙は言うに及ばず、左翼、新左翼、某“新興宗教”の機関紙、果ては永田町界隈でしか読まれていなかったウルトラライト組織のビラに至るまでチェックしなければならない何年かを過ごした。

いまはそうはいかず、ときどき近くの区立図書館で全国紙を中心に各紙の主張をまとめて拾い読みする程度だが、各紙がいまほどひとつの進むべき本流を見定めかねている時代は無かったように思う。一読者としては複数の新聞を読んでもトンネルの先に曙光は見えてこない。

世の中はどう動いているのか、とりあえず、いま私が知りたい当面の問題は3つある。

1.世界の原発、なかんづく日本の採るべき道は? 「賛」か「反」か「減」か。

2.現政権について。「菅は今すぐやめろ」「とりあえず災害対策のメドがつくまで」「任期一杯このまま」

3.即刻、退陣するとして、次は誰?

逐次、精密に検証したいがはっきりいうと、力及ばず、“精査”していないので、ここでは私見を独断で言う。

まず1.三択だが、全国紙の社説はばらばらだ。賛成する石原東京都知事の発言をフレームアップして、暗に賛成の意思をほのめかしてはいるものの、社として一人称で断言するところまでいっていない。

私は「賛」。理由は4月21日、本メルマガで書いた。

http://melma.com/backnumber_108241_5165423/


人類は核エネルギーの恩恵をすでに長く受け過ぎた。だから、いまさら脳に刻み込まれた甘い飴玉の記憶を拭い去ることは無理だろうと考えるからだ。ただその展望の正否は「プロメテウスの第二の火」をどう使いこなすか、これからの人知の成熟にかかっている。

つぎに2.

これも3択にしたが、「菅今すぐヤメロ」という主張は、以前は産経だけの少数意見だったようだが、このところ他紙も、その動きが加速している永田町の事情を伝えている。しかし、最近は全国紙のほとんどが「いましばらくは仕様がないか」という論調が多い。

この時期、仮に、現首相が総辞職したとして、あるいは首相専権の解散をしたとして、「被災者の皆さん、新政権が出来るまでしばらくお待ちくださいと」と言えるだろうか。

十数万人の避難者が待てるか。言いにくいが、季節的に加速する1万人を超える行方不明者の腐敗の進行を看過できるだろうか。「今すぐ」というなら、そのリスクをちゃんと計算・予測して書いてほしい。

「それでもすぐ辞めろ」というなら、「そんなのカンケーねぇ」という読者にたいする説得力のある記事がほしい。

私は、「いま、政局がらみのごたごたをやっている場合ではない」という論調に賛同する。政局より、「1日も早く普通の生活に戻りたい」という被災者の気持ちを最優先にしたい。

で、問題は3.である。

各紙は、人気投票のような世論調査の結果を他人事のように報道して「だから菅は降りるべきだ」という主張の根拠のように書いているだけで、その一方で「自民党も頼りないしなぁ」としか言っていない。

ならばどうするか。各紙を見ても、どこも固有名詞を上げて「この人に任せよう」とは主張していないのである。これでは、誰が適任か、素人の私には判断できかねる。大方の国民もそうだろう。

われわれ無垢な羊の群にとっては、IT情報がどうのといわれる時代になったいまでも、新聞が世論形成に重要な役割を担っていると思ってい
る。

そこで、政治部記者歴が長い某全国紙の主筆に聞いたが、「それがねぇ---」としか言えなかった。「この春の人事異動で代わった部長、局長全員を集めて議論をしたが、結論は出なかった」という。

“国難”だといわれている。だからこそ世論形成に一定の役割を果たそうという自負がおありなら、いまこそ新聞社は社論をまとめ、旗幟を鮮明にすべきではないのか。

戦時、国策に沿った提灯記事しか書けなかった時代があった。その結果は、いうまでもない。新聞社も営利を無視できない企業体だから、社論を決めることで後々、経営的にマイナスになることもあるかもしれない。

だが、何でも書ける、軍部による言論弾圧もないいま、新聞社にとっては、敗戦以来の“国難”に際して、実力と品格を示し、戦時の過ちを雪辱するチャンスではないのか。(再掲)

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