2016年10月07日

◆ゼミ形式授業の成果 ― 優秀な学生論文

〜マスコミと権力の関係を論ぜよ 〜

浅野勝人(安保政策研究会理事長)



国会議員当時の同僚で、とりわけ懇意であった故萩野浩基・前学長のお誘いをいただいて、東北福祉大学特任教授を仰せつかっています。担当は「マスコミュ二ケーション概論」です。もう数年になります。学生に教える知識は持ち合わせていませんが、半世紀の余、彼らより長く生きていますので経験則を話すことはできます。

ですから、一方的に講義をするのはごく基礎的な理論だけに留め、テキストを読んだ感想文を発表して論評し合ったり、時には模擬記者会見をして報道記事を書いたりします。

夏季集中講義ですから3日間、朝8時45分から夕方5時半まで、文科省の規範にしたがってびっしりやります。学生は2単位取得。たったの3日間で学生のセンスもみるみる磨かれます。

今年の修了論文、10人の中から講義内容をよく理解し、ディベートを生かした最優秀のレポートを本人の了解を得て紹介させていただきます。

― 小論文:テーマ ―
マスコミと権力の関係を論ぜよ。
『 報道の自由 』に限界はあるか。
福祉行政学科 2年  原田尚也
マスコミが社会に対して与える影響は極めて大きい。

W.リップマンは、論文「世論」の中で、マスメディアの報道は同じイメージを繰り返すことによって、現実とは異なる疑似環境を形成し、多くの人々を特定の世論に誘導すると述べている。
E.N.ノイマンは「沈黙の螺旋理論」で、メディアがある期間ある問題について一貫した姿勢を示すと、人々の意見もその方向に従う傾向が出てくると述べている。

マッコームスは「議題設定理論」について、マスメディアが特定の問題を取り上げる量が多ければ多いほど、人々はそれが重要なテーマであると思うようになると指摘している。
以上の理論から判断しても、マスコミが社会に与える影響は極めて大きいといえる。

マスコミは社会に対する影響が大きいだけに、時に権力とぶつかる可能性が生じる。一つの例が「西山事件」である。沖縄返還に関するアメリカとの密約を毎日新聞政治部・西山太吉記者が暴いた。密約の内容を世に暴露されたことによって、沖縄返還に泥を塗られたことは許せないとして、政府は西山記者を逮捕、起訴した。西山記者もひるむことなく最高裁判所まで戦い、今日なお闘っている。

 権力と対峙するのがジャーナリズムの役割であり、人々のためになると判断したら、保障されている自由の範囲内で権力に屈することなく報道しなくてはならない。ジャーナリズムは、中立公正を求めて不偏不党をかざし、是々非々で時の政権と対峙しなくてはならないからである。これが今回の授業で学んだ最大のポイントである。

 マスコミ、ジャ―ナリズムは、報道の自由と取材の自由が憲法で保障されている。これらの権利が保障されないと、国民の知る権利を確保できないので、基本的人権も成り立たなくなる恐れが生じる。だから報道、取材の自由は、国民の知る権利に応え、権力と対等に対峙する使命を全うするために何よりも大切な権利として認められている。しかしながら、報道の自由は憲法で保障されている最も重い権利ではあるが、おのずと制限がある。

第1に倫理を犯してはならない。
西山事件では、極秘電報を得るために、西山記者は女性事務官と情を通じた。このことは世論から批判を浴びる結果となり、せっかくの世紀の特ダネが取材の可否という課題にすり替えられてしまった。従って、倫理を犯すような取材方法は、取材相手の人生を狂わせてしまう結果を招く可能性があり、憲法で保障されている自由の範囲を逸脱していると考える。

 第2に、メディアスクラムによるスタンピート現象を起こしてはならない。
松本サリン事件では、被害者であるはずの河野義行さんを犯人だと決めつけた地元新聞の情報にあおられて報道が過熱した。メディアがこぞって河野さんを犯人に仕立てて言いたい放題、書きたい放題のスタンピート報道をしたため、警察を焦らせて誤った捜査結果を出させてしまった。メディアがスクープ合戦に走り、不確かな証言を次々に報道して、被害者として苦しんでいた一家を追い詰めてしまった。取材をあまりに過熱させてしまうことによって、関係者のプライバシーを侵害したり、日常生活を壊したり、時には人権を侵すようなことがあってはならない。

報道の自由が保障されることは、民主社会を維持、発展させていく上で極めて重要だが、その自由に限界がないわけではない。報道、取材の自由は、重い責任感と高い倫理観を担保に保障されていることを忘れてはならない。

以上です。浅野特任教授の評価は優の上の「秀」。
3日間の特訓で、ここまで伸びる糊代を若い学生は持ち合わせています。
もう一つは、先生がいいからです(?)
― <元内閣官房副長官>

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