2016年10月24日

◆イデオロギー色ゼロ

古森 義久



米大統領選トランプ候補はイデオロギー色ゼロ 米国の保守主義は空洞化
したのか否か?

最終盤となった米国の大統領選挙をみていての疑問の一つは、米国年来の
保守主義はどうなるのか、である。この疑問はドナルド・トランプ候補の
指名で土台を壊した共和党の命運への問いとも表裏一体だといえる。

近年の大統領選挙は、程度の差こそあれすべて保守主義とリベラリズムの
対決だった。ごく簡単にいえば、保守主義とは政府の民間介入を最小限に
する「小さな政府」、社会的な価値観では伝統の保持、対外的には強固な
軍事力を含めての普遍的価値の投射、そして介入などを求める思想である。

その逆方向の一連の理念がリベラリズムであり、歴代でも最もリベラル色
の濃いオバマ政権の諸政策をみればその内容がはっきりする。だからオバ
マ大統領への対決からスタートした今回の共和党側では、17人もの候補の
うち16人までが「私は保守主義者です」と熱を込めて明言していた。唯一
の例外がトランプ氏だった。

トランプ氏はオバマ政権への非難こそ激烈だが、保守主義はまず口にせ
ず、保守派の持論たる自由貿易にも反対する。軍事政策では保守志向だ
が、他の主要政策ではイデオロギーをほとんどみせない。そして共和党主
流の保守派の政治家たちをすべてこきおろす。それでもどの世論調査でも
最低40%ほどの支持率は確保してしまう。

となると、トランプ支持層は保守主義にも背を向けたのか、という疑問が
起きるわけだ。

年来、米国民個人では自分自身をリベラル派よりも保守派だとみなす人た
ちがずっと多かった。ブッシュ前政権時代の世論調査ならば保守対リベラ
ルの比率は2対1ほどの差があった。近年はその差は縮まったが、なお個人
レベルでは保守派の数がリードする。ただし大統領選挙となると、他の要
素が入り、その保守傾向は必ずしも共和党候補支持に直結はしない。

こんなイデオロギー構図はトランプ現象で崩されてしまったのだろうか。
米国の保守主義は空洞化、あるいは大幅退潮となったのか。

この疑問への答えは、大統領選と同時に催される連邦議会選挙に向けて実
施された共和党側予備選での結果にもヒントがありそうだ。

トランプ候補が共和党のエスタブリッシュメント(既成勢力)と呼んで悪
口雑言を浴びせてきた側の代表ともいえるジョン・マケイン、マルコ・ル
ビオ両上院議員とポール・ライアン下院議長の3人が、それぞれの選挙区
での予備選で新人にチャレンジされた。3人の新候補はみなトランプ氏の
熱烈な支持者で、共和党主流の政治姿勢をなまぬるいと断じていた。

だがマケイン、ルビオ、ライアンの現職3議員は予備選でいずれも圧勝し
たのだった。政治評論家のマシュー・コンティネッチ氏はこの結果を「保
守主義の大衆主義に対する勝利」と総括していた。

この一事をもって保守主義や共和党の全体を論じることには無理もあろう
が、少なくとも保守主義の主唱で米国の国政の正面舞台に長年、立ってき
た3主要議員は「保守主義の顔」としてなお健在なのである。(ワシント
ン駐在客員特派員)

産経ニュース【古森義久のあめりかノート】2016.10.23    

                 (採録:松本市 久保田 康文)
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