2016年08月03日

◆外務省は旧日本軍に罪を着せるのか

櫻井よしこ



外務省は旧日本軍に罪を着せるのか 名誉を守る努力をしないのは情報操
作? それとも能力不足?

外務省に日本と日本人の名誉を守る気概はあるのか。強い疑問を抱かざ
るを得ない。

旧日本軍とは無関係の国際的神父殺害事件を旧日本軍の犯行であったか
のように政府高官に報告し、中国の対日歴史非難と歩調を合わせるかのよ
うな情報操作を、外務省が行っていた疑いがある。

右の神父殺害事件は1937(昭和12)年、旧日本軍の南京攻略に先 立つ
110月9日に発生した。中国河北省正定で、当時フランス政府の管轄 下
にあったカトリック教会が襲われ、神父9人(オランダ人神父を含め全
員がヨーロッパ人)が殺害された。世に言う「正定事件」である。

正定事件に関し、中国とオランダは犯人は旧日本軍、殺害理由は日本軍
が女性200人を要求したのを神父らが断ったことだと断定する。命を犠 牲
にして女性たちを守った神父は、「徳と聖性の高い福者(聖人に次ぐ立
派な人材)」であり、列福して顕彰すべきだと両国が2014(平成 26)年
以来バチカンに働きかけている。

世界13億人弱の信者を擁するバチカンの影響力は計り知れない。折し も
中国はイギリスまで巻き込んで慰安婦問題をユネスコの記憶遺産に登録
申請した。9人の神父列福の動きは、中国の対日歴史戦の一部であろう。

正定事件と中国の動きについて、私は遅まきながら今年に入って初めて報
道した。素早く反応したのが官房副長官の萩生田光一氏だった。外務省に
調査を命じ、外務省は直ちに資料をまとめた。要点は「日本軍は9人を殺
害した。しかし、女性を要求した事実はない」である。

だが、外務省報告は根本から間違っていた。それを私は読者の中林恵子
さんと熊岡醇氏に指摘されて知った。届いた資料の中に当時の在北京日本
大使館員、森島守人参事官の公文書が含まれていた。これはスイス在住の
日本人女性がナントのフランス外交史料館で入手したものだ。

森島公文書は1937(昭和13)年2月13日付、在北京フランス大 使館のフ
ランシス・ラコステ氏宛てに日本政府が行った事件の調査結果を 報告し
たものだ。

そこには犠牲者への深い哀悼と、日本軍が第三国の国 民、とりわけミッ
ショナリー(宣教師)の生命と財産保護のために取った 具体的措置が詳
述されているが、最も大事なことは、犯行は日本軍ではな く、「支那敗
残兵」によるものと明記した点だ。当時、支那敗残兵が正定 の教会に避
難した人々の中に紛れ込んでいた。物証は、彼らが事件の犯人 であるこ
とを示しており、森島氏は次のように記している。

「その後も続けた調査では、支那敗残兵の犯行であるとの結論を覆す証
拠は見つからなかった。従って日本政府は当該事件に関する責任を負いか
ねるのみならず、占領地で起こったすべての件に関して責任をとりかねる」

外務省は、先輩外交官の残した貴重な公文書に反して、日本をおとしめる
情報を政府高官に上げていた。意図的な情報操作か。それとも外務省の情
報把握能力の問題か。

私が事件の全体像を把握できたのは本稿で言及した民間の人々の情報発掘
の努力のおかげである。本来外務省が行うべき仕事を民間人が危機感に突
き動かされて代行している。この現状ほど、寒心に堪えないものはない。
産経ニュース【櫻井よしこ 美しき勁き国へ】8.1 01:00更新


この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック