宮崎 正弘
<平成28年(2016)12月6日(火曜日)通算第5121号>
〜トランプ・ピボットは対中政策で始まる
台湾総統と電話会談。南シナ海問題を初めて言及〜
さきに台湾問題で、画期的な「事件」が起きた。
蔡英文総統からの祝意の電話にトランプ次期大統領が応じたのだ。
1979年の国交断絶以来、37年ぶりの快挙である。
「台湾に何十億ドルもの武器をアメリカは売却している。そのリーダー
が祝意をつたえてきたのだ」とトランプはツィッターに書き込んだが、つ
いでにこういったのだ。
「南シナ海の(岩礁を埋立て人口島建設と軍事基地化)ことで(中国
は)アメリカの許可を得たか?」
ペンス次期副大統領はテレビに出演し、蔡英文総統からは祝賀の電話会
談だけだったと述べたが、消息筋はこの米台談話会談は長きに亘って練り
上げられた演出だったとしている(ワシントンポスト、12月5日)。
トランプの次期対中国政策は、トランプ・ピボットがおきる可能性を示
唆している。
過去の発言を振り返ってみよう。
トランプ名言集は以下の通りである。
トランプは中国を明確に「敵」と言っている。
15年6月16日の出馬表明で、トランプは「私が中国を敵として扱うこと
が面白くない人間もいるが、やはり中国は敵以外の何者でもない。アメリ
カは深刻な危機に直面しており、嘗て勝ち組だったのは昔話である。最後
にアメリカが誰かを打ち負かしたのは何時だった? 中国に貿易でアメリ
カが勝ったことがあるのか」。
そして同年11月のテレビ討論会では
「TPPなんてトンデモナイ。中国がいつものように裏庭から入りこん
でだまし取ろうというのがTPPである」と発言し、このときまでTPP
に中国が加盟していないことも知らなかった。
北朝鮮問題にからめて、こういう発言もしている。
「北朝鮮問題は中国が簡単に解決できるのに、これを利用してアメリカ
を操作したいため、問題解決に努力しない。北朝鮮問題を解決できない中
国なんぞ潰してしまえ」。(2016年1月6日、CNNでの発言)。こ
の文脈から日本の核武装を容認する発言へと繋がった。
こうして過去の発言をフォローすると、トランプの中国観が自ずと浮か
び上がってくる。台湾総統からの祝賀をうけたのも自然の流れである。
オバマはアジアピボットを提唱したが、南シナ海でほとんど何もせず、
リップサービスだけだったため、アセアン諸国はアメリカへの信頼を薄
め、ラオス、カンボジア、タイが中国の圧力に屈し、ついにはフィリピン
までもが中国へなびき、「アメリカ軍は二年以内に出て行け」とドゥテル
テ比大統領をして言わしめた。
こうした退嬰的なアメリカの姿勢と180度異なるトランプは、つぎのア
ジアピボットを用意しているのではないか。