2016年09月24日

◆高速増殖炉「もんじゅ」の有効活用

酒井 勝弘


高速炉「もんじゅ」は、燃焼消費分以上に核燃料を生産する増殖炉で、資
源の乏しいわが国では特にニーズの高い原子炉であり、この増殖効果に
よって、向こう3000年間の世界全体のエネルギーを担保できることが報告
されている。

特に高い出力密度が要求される関東地域のような集住地区や生産工業地区
の電力すべてを、自然エネルギーで賄うことは容量的にも非現実的であ
り、こうした高出力密度の需要地域に原子炉は有効で、特に高速増殖炉は
超長期的なエネルギーセキュリティの観点からも有望視される側面がある。

もし高速炉「もんじゅ」が廃炉となると、これまで投じてきた国費約1兆
円が無駄になる問題もさることながら、一方同時に設計側(または管理者
である文科省)に対して、以下の素朴な疑問が残る。

端的に、「もんじゅ」のサイトで、2011年の3.11東北大震災と同規模の地
震・津波があった場合、「もんじゅ」はどうなるか?

「もんじゅ」が存続するには、これこれの安全設備を強化することで、
3.11と同規模の地震・津波があった場合でも、「もんじゅ」は3.11のよう
な事故に至ることなく、安全裏に終息出来ることの説明が必要である。

この説明がないと、超長期的に有望な原子炉であっても、安全性は確保さ
れず、「もんじゅ」の存続は不可である。つまり強化すべき安全設備の具
体的な提言がこれまでなされていない。

高速炉「もんじゅ」と軽水炉福島第1原発との決定的な違いは、@燃料溶融
時の核的特性:軽水炉が負の反応度に対し、「もんじゅ」は正の反応度
(即ち溶融し集合塊となると核分裂反応は増加)、A冷却材:軽水炉の水
に対し、「もんじゅ」は溶融金属ナトリウムを使用していることである。

「もんじゅ」は炉容器下部にスカートを設けて溶融燃料の分散化を図って
いるが、@の核特性によって、再臨界事故に発展する可能性がある。これ
に対し、旭化成でのTNT火薬による模擬燃料モックアップ試験で、炉容器
の変形はあるが、格納容器の健全性は維持される結果を得ている。

軽水炉の場合、事故時、水や海水の放水で格納容器、原子炉建屋を冷却で
きたが、「もんじゅ」の場合、Aであげた液体金属ナトリウムとの激しい
水反応でナトリウム火災が懸念されるため、水や海水を放水できない。

この場合、液体窒素の放水、または高圧窒素ガスの断熱膨張による急冷化
現象を利用して、格納容器を外から冷却する可能性があるが、大容量液体
窒素の貯蔵・管理、コストなど検討すべき課題は多い。

福島第1原発事故を踏まえ、既に指摘されている耐震性の強化、高機フィ
ルター付き格納容器ベント機構、非常用電源車の常設、免振構造司令塔設
置などに加え、上記の液体窒素または高圧窒素ガス放水設備の強化で、も
んじゅの安全性を確保した上で、1兆円の国費を無にする非建設的な廃炉
ではなく、“もんじゅ”の有効活用を図る未来志向的選択が望まれる。

(埼玉工業大学 名誉教授)(投稿)


この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック