2016年12月18日

◆日本のかつお・まぐろ漁

渡部 亮次郎



日本のかつお・まぐろ漁、なぜ衰退が続くのか

世界のかつお・まぐろ類の消費量の伸びは著しい。漁獲量も1982年の
190.1万トンから2012年には488.9万トンと、約2.6倍にも拡大している。
とりわけ、かつお類の漁獲量の伸びは大きく、世界のかつお・まぐろ類の
漁獲量の57%を占めて279.5万トン。30年間で約3.5倍の伸びになる。

漁獲枠「半減」では不十分、マグロが消える日

その一方で、かつては世界一の漁業国であった日本の地位が低下してい
る。総漁業量は1982年時には1282万トンだったが、2012年には484万トン
と3分の1に激減。中国などに後れをとり、いまは世界第8位に甘んじてい
る。かつお・まぐろ類の漁獲量に関しても、日本は45.8万トンで世界第2
位を維持しているものの、第1位のインドネシアの66.6万トンに大きく引
き離されている状態だ。

このように苦戦する日本の漁業だが、その理由は何なのだろうか。

■ 深刻な高齢化問題

自民党本部で5 月26日、かつお・まぐろ漁業推進議員連盟第7回総会が開
かれた。総会には新代表に就任した鈴木俊一元環境相や副会長の小野寺五
典元防衛相など議連のメンバーの他、「日本かつお・まぐろ漁業協同組
合」、「一般社団法人全国遠洋かつお・まぐろ漁業者協会」と「一般社団
全国近海かつお・まぐろ漁業協会」が参加した。

 さらに管轄官庁である水産庁に加え、国土交通省や厚生労働省、さらに
外務省や法務省、財務省からも関係法規の担当者が出席し、日本のかつ
お・まぐろ漁業が直面する諸問題について話し合った。

 今直面している課題・・・そのひとつは高齢化問題だ。

 「全国遠洋かつお・まぐろ漁業者協会」によると、2012年時の同会所属
船の年齢構成は平均56歳で、60歳以上が37%を占める。さらに新規就業者
は5名にすぎず、同協会は船員確保と育成が喫緊の課題だと訴えた。
 実際に高齢化問題は深刻で、水産庁のデータでは漁業就業者は約18万人
で、過去10年間で3割減少した。遠洋まぐろはえ縄漁では60歳以上の就業
者が42%を占めており、50代をも含めると、全体の83.3%にも上る。

政府は漁業の存続のため、毎年度2000人の新規就業者を確保すべく、「新
規漁業就業者総合対策支援事業」として本年度予算に6億1400万円を計上
した。また「沿岸漁業リーダー・女性育成支援事業」に3300万円、「安全
な漁業労働環境保全確保事業」に1900万円を充てている。

しかし根本的な問題を解決せずして、漁業の問題は解消されない。日本の
漁業にとって乗り越えなくてはいけないのは、コストの増大と年々厳しく
なる国際環境だ。

■ 高騰する入漁料

コストに関しては昨今の急激な円安による燃料費の高騰もあるが、より深
刻に関係者を悩ませているのは高騰する入漁料など国際環境の変化に基づ
くものだろう。

2014年6月にナウル協定加盟国(PNA:パプアニューギニア、ソロモン諸島、
パラオ、ミクロネシア、キリバス、ナウル、ツバル、マーシャル諸島で構
成)が2015年1月から1日あたりの入漁料(VDS)を8000ドルに引き上げたこと
は、日本の遠洋漁業に大きな衝撃を与えた。PNAのEEZ(排他的経済水域)は
日本にとって海外まき網漁獲量の9割を占めているからだ。

そもそもPNAがVDSを導入した2005年以前では、南洋海域での入漁料は漁船
1隻あたり年間約2000万円で、操業日数に制限はなかったのだ。さらに
2012年に最低価格制度が導入されてから、入漁料はいっそう高騰。水産庁
は日本が払うべきこうした入漁料は2015年には55億5600万円に達すると見
込んでおり、漁船1隻あたり必要とされる入漁経費は年間1億7000万円を超
えると予想されている。

「VDSが導入されて、外国は1日あたりの漁獲量が増えるように漁船を大型
化した。一方で日本は国内の利害調整ができなくて、水産庁が漁船の大型
化を許さなかった」

日本漁船の建造が法律で制限を受けていた間に外国に引き離されたと述べ
るのは、かつお・まぐろ議連で事務局長を務める自民党の井林辰憲衆院議
員だ。井林氏の地元は焼津港を擁する静岡2区。焼津港は全国トップクラ
スの水揚げ量や水揚げ金額を誇り、かつお漁やまぐろ漁の大拠点地でもある。

東洋経済オンライン 5月28日(木)8時50分配信を参照。
 

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