平井 修一
何清漣女史の論考9/4「中国の憂鬱――世界のエンジンから足枷へ」から。
<2016年の杭州G20サミットで中国はこれをチャンスに国際的地位をさら
に向上させようと一生懸命「良きホスト役」の役柄を演じ切るべく全力を
尽くしていますが、気まずい雰囲気を完全に打ち消すのはやはり難しいよ
うです。
この気まずい雰囲気は海外からの中国での人権批判が原因ではなく、中国
の世界経済の舞台上の役割の変化から生まれています。
(リーマンショック後の)2009年は中国は世界経済を救うノアの箱舟役で
したし、2012年は世界経済を引っ張るエンジン役でしたが、いまや、グ
ローバル構造は支離滅裂になり、中国は西側国家からグローバル化破壊の
元凶だと見られているからです。
*各国が受け入れがたい世界経済構造の巨大な変化
今回のサミット開催はまさに全世界経済の構造に巨大な変化が起きている
時期にあたり、参加する西側国家は中国経済の衰退が世界の足をひっぱっ
ていると感じています。
この言い方は西側国家の一種の願望、すなわち中国経済が過去30年の間に
二桁成長を遂げてきて世界経済成長のエンジンになったことで、現在もこ
れからもそうあるべきだということから生まれています。
2009年以前、世界経済の構造は米国が主導し、中国は中国モデルを動かし
てきました。2009年以後、米、中、EUの3本の鼎(かなえ)型になりまし
た。この変化に対し、世界各国はすべて受け入れました。
なぜなら1990年代の初期から2009年にかけての20年間、中国は世界経済の
中で巨大な役割の転換を遂げ、あっという間に世界の辺境国家から世界経
済の発展の世界的エンジンに大化けしたからです。
いわゆる「エンジン」というのは世界が「メイド・イン・チャイナ」の安
物製品で埋まったことではなく、中国の各種の需給が日増しに旺盛になっ
て、多くの国々の経済発展を促したことにあります。
例えば中国は世界の資源と農産物の最大のバイヤーであり、多くの鉱業資
源国家と食糧生産国家はみな利益を得ました。過去15年間、中国は世界の
大多数の鉱業金属の4割から5割を消費し、一時は全世界の鉄鉱石供給量の
3分の2近くを消費したのです。
*中国経済の衰退で消えた資源国の発展の夢
中国が世界GDP第2位に躍り出る過程では巨獣のごとく全世界の各種金属、
燃料、農作物を丸呑みし、アフリカ、南米から豪州まで多くの国家が自分
たちの繁栄の夢の基盤を中国経済の持続する高速発展に賭けました。
そして今や中国経済の衰退の災いは中国人自身に対してのみならず、何十
もの各種資源を中国に売り込んできた発展途上国、全世界で資本の有利な
投資先を探している先進国の投資業界に及んでいます。
今、中国経済の減速が意味するのは中国の対外輸入、特に生産に必要な資
源と原材料の需要減少で、これは中国に頼って繁栄していた国家に対する
影響が特に大きいものです。
例えばオーストラリアは、中国に小麦や大量の鉄鉱石を輸出することに
よってその10年間の経済の栄枯はみな中国の需給によって上下しました。
ここ数年、中国の鉄鉱石需要が減少して、政府の税収も減り、比較的小規
模の鉱山は破産したり、人員解雇を迫られています。
オーストラリア政府の中国に対する態度も大きく変化し、2015年8月30日
には、議員たちによくよく考えるようにと国会が国会図書館による「中国
を防げ」というパンフレットを発行する印刷許可を与えました。
オーストラリアは一貫して中国崛起を支持してきたのですが、今やいかに
して南海の利益を広げようとする中国にどう対応すれば良いかを考える必
要に迫られています。とりわけ、中国の「海と陸のシルクロード計画」に
言及しており、この中国指導のプロジェクトが米国のプロジェクトに対抗
するものだという点で憂慮を表しています。
つまり簡単に言えば、世界各国の中国に対する態度の変化は2012年に始
まっています。習近平が中共の最高権力を握って以後、国内の奇形的な経
済構造を調整せざるを得なくなり、中国の資源と原材料にたいする膨大な
需要が急激に低下したのです。
地方財政を維持するために不動産業を発展させるとしながらも、実際には
欧州、アジア、南米地域に過剰生産能力を輸出する「二つのシルクロード
計画」を実行したのです。中国は自国の深刻な過剰不動産業界と各種のイ
ンフラ施設発展のために全世界の各種の鉱物資源を消耗し、関連国家に就
職先と様々な程度の繁栄を維持させてきたのです。
そして中国側では世界中から輸入した鉄やアルミなどの資源をつかって、
仰天するような量の不動産や各種の遊休インフラ設備を作り出して、「み
んなに住宅を」を実現したのです。現在、農村戸籍家庭の93%はマイホー
ムを持ち、都市戸籍の住民は1戸平均3人で1戸あたり1.2戸の住宅を持って
います。
「21世紀経済報道」誌2015年12月3日号によれば、中国の不動産業界の本
当の在庫は98億平米に達し、現実の購買力では完全消化に10年かかるとい
います。
さらに深刻なのは中国工程院の郭仁忠が2015年10月にメディアに明らかに
