2016年10月13日

◆日米首脳“連動”でTPP推進の構図

杉浦 正章
 


強行突破してでも批准せよ
 
14日から国会は環太平洋経済連携協定(TPP)を巡って本格的な攻防段階に入る。通常国会で継続審議となったが安倍としては、審議を強行してでも今月中に衆院を通過させ、たとえ参院がストップしても「30日以内に参議院が議決しない場合、衆議院の議決が国会の議決となる」という憲法61条の条約批准条項で会期末の11月30日までの批准にこぎ着ける方針だ。


一方、大統領候補・クリントンまでが反対をを表明している米国の出方が注目されるが、オバマは11月8日の大統領選直後から議会説得工作を本格化させ、任期の終わる1月までに議会での批准を終わらせる方針である。オバマにとって議会を動かすために、日本の批准が欠かせない構図となっている。このためTPPは日米首脳が“結託”して連動するという、戦後未曾有の展開を見せそうである。


日米結託の構図は既に9月から明らかになってきている。オバマは同月6日、ラオスで行ったアジア政策についての演説で「TPPが前進しなければアジアにおけるアメリカのリーダーシップが疑われる事態になる」と述べ、来年1月までの自らの任期中にアメリカ議会を説得し承認を目指す考えを示したのだ。


一方安倍も9月23日キューバで「アメリカのオバマ大統領はことし中の議会通過に向け尽力しており、バイデン副大統領ともTPPの早期発効に向け、日米双方が努力を続けていくことで一致した。日本の国会の承認が得られれば、早期発効の弾みとなる。臨時国会でTPPの承認が得られ、関連法案が成立するよう全力で取り組む」と言明した。オバマとしては日本に参加を促した建前からも、責任を感じて任期中に処理する考えのようだ。
 

この構図は野党が長年米国追随外交として自民党政権を批判してきたことに逆行する珍しい例であり、安倍はTPP閣僚会議でも「他国に先駆けてTPPを承認し、早期発効の弾みをつける」と米国に先行する方針を言明している。問題はオバマが11月8日にクリントンが当選した後、通常なら完全にレームダック化することにある。


しかし政府筋によると「クリントンも選挙対策で振り上げた拳を下ろせないから、オバマに陰で協力してオバマ政権での批准に動くのではないか」という観測も強まっている。問題は野党・共和党のライアン下院議長が、「現状では賛成が得られず、協定を修正する必要がある」と述べ、国内の反発が強い知的財産の保護などの項目が修正されなければ議会で採決しない方針を表明していることだが、この辺をめぐる駆け引きが焦点となる。
 

一方日本の国会では輸入米を巡る調整金の疑惑がにわかに浮上している。価格を国内米より高く設定するための売買同時入札(SBS)制度に悪のりした商社からのリベートで、卸売業者が安く輸入米を販売していた可能性が生じていることだ。

この調整金自体は違法ではないうえに、総計800万トンの国内米の0.1%程度であり、政調会長・茂木敏充が「1キロの象のしっぽで800キロの胴体を振り回すことはできない」と述べているとおり、価格全体に影響を及ぼした可能性は少ない。農水省はこのリベートを禁止したが、同省がこのリベートを見て見ぬふりをしていたのか、本当に知らなかったのかなど疑惑が残る。
 

野党はこの問題をかさにかかって取り上げて追及する姿勢であり、TPP特別委員会の審議には応じそうもない。自民党内からは早くも衆院特別委理事の福井照が9月29日に、「この国会ではTPPの委員会で強行採決という形で実現するよう頑張らせていただく」と“本音”を吐露。自民党は辞任させて早期の火消しにかかったが、野党の姿勢は堅い。


その理由は衆院選挙を目指しての農村票の獲得にある。参院選で自民党は、東北6県の選挙区のうち秋田を除く5県で敗れた。与党は先の国会でTPPの承認を見送ったにも関わらず第1次産業が強い地域では政権批判票につながったとみられる。このため、野党は強行採決させて衆院選で農村票を獲得しようとしているのだ。
 

国会の議論を聞いても野党は重箱の隅をつつく議論に終始しており、TPPがなぜ必要かの議論がない。TPPの交渉に入ったのは民主党の野田政権であり、野田は2011年11月11日の記者会見で「貿易立国として活力ある社会を発展させていくためには、アジア太平洋地域の成長力を取り入れていかねばならない」と高らかにTPPの意義を訴えている。


それが野党になったからといって難癖をつけて阻止を図るのは、まさに「巧言令色」で生きている政治家であることを物語る。民進党は何でも反対の野党に先祖返りするのか。
 

TPPは、これまで自由貿易で生きてきたし、今後も生きていかなければならない日本にとってまさに絶好のチャンスととらえるべきである。国の統計調査によれば水稲収穫農家の数は1965年には489万戸あっが2010年には約116万戸と、45年間で4分の1にまで減少。農業就業者の平均年齢は65.8歳 となった上に、65歳以上6割、75歳以上が3割となっている。


もちろん国の政策としては弱者切り捨ては邪道であり、米農家は最後の最後まで面倒を見なければならないが、貿易立国による繁栄がなければその面倒も見ることができなくなる。
 

加えてTPPには日米のアジア戦略が紛れもなく存在する。安倍もオバマも対中封じ込め戦略が根底にあるのだ。米国追随を批判してきた野党は、戦後初めて安倍が米国をリードする立場となったことを、“賞賛”してもおかしくない。逆に米国に追随しないからと批判するのはおかしい。

自民党は自公と賛同する野党も加えて、複数政党で強行突破してでもTPP実現に動くべきだ。

     <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家) 
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