2016年11月30日

◆次期韓国大統領選は「反日を競う」様相

杉浦 正章


慰安婦合意やGSOMIAへの影響が懸念される
 

朴槿恵は絶対外れることのない罠である「虎挟み」にかかった。遅かれ早かれ辞任することになるが、韓国政界では、早くもポスト朴に向けての動きが加速してきた。今のところ最大野党「共に民主党」前代表・文在寅(ムン・ジェイン)、来年1月に任期が終わる国連事務総長・潘基文(パン・ギムン)、城南市長・李在明(イ・ジェミョン)、第2野党「国民の党」前共同代表・安哲秀(アン・チョルス)らの戦いになる様相だ。


ただ野党が統一候補に絞る可能性もあり流動的だ。その政策は韓国大統領選に特有の「反日を競う」流れとなるだろう。首相・安倍晋三と朴槿恵がようやく築いた日韓和解という賽の河原の石積みは崩されかねない。慰安婦合意や11月23日に日韓両政府が締結した軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の履行に誰がなっても影響が出かねない情勢だ。
 

30日付け産経新聞は11月上旬の世論調査を例に取り、大統領選挙候補者の支持率は潘基文がトップと報じているが、ひどい誤報だ。記事は直近の調査で書くべきだ。韓国世論調査会社のリアルメーターが28日発表した調査結果によると有力候補の支持率は、文在寅が0.6ポイント上がった21.0%となり、4週連続で1位を維持している。潘基文は0.4ポイント下がった17.7%だった。李在明は1.0ポイント上がった11.9%となり、安哲秀を上回って初めて3位に浮上した。


潘基文は28日、国連日本人記者団との会見で「1月1日から韓国に戻り、母国のために私に何ができるかを友人や韓国社会の指導者と相談する」と述べ、出馬に含みを持たせたが、この世論調査では内心は複雑なはずだ。
 

朴槿恵を巡る疑惑が浮上する前までは、潘基文が次期大統領の最有力候補として支持率トップを独走していたが、ここになって急速に陰りが出始めた。最大の理由は与党セヌリ党の朴槿恵に近い勢力がバックアップしていることが問題化しているからだ。坊主憎けりゃ袈裟まで憎しの状況に置かれているのだ。セヌリ党の支持率が大幅に下がって、これまで調査で1位を維持してきた潘の支持率も共に下落しているのだ。


トップの文在寅はその分得をしていることになる。一方最近めざましく進出しているのが李在明だ。その理由は日本を「敵国」呼ばわりする徹底した反日路線にある。「我々を侵略し独島(竹島の韓国名)への挑発を続けている事実上の敵国である」と明言している。その上でGSOMIAについて「日本に軍事情報を無制限に提供する協定であり、朴槿恵は大統領ではなく日本のスパイだ」と断じている。まさに「韓国版トランプ」との異名をとるだけあって、言動は候補の中で一番激しいが、訴求力は一番あるかもしれないダークホースだ。
 

支持率トップで前回の大統領選で朴槿恵に僅差で敗れた文在寅も、今年7月25日に竹島に上陸、芳名録に「東海の我が領土」と書き、日本外務省が抗議している。ばりばりの反日政治家である。潘基文も日本にとっては最悪の候補だ。国連内部の人事も韓国人ばかりを重用、国連職員組合が批判する文書を採択する事態。


ニューズウイークが「レベルの低い国連事務総長のなかでも際立って無能」と批判した。こともあろうに去年9月3日に北京で行われた「抗日戦争勝利70年」の式典に出席している。国連事務総長としてもバランス感覚など全く欠如しており、逆に事務総長の立場をフルに活用して事前運動を繰り返している。


事務総長は概して小国の政治家がなるが、韓国では世界を左右する人と誤解され、尊敬の対象だから度しがたい。安哲秀は左派のソウル大教授で54歳という若さが売りだが、他の3候補にリードされつつある。


こうした反日キャンペーンの傾向は、今後増幅しこそすれ後退することはあるまい。なぜなら、選挙戦に入れば「反朴」の主張は皆同じであろうから訴えても効果がない。従って、大衆に一番訴えやすいのは「反日」となるのだ。各候補が「反日競争」で選挙戦を勝ち抜こうとする誘惑に駆られるのは間違いない。これは誰がなっても反日政権が誕生しそうであり、日韓外交は再び賽の河原に置かれかねないのだ。


当面問題になるのは昨年暮れの慰安婦合意が滞りなく進められるかどうか。GSOMIAの履行が順調に行われるか。12月に予定している日中韓首脳会談が実現するかどうかなどに絞られる。慰安婦合意は既に日本が出した10億円で慰安婦への支給などが始まっているが、象徴となっている日本大使館前の少女像の撤去が進展するかというと、朴退陣後はまず絶望的ではないか。外相会談でも努力目標的な表現であり、朴退陣はいよいよ難しくさせるだろう。


GSOMIAについては、朴槿恵が批判をそらそうとして合意を早めた気配があるが、これがあだとなって野党の批判を増大させた。選挙戦では撤回論が出る可能性も十分考えられる。慰安婦問題合意やGSOMIAはいずれも国家間の合意、協定であり、本来なら新しい政府になっても変えることはあり得ないが、感情的な方向転換が早い国だ。何でもありと警戒しておくべき問題だろう。


安倍は毅然とした対応をすべきなのは言うまでもない。首脳会談も朴槿恵の出席はまず不可能だし、当事者能力もない。代理でやることも考えられるが、形だけの会談をしても実りは少ない。ここは当分様子見が正解ではないか。

          <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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