2017年01月12日

◆年前半は“奇想天外”解散の傾向ー戦後の解散

杉浦 正章



「安倍解散」の本命は秋以降年内だろう
 

朝から晩まで解散がいつだろうかと考えるのが解散専門業の私の仕事だが、今年の見通しを聞かれれば「常在戦場」と答えるしかない。首相・安倍晋三の解散戦略は意表を突くことを旨としており、下手な判断をすると朝日のように昨年暮れに1月解散とトップで書いたと思ったら、一か月もたたないうちに「秋以降」などと訂正することになるからだ。


考えあぐねて、解散の歴史をひもとけば、一見ランダムに見える戦後24回の解散も、一定の定理・法則があることを発見した。それは年前半6月までは思いも付かない奇想天外の解散が圧倒的に多く、年後半はまじめに内政・外交上の政策を問う解散が3分の2を占める事に気付いたのだ。また年前半は解散がきわめて少なく8回であるのに対して、年後半は16回と倍に達する。
 

年前半の政策をテーマにした解散は、1月に海部俊樹の消費税解散があるだけで、後は鳩山一郎の「天の声解散」(1月)、吉田茂の「バカヤロー解散」(3月)、岸信介の不信任案可決を前提にした「話し合い解散」(4月)、大平正芳の思いがけない自民党反主流の反乱で不信任案が可決された「ハプニング解散」(5月)、中曽根康弘の「死んだふり解散」、宮沢喜一の「嘘つき解散」、森喜朗の「神の国解散」(いずれも6月)という結果となっている。
 

なぜこうなるかと言えば、年前半の通常国会においては次年度予算案や、重要法案の処理がひしめいており、ただ1人解散権を持つ歴代首相の多くは、党利党略より国政を優先させるからだ。解散・総選挙による通常国会の空白による国政の停滞を避けるのだ。従って年前半の解散は堪忍袋の緒が切れたケースや、激突による衝動、謀略などに限定されているのだろう。


逆に後半は7月から順に麻生の「政権選択解散」、小泉「郵政解散」、大平「増税解散」、橋本「小選挙区解散」、池田「安保解散」「所得倍増解散」、田中「日中解散」などなどと外交、内政上の重要な政策をテーマとする解散が多いのだ。
 

もちろん、政治は生き物であり、安倍政権に当てはまるものではない。それでは解散の可能性を探れば、まず2月はないだろう。戦後史にも2月の解散がないのは、予算委審議が始まったばかりであることが大きく作用している。3月の可能性だが民放番組で司会が「予算は衆院を通せば自然成立する。衆院で可決してから解散はないか」と自民党幹事長・二階俊博に聞いていたがあきれた。政治のイロハを知らない。解散をすれば国会は機能を停止し、すべての法案、予算案、条約案は廃案となるのであって、参院の審議中でも解散と同時に廃案だ。


したがって3月の解散は安倍が蓮舫に「バカヤロー」と自席でつぶやきでもしない限りないのだ。安倍はテレビで「不信任が可決されれば躊躇(ちゅうちょ)なく解散する」 と明言したが、大平の二の舞の同案可決は自民党内情勢から見てもあり得ない。不信任案を否決して解散することも可能だがまずないだろう。
 

予算成立後の4月の解散はありえないものではないが、天皇の退位を決める特例法が連休前後には審議入りすることを考えれば、解散しては「恐れ多い」ことにもなりかねない。そこで会期末6月の解散だが、これも難しいが可能性はある。例えば犯罪の計画段階で処罰する「共謀罪」関連法案で、会期末にあえて野党と激突して解散するケースだ。オリンピックを控えてテロを未然に防止するのだから、有権者には説得力がある。
 

最近、カジノ法案の強行採決でぶんむくれた公明党が、都議会公明党に命じて自民党との連係を反故にするという嫌がらせに出たが、これは公明党の「都議選があるから夏の解散はすべきでない」という主張が成り立ちにくいことを物語っている。


そもそも解散様は一番偉いのであって、もともと都議選ごときに左右されるものではない。都議会公明党が反自民の小池百合子と連携するなら、「解散するな」は成り立たないことになるからだ。都議選と衆院選のダブル選挙だって可能性がないわけではないが、都議会自民党の都民からの嫌われ方のひどさを見れば、衆院選までマイナス効果が出かねない要素がある。
 

こう見てくると秋の臨時国会における解散・総選挙が本命となるが、まだ油断はできない。それは安倍内閣の支持率が驚異的に高いからだ。最近のNHKの調査では支持55%、不支持29%。政党支持率は自民党38.7、民進党8.7と大きく差がついたままだ。自民党は年明け早々に選挙情勢調査を行ったが、その内容は極秘になっている。


しかし自民党幹事長・二階俊博はテレビで「今の情勢ならいつ解散があっても有利であり、自民党が勝つ」と述べており、安倍への支持率の高さを反映したものである公算が強い。しかし民進、共産など4野党共闘がまだ確定していない状況下でもあり、調査は共闘をすべて織り込んだものとはなっていないだろう。


いずれにしても、通常国会は何でもありだ。解散もありだし、今年中にはもちろん解散がある。来年では追い込まれ解散になってしまうから、安倍は今年中に解散を選択せざるを得ない。

      <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)
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