したことですが、国務院の12省と144都市の調査では、全国の新しい都市
計画によって造られようとしている市街地は34億人分、つまり中国各地の
政府が企画している住宅は全世界の人口70億人の半分を収容できるという
のです。
*中国は世界経済を救えない
もし中国政府がこうした狂ったような計画を実行しつづけるならば、中国
は依然として世界経済の発展のエンジンであり続けることができるでしょ
う。しかし残念ですが、習近平は2015年、傾国の力を以っても中国の株式
指数を言葉通りの10000ポイントに上げることはできず、5000ポイント前
後で上下していますし、結果は2015年の株式市場で25兆元の価値が消え失
せ、60万戸の中産階級が消滅しました。彼もまた中国を世界の資源購入者
としつづけエンジンとなす術はもたないようです。
杭州G20サミットはまさに終わろうとし、参加者は中国に対して山ほどの
意見をもってきて、カバンいっぱいの重要な協議をして去っていくでしょ
う。協議は結構ですが、現実はもっと厳しいのです。
中国が世界経済のエンジンとしての地位を維持したいと願っても、あの無
茶苦茶な都市計画の結末として、世界の半分の人々に住宅を供給すること
はでませんから、世界各国の資源や鉱物、膨張する資本を飲み込み続ける
ことはできません。
世界各国は中国に対して資源や原材料を輸出することは望んでも、中国の
過剰生産能力を必要とはしていません。ですから、各国要人は帰国後、や
はり自国経済構造を調整し、一段と増すだろう失業や福祉の低下という苦
しい日々を過ごさねばならず、自国選挙民の怒りと恨みを買うしかありま
せん。
以上が世界が再び資本拡張の「新大陸」を発見するまでの中国と世界各国
(ひょっとすると米国は例外かもしれません)の経済の新常態なのです>
(以上)
支那は貧困を一掃する前に失速し始めた。「中国貧困家庭の母、子4人と
無理心中 貧富の差めぐる議論に」から。
<【AFP9/14】中国北西部・甘粛省で、貧困世帯の母親が子ども4人を斧で
斬殺した上、自殺する事件があった。その2週間後には夫も自殺。事件は
インターネット上での憤りの声や、貧富の差をめぐる議論を巻き起こして
いる。
同州警察によると、母親の楊改蘭容疑者(28)は、6歳、5歳、3歳の娘3人
と5歳の息子を斧で殺害した後、農薬を飲んで自殺。夫の李克英さんも、
家族の葬儀を済ませた後に服毒自殺した。
報道によると、一家は住んでいた阿姑山村でも最貧層だったが、村の委員
会は、世帯年収が貧困線の2300元(約3万5000円)を上回っているとし
て、政府が支給する低所得世帯向けの生活保護費の支給を拒否していた。
複数のメディアが、事件の要因の一つとして当局の腐敗を挙げ、一家の生
活保護申請が却下されたのは地元役人に賄賂を渡していなかったためだと
報じている。
中国青年報によると、楊容疑者は地元病院に搬送された際、治療自体は拒
否しなかったものの、「私を救わないで」と繰り返し訴えていたという。
中国は世界第2位の経済大国に急成長したが、貧富の差は歴然と残ってい
る。国営英字紙・環球時報は国家統計局のまとめとして、貧困線以下での
生活を強いられている人が現在7000万人に上っていると報じている。
同紙は中国社会科学院の地方開発専門家、党国英氏の話として、「この事
件は、開発が進んだ東部の都市部に暮らす中国人に衝撃を与えた。依然何
百万人もの国民が貧困生活を強いられているということが想像できない人
が大半だからだ」と指摘している>(以上)
世界第2の経済大国の裏面、不都合な真実だが、おそらく氷山の一角だろ
う。支那に明るい未来はあるのかどうか。
何清漣氏は「中国経済は巨大なネズミ講」とも書いている。早めにカネを
投資すれば、遅れて投資した者のカネを先行者利益として優先的に回して
もらえる仕組みで、投資者が次から次へと拡大再生産されないと破綻する
しかない。
日本でも一時期は箱モノ行政で、実需がないのに次から次へと建物を造
り、やがて金庫が空っぽになって財政破綻状態の自治体が急増したものだ。
支那は相変わらず実需もなく回収の見込みもないインフラなどの不動産投
資頼みのいびつな経済構造のままだ。先行者利益で蓄財した金持ちは、破
綻を恐れて外国へカネを移している。
ニューズウィーク9/20はこう報じている。
<国際決済銀行(BIS)は、中国での信用供与は異例の伸びを示してお
り、3年以内に銀行危機に陥るリスクが高まっているとの見方を示した。
BISの報告によると、金融の過熱を示す早期警戒指標である国内総生産
(GDP)に対する総与信のギャップ(credit-to-GDP gap)が第1・四半期
に30.1となった。10を上回ると危機が「3年以内に発生する」シグナルと
なる。これはBISが評価した中で最も高く、2位のカナダ(12.1)も大きく
上回っている>
支那丸の船体が徐々に傾き、やがて沈没するのだろうが、ソ連式にあっと
いうまに沈没するかもしれない。遅かれ早かれ21世紀のビッグニュースに
なるはずだ。(2016/9/20)