2016年10月25日

◆安全保障と憲法改正

櫻井よしこ


■日本国の欠陥を直視せよ

一体この国は誰が守るのか。拉致被害者を救出するのは誰か、尖閣諸島を
はじめ、領土、領海を守るのは誰か。

拉致被害者は何十年も北朝鮮にとらわれたままである。国民が他国にとら
われ、ほぼその一生をとらわれの地に拘束されるのを見逃し続ける国な
ど、本来、国家とは呼べない。

尖閣諸島に迫る中国は執拗(しつよう)、着実に力を増強して、要求し続
ける。政府の強い意思と自衛隊の十分な軍事力なしに、日本人と日本国を
守り切れない状況が生まれている。だが、わが国は、少なくとも安倍政権
以前、守る意思も力も欠落させてきた。

この、国とはいえない日本国の欠陥に、日本人は、政治家も国民も、気が
ついているのかと、本書は鋭く問うている。自衛隊員の立場から3人の当
事者たちが生々しい体験に基づいて率直に語り合っている。

拉致等の事案で外務省は情報収集および分析において、殆(ほと)んどい
つも間違ってきた。憲法前文の精神に浸り、外交における軍事力の効用を
全面的に排除し、国際社会の善意という幻に縋(すが)り、希望的観測で
国際社会を推し量ってきた。

国民救出を国家の責務と考えない愛のない外交を展開してきた戦後日本国
の異形の姿が浮き彫りにされている。

では国民と国家を守る実力部隊としての自衛隊はどうか。彼らとて、拉致
問題解決は軍の責任だとはとらえていないという衝撃的な実態が指摘され
ている。

また、仮令そうとらえていても自衛隊が北朝鮮で救出作戦を展開すること
ができないのは、安保法制が整えられた今も同じだと、3人は冷静に指摘
する。

そんな国家であり続けてよいはずがない。3人は具体的に指摘し、熱く叱
咤し続ける。拉致もテロも国土を奪われる危険も、すべて私たちの眼前に
ある危機なのだ。

危機回避の最低必須条件はどう考えても憲法改正にある。憲法改正が欠か
せないと考える日本人の心にある。日本を愛する全ての人に、本書を読ん
で、その指摘に応える民意形成を急いでほしいと、願わずにいられない。
 
産経ニュース【書評】櫻井よしこが読む『自衛隊幻想 拉致問題から考え
る安全保障と憲法改正』

一体この国は誰が守るのか? 2016.10.23
                (採録:松本市 久保田 康文)


     
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