2016年12月31日
◆それ以前に必要な秋篠宮家への手厚い支え
櫻井よしこ
天皇の譲位を認めるべきか否かについての専門家16人からの意見聴取が11
月30日に終わった。意見は大きく3つに分かれている。(1)譲位を恒久的
制度とする、(2)譲位を認めつつも、今回限りの特別措置とする、(3)
譲位ではなく摂政を置く、である。
私は専門家の1人として、天皇陛下のお気持ちに沿うべく、最大限の配慮
をすると同時に、そうした配慮と国の制度の問題は別であることを認識し
て、(3)を主張した。皇室と日本国の永続的安定のためにもそれが良い
と考えた。
一方で、日本国民の圧倒的多数は陛下の「お言葉」を受けて、譲位を認め
るべきという意見である。
こうした中、陛下にごく近い長年の友人である明石元紹(もとつぐ)氏
(82歳)が、陛下が譲位を「将来も可能に」してほしいと、以前から話さ
れていたと、「産経新聞」に語った。同紙は12月1日の紙面で、明石発言
を1面トップで報じた。さらに、11月30日に51歳の誕生日を迎えられた秋
篠宮さまも陛下の「お言葉」について、初めて公式に感想を述べられた。
「お言葉」を通して、「長い間考えてこられたことをきちんとした形で示
すことができた、これは大変良かった」「最大限にご自身の考えを伝えら
れた」「折々にそういう考えがあるということを伺っておりました」との
内容だ。秋篠宮さまご自身、5年前のお誕生日前の会見で、天皇の「定年
制」も必要だと語り、注目された。
皇室から次々に、譲位に向けた強いお気持ちの表明がなされる中で、私た
ちに課せられた課題は前述したように陛下のお気持ちを尊重しつつ、国柄
を維持する制度の問題を、どう融合させていくかという点であろう。陛下
がお気持ちをこれほど強く表明される中で、政府および有識者会議は、歴
史と、皇室を軸とする日本の国柄を踏まえ、賢い解決策を出さなければな
らない。
政府の決定いかんにかかわらず、日本国として同時進行でしっかりと策
を講じるべきこともある。次の世代の皇室をよりよく守り、支えるには、
皇室の現状に多くの課題があることを認識しなければならない。皇位継承
の安定はその筆頭だ。1つの方策として指摘されている旧宮家の皇族への
復帰案などは、皇室典範の改正が必要であり、議論のための十分な時間が
必要だ。
そうしたこと以前に、皇室典範や憲法改正を伴わずに今すぐできることも
ある。その緊急性を示したのが過日の交通事故である。
11月20日、秋篠宮妃紀子さまと悠仁さま、ご学友が乗ったワゴン車が中央
道で追突事故を起こした。紀子さまらにけがはなく、追突された乗用車の
側も無事だったのは、何よりだった。だが、よりによって悠仁さまの乗っ
た車がなぜ事故を起こしたのか。理由は秋篠宮家に対する支えの体制が不
十分であることに尽きるだろう。
皇位継承権保持者としてただ1人、若い世代の悠仁さまは、皇室にとって
も日本にとっても掛け替えのない方だ。その悠仁さまの車になぜ、先導車
が就かないのか、交通規制が敷かれないのか。天皇、皇后両陛下や皇太子
ご一家のお出掛けでは、白バイが先導し、後方を警備車両が固める。信号
は全て青になるよう調整され、高速道路には交通規制がかけられる。交通
事故など、起こりようがない状況が整えられる。
この当然の対応が、秋篠宮家に対しては一切取られていない。公務でのお
出掛けでも、後方に警備車両が一台就くだけだ。理由は秋篠宮家は他の皇
族と同じ扱いになるからだという。しかし、陛下の譲位が取り沙汰される
中、皇位継承権保持者お二人を擁する秋篠宮家にはもっと手厚い支えをす
るのが筋である。安定した皇位継承体制をつくる法議論も必要だが、この
ような目の前の日常の事柄への配慮も欠かしてはならないと思う。
『週刊ダイヤモンド』 2016年12月10日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1161
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